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演劇的な造りでのショートフィルム 母親を癌で失った美容師の女、娘に対するDVの末、家庭を捨てた妻と離婚した男 親子共美容室を何度も利用しているのに小学校時代の同級生だったことに気付かない男に、女は意を決して覚えているか訊く
案の定、存在が薄かったのかなかなか気付かない鈍感な男 しかしそんな男も、娘がトラウマになっていて夜寝れない事を慰めるため、出ていった妻のスカートを履いて、心を落ち着かせていた
夜道に強盗に遭い、その恐怖から男に助けを求めるが、現われた男はスカートを履いていて・・・
そんな男の素っ頓狂な行動に呆れつつも、しかしずっと母への想いを吐露せず心に秘めていた女は、この男に抱えていた気持を吐露する もしかしたら共感してくれるのではないか、娘に誠実に向き合っているその姿勢と同じように自分を向かい入れてくれるのではないか
独白後、横を見たら男は睡魔に身を委ねていた 最後迄鈍感なのである
そう、今作は無理をしてもしかし気を抜くとこはしっかり抜く 気を遣わせない距離感という、絶妙性、否、人それぞれその距離の差違を愉しむ心の余裕を提示する物語なのだろうと感じたのだ 途中、自分事だが、相変わらず古い油を使った料理のせいで、お腹を壊してしまい、男の家に行って寝ている娘を眺めるシーンはごっそり抜けているのだが、そのオトボケ振りの男の所作に、ずっと気を張っていた女が氷解していく表情がスクリーンを通じて共感できる 所々、男の優しさなのか、小学生の頃のセールスポイントだった牛乳一気呑みをやって見せたりと、何気ない態度の琴線が、実は女の好意の原因だった事を思い出させる変遷も分りやすい
物足りないと思うレビュアーは、こうすればよいああすればよいとツッコミを入れたがると思うが、でも、こういうワンイッシューのショートが有っても良いのではないだろうか 失礼ながら、決して登場人物達は主役を張れる役者ではないかも知れないが、こういう微妙なニュアンスの作品を製作する意義は大きい ちなみに子役の女子はほんとに美人で、将来性を大いに感じさせる
こういうユニットは、邦画に限らずドラマ製作の現場で問題になっている30代女優さんの需要が一気に減る事実に対して一つの解答だと思う 勿論、地方創生映画に出演するのも大事だが、演劇で可能かもしれない題材を敢えて映画に落とし込む作劇は、東京に行かなければ観れないエンタメに対するアンチテーゼとして大事だと感じるのである