「少年が辿るのは、精子・受胎・細胞分裂・進化系統樹の無限ループ・曼荼羅ワールド!」ETERNITY じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)
少年が辿るのは、精子・受胎・細胞分裂・進化系統樹の無限ループ・曼荼羅ワールド!
『素晴らしき短編アニメーションの世界』にて視聴。
うーん、さすがにちょっと長いかなあ(笑)。
パンフにある監督の説明によれば、「施設の中で育った少年が外の世界を見たいと思い、これまで教えられてきた世界や歴史を自分の眼で確かめる旅」を描いているらしい。
構想中の「水江西遊記」の物語設定に準じているとのこと。
ああ、孫悟空だから、少年も少女も、中国武術みたいな服着てんのか!
だから、吸い込まれるトンネルの先が「ひょうたん」のインナースペースなのか!!
(でもなんでオッドアイ?)
アニメとしては、極彩色の曼荼羅的世界が3Dで奥へ奥へと展開するなかで、キャラクターが無限に増殖しながら、なんども同じループで世界の始まりと収束を繰り返す。
一度、ポッドのようなところに落とし込まれた「世界」は、ひょうたん型に変化したのち、次の周回の分裂・増殖・収束をスタートさせる。
奥へ奥へと進んでいくライドショーのような映像は、遊園地のアトラクションぽくもあるし、少し音ゲーの画面にも似ている(監督いわく、『スター・ウォーズ』とかから影響を受けているらしい)。
監督は「抽象的」といってはいるが、比較的明快な「筋書き」はあるのではないか。
すなわち、精子が受精して、細胞分裂が始まり、遺伝子のなかに含まれている様々な動物たちの記憶が系統樹のように想起され、そのうちいくつもの世界線が増殖してエントロピーが増大し、やがてご破算になってビッグバンが起きて、振出しに戻る、といった一連の「歴史」の回顧が、何度も繰り返されている(ように見える)ということだ。
たまに女の子の分身も増えるのはY染色体じゃないか、とか、登場する様々な動物図像に中国系の瑞獣が多いのも西遊記つながりなのか、とか、いろいろ考えながら観ている分にはトリップ感があって楽しいが、二巡目、三巡目と進むにつれて(内容には変化があるものの)、観ているこちらもいい加減飽きてくる……。
いや、反復自体に意味があるのだということは重々承知しているが、体感的には本当に退屈でして……。
監督がアフタートークで、「助成」の関係で20分以上の尺が必要だったとの話をされていたが、この内容なら10分でよかったような……。いや、えらそうですいません。
上映後の監督と音楽担当の方のトークショーは、和気藹々とした楽しいものだったが、個人的には監督には、僕より上の世代なら「誰しもが思うだろう」質問――サイケデリックとの関係性について訊いてみたかったかも。
パンフでは当たり前すぎて触れられていないのかもしれないが、「曼荼羅」云々ってより、よほど60~70年代のサイケデリック・アート及び音楽に影響を受けているようにしか思えないんだけど、LSDカルチャーだとか、レイヴの感覚だとかは、どれくらい自覚的に取り入れている(もしくは敢えて距離を置いている)人なのか。
自分には一見して、サイケ・アートの延長にしか見えないものを、サイケだと説明されないのは、なかなかに居心地の悪いものでもある。