「素晴らしい演技と映像に負けている中途半端な脚本」非常宣言 すけさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい演技と映像に負けている中途半端な脚本
先に結論から話すと、自分はこの映画「なんだかなぁ」の連続でいまいちハマらなかった作品でした。
俳優陣はとても素晴らしい演技をしていたと思います。
ソン・ガンホの妻を助けるために文字通り血と汗を流しながら奔走する姿や、娘を守り通すためにトラウマにも立ち向かうイ・ビョンホン、何を考えているか分からない不気味なイム・シワンなど、鬼気迫る演技で観ていて引き込まれるものがありました。
カメラワークも迫力があり、映像のクオリティは高かったです。
ただ、脚本に突っ込みどころが多かったのが「なんだかなぁ」となった理由です。
冒頭で「非常宣言とは、何らかの理由で飛行機が航行不能に陥ったときにパイロットが布告し、それが布告された航空機は何よりも優先して着陸できるものである」といった旨の説明がされたにも関わらず、それが守られずにたらい回しにされてしまうのはなんだったのでしょうか。
航空業界に明るくないので何とも言えないのですが、航行不能になった原因がウイルスだった場合、現実でもその非常宣言は無効になってしまうのでしょうか?
非常宣言というもの自体、このような状況も想定されているからこそよっぽどのことがないと布告されないものとして扱われているのかと思ったんですけどね。
百歩譲ってホノルルと成田で拒否されたのは他国だから仕方ないにしても、自国であるソウル空港には着陸させるべきだったのでは?
タイトルにもなっている「非常宣言」が全く役に立たないのが意味不明なんですよね。
バイオテロはそれすら無効にしてしまう恐ろしい事案と言われてしまえばそれで終わりなのですが……。
また、「余裕を持って燃料は入れているが、引き返しても韓国まではもたない」と言っていたのに普通にもってしまうのはなぜなんですかね。
そもそもあの状況でずっとホノルルに向かって飛び続ける理由がよく分からないんですよ。
もっと早く引き返せば良かったのでは。
「飛行機のWi-Fiは貧弱だから遅くて途切れやすい」というのがちゃんと伏線として張られていて、それで地上と飛行機で連絡が取りづらいことが問題になるシーンがあるのに、最後にみんなビデオ通話してるの何なんでしょうね。
と、ちょいちょい「問題だったことがなんやかんやで無かったことになってしまう」部分が観ていてモヤモヤしてしまい、「なんだかなぁ」が続いてしまったんですよね。
俳優の演技は良い、映像も迫力ある、描きたいことも分かる。
だが引っ掛かりを感じる部分が多い。
そこが気になってしまい、いまいちに感じてしまった惜しい映画でした。