「業」零落 humさんの映画レビュー(感想・評価)
業
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才能ある者の栄光と挫折。
その浮き沈みの周りにある人間模様。
上り坂には褒め、おだて、巻きつき、下り坂には、遠巻きに眺め、貶し、外したままになる視線。
スケールは違えど範疇にうようよ存在する世界。
やりすごしていけるか、いけないか。
やりすごせなかった主人公深澤は、自分を甘やかす空気求めて彷徨い、元カノと同じ猫目のちふゆに出会う。
やさぐれていた深澤に、ピンク色に滲む非現実的な世界での出会いと故郷への逃避的な時間がもたらす一時の安らぎ。
かつて同志のようだった妻は旬の同業者との仕事で多忙を極め、もはや深澤にとっては拠り所でもない。それどころか、深澤をますます追い詰める存在。妻にそんな気はなくてもだ。
自家中毒みたいな破綻に耐えられなくなる深澤が妻に吐いた言葉が耳の奥にのこる。
それは浅くもどこかで経験したことのある感覚だと感じたから。
そしてそんなふうに思いを口にできる深澤に対して、ある種の羨ましさに似た感情も湧く。
スクリーンに映し出される人間の業がじんわりと晒す作者の内面にふれながら煙たさに苦さを混ぜ、いつかの誰かの記憶を呼び覚まし自分にもどってくるような作品。
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