「「笑止!」」炎上する君 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「笑止!」
原作は未読 但し、ネットにて粗筋サイトの参照なので信憑性は無いが、足し引きはされているらしい
作品時間が短いので、この二人の背景は、ラストでの過去の1エピソードの独白のみであるが、その内容に一点突破したストーリーとして再構成されていると感じた
コンセプトとすれば、女性やクィア問題に際する差別、多様性への拡がりが中々拡がらない事への憂いを描く造りである
所謂、旧『ヲタク』的言葉遣いや会話法にてコミュニケーションを営む二人の女性が、日々の女性蔑視報道への憂いや、お笑いライブでのルッキズム問題に遭遇する中で、女性の美容をもインクルードした、"こうあるべき"固定概念の打破を表現する、腋毛を見せ付けながらのパフォーマンスダンスを始める 固定ファンがつき始めた頃、しかしそのパフォーマンスの惰性や、主張や意図の未伝達により、却ってエロティシズムとしての消費に気付き、急速に醒めてしまう そんな二人に新たにもたらされた『足が燃えている』人の目撃情報 一晩中、高円寺を彷徨った先に発見した、彼の男の事情や迫害の吐露に、二人は改めて結びつきの強さを再確認、そしてエンパワーメントの拡大を目論む予感を、『腋毛が燃える』女との邂逅にて表現した作劇になっている
描いている造りは大雑把とはいえ、具体性を以て演出されているので、上記のような社会問題意識を持った革新的思想の人には解りやすい そこまでの政治思想でなくても、世間に横たわる"共生"に対しての意識改革の愚鈍さを嘆いているといったメッセージは、"高円寺"という自由で大らかな街というイメージの裏に隠された解消されない固定概念や、蔓延る選別意識に苦しみや生きづらさを抱える弱者の存在にスポットライトを当てる構成である メタファーとしての"足"や"腋毛"の燃焼は、その特異且つ怪奇なルックに注目を浴びてしまうが、当人の事情や願い、そして知って欲しいという承認は、正に現在に通ずる諸問題であろう 彼女たちがその唯一無二の関係性に互いを感謝し合いながら、その想いを担保に、取材を続けるのか、はたまた新しいパフォーマンスを起草するのか、それとも革命の旗手となるのか、可能性を一方には進めず、多角的な行動をスマート、且つ愚直に遂行する将来を希望させられる上映終了後の爽やかさを感じた
原作では、足が燃えている男のその一点の曇りもない誠実な目に惚れた二人が段々と男に気に入られようと美容に走るという皮肉を描いている様ではあるが、映画の脚色の方がしっかりと定義された価値ある作品に仕上がっている 欲を言えば、もう少し出来事の掘り下げがあると輪郭を強調でき、コメディとの両立が鮮明になる、要は上映時間を増やしたら良いかと思ったのだが、この短さも又今風なのだろうか・・・
正に2023年8月現在、ネット上で物議を醸している立て続けの痴漢関連騒動は、今作のテーマのマスターピース成り得るタイムリーな出来事であろう
ネット上に溢れる、誰にアドバイスしているのか不明な"スラット・シェイミング"は、作品中のシーンとして、中華居酒屋でのバンド仲間の飲み会に於ける、偉ぶった年上の男のマウント戯れ言そのものである 何か一言モノ申す的説教や講釈、そして自分の考えに当てはめようとする"認知の歪み"を自覚無く吐くあの男は、己が鏡のない世界で生きている事を指摘する事は出来ないのだろうか? その自慰的行為にトドメを刺せる事は出来ないのだろうか?
弱い所、弱い人間にその攻撃の手は緩めない そんなに気持ちよくなりたいの? そんなに楽を欲しているの? そんなに承認欲求を得たいの?
どうして人は弱気に漬込むことに執着するのか?・・・ だれか教えてほしい