「今後、ゲーム作品の映画化の教科書になる作品」ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)
今後、ゲーム作品の映画化の教科書になる作品
『ゴジラ』や『ポケモン』と並ぶ、日本が誇る一大コンテンツ『スーパーマリオ』が、まさに理想的な形で映画化された作品!
特に、同じ任天堂の作品としては、実写化による新たな世界観の構築となった『ポケモン』の様な形ではなく、あくまで原作ゲームの世界観を再現し、荒唐無稽な設定のゲームを映画化する上で最低限の設定説明を交えて構築したのは驚異的だ。
アメリカでは公開前に「ロッテントマト」にて批評家が批判していたが、短い尺の中でテンポ良く話を展開し、最低限の設定説明やキャラクターの成長まで描くなんて、相当凄い事をやっていると思うのだが。
①ブルックリンで配管工を営むマリオとルイージ、大手の配管工会社から独立するも、仕事は上手く行かずに父からも認めてもらえない。
②地下の配管不良により街が大洪水となり、チャンスと飛びついた先で、お馴染みの魔法の土管で異世界へ。途中、ワープルートの分岐により離れ離れになる兄弟。
③マリオは辿り着いた先のキノコ王国でクッパの侵攻と弟の身に迫る危機を知り、ピーチ姫と合流。ゲーム内容を反映したステージクリアイベントで修行。
④来るクッパ襲来へ備え、コング王国へと同盟を持ちかける為に旅に出るマリオ&ピーチ&ピノキオ。
⑤コング王国でのドンキーコングとの対決。
⑥同盟締結後、即座に帰国する為「マリオカート」よろしくレインボーロードでのレース。
⑦窮地に立たされクッパとの結婚を承諾したかに見せて、披露宴で大活躍するピーチ。
⑧魔法の土管に特大キラーをぶつけた事による土管の暴走。それにより、ブルックリンにクッパ軍団と共に帰還してしまうマリオ達。
⑨挫けそうになりながらも、弟や仲間達の協力によって、スーパースターによるパワーアップを経た、まさに“スーパーマリオブラザーズ”。見事クッパ軍を撃破し、街の人々から称賛され、父からも自慢の息子と認められて自己実現を果たす。
大雑把に作中の出来事を羅列したが、これだけ様々な舞台にキャラクターを移しつつストーリーを進行させ、本作ならではの自己実現といったキャラクターの成長も見せてしまうのは見事だと思う。
また、どの舞台にも原作ゲームへのオマージュと愛を盛り込んでいるのも非常に好感が持て、何より観ていて楽しい。
マリオやルイージに現代的なキャラ付けをして親しみを持たせつつ、人間であるピーチ姫が何故キノコ王国に居るのかも端的に説明したりと、1本の作品として成立させる上での辻褄合わせも上手い。
また、本作1番の功労者と言えるクッパの存在感も素晴らしかった。吹き替え版で鑑賞したのだが、声優の三宅健太さんがパンフレットで意識したと語っていたように、何処かガキ大将っぽい台詞回しや振る舞いが、憎めない悪役として抜群だった。
ピーチ姫への愛を込めた歌は、無駄に良いメロディー且つ歌唱力があるのが最高に腹立つのも◎(笑)
他にも、ゲームのステージを意識した構図や効果的に機能する原作音楽のアレンジや名曲の数々、マッドマックスFRばりのレインボーロードでのレースと、とにかくありとあらゆる要素が見ていて楽しい。
観終わった後、席を立つ観客が口々に「マリカやりたい」「スーマリやりたくなった」と語っており、今作が果たすべき最大の役割をキチンと果たしているのがヒシヒシと伝わり、そういった光景を目の当たりに出来たのも感慨深かった。
世界的な特大ヒットにより、間違いなくシリーズ化するだろう。出来れば、次回はルイージの活躍にもスポットを当ててもらいたい。
そして、エンドロール後のオマケ映像で示唆されたヨッシーの活躍も。あの見せ方は完全に『GODZILLA(1998)』のラストでホラーだが(笑)