「ロッキーの登場しない違和感を独立した作品と割り切るかで見方も変わるが監督デビューとしては悪くないかな」クリード 過去の逆襲 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
ロッキーの登場しない違和感を独立した作品と割り切るかで見方も変わるが監督デビューとしては悪くないかな
クリードシリーズは、前二作の出来も良くやはりロッキーの晩年を描く部分のウエイトも多くて、世代間差のあるバディ物の様相だったのだが、今回はスタローンは出演せずに、アドニス・クリードと家族と過去の友人を中心にしたドラマで、副題にある「過去の逆襲」に相応する内向的かつ内省的な立ち位置の独立した作品として見よう!(結論)
ネタバレあり
マイケル・B・ジョーダンの初監督作品として、ゼロから観ると悪い作品では無いが、ロッキーや過去のクリード作品とすると些かで、見方も変わりこれまで以上に、内向的かつ内省的な描写と内容で、戸惑ってしまう側面が強い。
ロッキーシリーズは、いつも最終的には自分との闘いに勝ち負けより挫折しても、立ち上がる姿を描き続けてきていたので、踏襲してるとは、思うが重要なメンターでもあったロッキーがいない違和感はどうして残る。
過去の逆襲して来るのは、自分の代わりに罪を背負いボクサーとしての未来を不意にしてしまった男デミアンだが、悪役の側面よりもいつかは向き合わないと進めない過去(トラウト)として突然現れ、アドニスを揺さ振る。
デミアン役のジョナサン・メジャースの得体の知れない不安を想起する姿と着衣姿だと年齢的な中年体型を想起するが、チャンピオンとの試合で初めて鍛え上げられた肉体をみせる場面は、コイツ強いゾ!観客に印象づける。スポーツ映画は、俳優の肉体や動きにどれだけ説得力があるかが重要でドラマは定番でも過程も含め重要だと思う。
過去作と繋がりとして、アドニスの家族や強敵でもあったヴィクター・ドラコが再登場する件もあり、育ての母を失う悲劇もあり、迫力がある試合場面と個人には突然無観客会場になるシュールな試合描写(鈴木清順か?)などの見せ場もあり楽しめるが、試合後の締めが若干長くてやや説明的にも感じるので、ここら辺はキレが欲しかった。個人的には『ロッキー3』のような終わりが最高かな。
ちょいと気になるのは、娘の暴力性についてのアンサー的な描写や刑務所仲間を使っての工作をして無理矢理に試合に持ち込み、勝った後に典型的なヒールになってしまうデミアンの描写に深みがあっても良かったのでは?と思うが、ロッキーの登場しない違和感を独立した作品と割り切るかで見方も変わるけど、監督デビュー作としては悪くない。
余談
しかしマイケル・B・ジョーダンは、泣き顔がサマになる肉体派だよな
あとアポロ・クリードの青春とチャンプへの道を60年代から70年代の世相を交えた『クリード0』(カール・ウェザースは祖父とかの役で)やロッキーのトレーナーとしての晩年を描いた本流の続編『ロッキー7 完結編』(スタローン主演脚本)は観たい!とマジ思う。
本編後にスタッフロールが終わった後に、アニメ版クリードの日本語版予告が流れてきて、初めて企画と内容を知ったが未来の火星?が舞台のボクシングアニメになる様子だが、あしたのジョーを原案にSFアニメにした『NOMAD メガロボクス』とダブるぞ。果たして出来栄えいかに?