劇場公開日 2023年1月27日

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「ロックダウン生活の疑似体験」ピンク・クラウド おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ロックダウン生活の疑似体験

2023年2月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

寝られる

紹介サイトで興味をもったものの、公開初日のレビューは芳しくなく、不安なまま鑑賞してきました。そして、その不安は的中しました。

ストーリーは、触れた人間をわずか10秒で死に至らしめる強い毒性をもつピンク色の雲が突如発生し、そのとき一緒にいたヤーゴとジョヴァナはそのままロックダウン生活を強いられることになり、それが一向に解除されないまま何年もの月日が流れる中、二人の関係がしだいに変化していくというもの。

序盤は、得体の知れない雲のせいで、自宅から一歩も出られなくなった生活が描かれます。食料や必要な生活物資は、窓に開けた専用のダクトから配送されるという、新たなインフラ整備がされる様子が描かれ、以降の生活が成立する舞台設定を整えていきます。確かに、今の世の中、ネットショッピングで入手できるものだけで、外出せずともたいていは事足ります。

とはいえ、そもそも商品の製造元はどうなっているのか、ピンクの雲はこの一帯だけの問題なのか、状況を伝えるニュース番組のスタッフはどこにいるのか、窓を閉めた程度で生活できるのなら防毒マスクがあれば問題ないのではないか、などと次々とツッコミたくなる気持ちが湧き上がります。しかし、そこに触れると作品が成立しなくなるので、考えないことにしました。

その後も、ヤーゴとジョヴァナの二人の生活が描かれますが、子どもが産まれることぐらいしか大きな変化がなく、映像も自宅以外の場所は映らないので変わり映えがなく、観ている観客もロックダウン生活の閉塞感と退屈さを味わうことになります。ひょっとしたら、これが制作側の意図だったのかもしれません。

最後にはきっとピンク色の雲の原因やそこに隠された意味が明らかになり、「そういうことか!」と納得させられるのだろうと思っていましたが、本作はそういう作品ではありませんでした。自宅という檻から出られなくなった人間はどうなるのか、根源的欲求やエゴがあぶり出されるのか、潔く全てを受け入れて前向きに生きるのか、現実逃避や自暴自棄に走るのか…。そこに明確な答えはなく、「あなたならどうする?」と問い続けているような作品でした。

おじゃる