「『ルーム』の原作者が描く、もうひとつの「閉じ込められた女性」の物語」聖なる証 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
『ルーム』の原作者が描く、もうひとつの「閉じ込められた女性」の物語
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原作と共同脚本が『ルーム』のエマ・ドナヒューであることに合点がいった。時代設定は違えど、どちらも特殊な状況に封じ込められた女性の物語で、抑圧しているのは社会であり、また自分自身でもある。『ルーム』と違うとすれば、この映画のアナは状況から抜け出す力を得るためには、リブという大人の助けが必要だったということだろうか。一方でアナはただ非力な存在ではなく、あかの他人であるリブを巻き込み、この子を助けたいと思わせる存在でもある。
宗教全般を否定している映画ではないが、はっきりと狂信や盲信が害をなすものとして告発している作品だと思うので、日本よりも宗教的反動の強い欧米では、アンチの怒りも買いやすい気はしており、作り手がリスクを怖れずにテーマに向き合った作品である、とも思う。
作劇的には王道と言うべきか、「己の喪失感を克服するために誰かを救おうとする」お話で、個人的な好みでいえば母性に寄りすぎていて、赤ん坊の靴下のような小道具は意図が透けて見えすぎるのでノイズにも感じる。しかし物語を伝えるためにはわかりやすさも必要だとは思う。むしろ難しいテーマの間口を広げるための仕掛けとして機能しているのなら、悪しざまにいうことでもあるまい。
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