キラーナース その狂気を追跡するのレビュー・感想・評価
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最高の看護師が犯した米国最大の連続殺人事件を洗い出したドキュメンタリー
本作は米国の多数の病院で推定400人もの患者を殺害した看護師チャールズ・カレンを、1件の不審死をきっかけにその大量殺人を暴いて逮捕した刑事たちと、捜査協力した看護師のドキュメンタリーである。
カレンは1988年~2003年まで16年間にわたり米国のさまざまな病院を転々として、看護師として働きながら、ほとんど衝動的に次々に患者を殺していく。
作品のポイントは、第一にカレンの犯罪の全体像、第二にその動機、第三になぜ16年間もそれが明らかにならなかったかという疑問であり、刑事たちはそれを暴くため捜査に取り組む。
この捜査過程がなかなか面白い。摘発のきっかけとなった病院では、不審死の捜査に着手した刑事2人が病院に資料を要求するが、きちんとした資料が提供されない上、リスク・マネージャーは彼らに平気でウソをつく始末。看護師らへの事情聴取にもマネージャーが同席するので、ろくに成果が得られない。
そこでマネージャーの隙をついて担当看護師に病院の作成資料を見せると、彼女が熱心にそのデータの異常さを説明したことから、刑事たちは殺人の疑いが濃厚との心証を得る。
それ以後、カレンの捜査が始まり、過去の勤務先病院を調べると、次々に不審死が発見されていく。公的な毒物管理センターを調べると「何故、もっと早く来なかったのか」と非難される。知る人はとっくの昔にカレンが怪しいと気づいていたのである。
最後には、ウソをついていたマネージャーに刑事たちが脅しをかけると、さすがにビビったマネージャーは存在しないと言っていた資料をすぐに出してくるところが痛快である。
また、捜査に協力した看護師は盗聴器を身体につけてカレンと会話し、さらに警察の取調べ室まで出かけて殺害の自白を引き出すのも凄い。
結局、カレンの動機はよくわからないまま。どうやら本人にもよくわかっていないようなのである。
また、16年間も放置されてきた原因は、殺人事件などが発生しては損害賠償を請求される上、病院の評判に傷がつき患者が減って経営が傾くため、病院はろくに追及しなかったという。
医療ミスと医療にかこつけた殺人は明確に違うものだが、専門性の壁に阻まれて真相追及が容易でないことは日本でも米国でも同じだということがよくわかるし、病院が患者そっちのけで営利第一主義という点も同じなので笑った。
新型コロナでは、日本の病院は当初、患者受入れに後ろ向きだったが、補助金が出るや否やせっせとコロナベッドを用意してぼろ儲けしたのは記憶に新しい。患者を入院させないで補助金をせしめていた病院も多数あり、医療不信を増幅させたのだった。
映画の最後では、カレンの事件が明らかになった後、病院は職員採用に当たって十分な注意義務を尽くせとする法改正などが行われたことが紹介されるが、これで安心する観客はいない。
また、協力した同僚看護師の「カレンは最高の看護師だ」というコトバも印象深い。ごく普通の優秀な看護師が、米国最大の連続殺人鬼だというのは、やはり恐ろしい。日本だって、普通の看護師が同じことをしないと限らないのだから。
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