SHE SAID シー・セッド その名を暴けのレビュー・感想・評価
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有難う、ブラッド・ピット
ここ数年、DVDや配信で「名作」と言われる旧作を観る際、本編の前に「MIRAMAX」のロゴを観るとゾワッとし複雑な気持ちになるようになりました。勿論、作品そのものや役者や監督、スタッフたちの仕事を否定するつもりはないのです。それでも、、、
数か月前、本作の情報を見つけたとき、まずはキャリー・マリガンとゾーイ・カザンというキャスティングに期待を大きくしておりました。そして、当然のように素晴らしい仕事をしてくれています。お二人とも一つ一つの表情だけでうならせる説得力で惹き込まれます。
それにしても、アカデミー賞が近づき、前哨戦の結果や予想を見ていくとこの『SHE SAID』は作品賞や監督賞にノミネートが殆どありません。気になって調べてみると、どうも米国などでは#MeToo運動が随分と語られつくされた分、「あの頃のムーブメント」という印象で大きな評判に至らず、興行成績もやや期待外れの結果だったようです。
それに比べたら、日本で過ごす私にとって知らない(知ろうとしていなかった)多くの真実の「おぞましさ」に、本作を観て「知る必要性」を強く感じました。はっきり言って、企業などで啓蒙する「ハラスメント」についてのトレーニングなんかより、この映画を観た方が余程「事の重大さ」に気づかされます。
直接的・間接的な言動だけでなく、自分の意図と関係なくその「立ち位置」一つで加害者に加担していることもあり得るし、被害者からしたら全てが信じられなくなり恐怖と失望を与えてしまっているかもしれません。
公開初日の夜回、残念ながら(日本橋では)5番目のキャパのシアター。さらに残念なことに客入りは5割弱といったところで、さらに多くは女性。。。男性諸君よ、その何回目かのスラムダンク分の「時間とお金」をこちらに振り替えてはどうでしょう、と思うのですが勿論無理強いはできません。
私としては、流石、信頼のPlan B Entertainmentに「有難う、ブラッド・ピット」と言いたい作品。実に素晴らしかったです。
記者たちの執念、権力の宿痾を斬る
「パルプ・フィクション」「恋に落ちたシェイクスピア」「グッド・ウィル・ハンティング」……ワインスタインがプロデュースした作品は、皮肉なほど名作が多い。ヒット作は金を生む、そしてその才能には権力がついて回る。
ワインスタインの犯罪をニューヨークタイムズがすっぱ抜くその瞬間までの、記者の地道な取材と被害女性の葛藤や決心を描く本作。報道後のMetoo運動などの劇的な社会の反応などは周知のことだからか触れないが、そこに至るまでの関係者の心理の動きやワインスタインとの応酬などは、比較的淡々とした描写でありながら地下でたぎるマグマのような緊張感がある。ラストの出稿直前は、見ているこちらもどきどきした。
被害女性には不利な条件で示談契約書を書かせ金を渡し、身辺調査で弱みを把握して口封じ。意向に沿わないものは業界から締め出し、権力にものを言わせ報道も訴訟も潰す。映画や時代劇でしか見かけない、そんな巨悪が実在した。女性側も嫌だとは言ってなかったし、などと言い訳したらしいが、本気でそう信じているならここまで徹底的に事実を隠すような発想には至らないだろう。
取材活動の中心にいたミーガンもジョディも幼い娘を持つ母親だ。被害者と同じ女性としての正義感とともに、娘が生きる未来がワインスタインのような存在を黙認する社会であってほしくないという、強い願いがあったに違いない。
男性による女性への性犯罪という構図ではあるが、根底にあるのは権力の横暴と、それを許す法律の脇の甘さだ。男対女という単純な図式だけで語れる問題ではない。スクープに協力する男性の存在や、ニューヨークタイムズ社内の男性の闘う姿勢も描かれている。
制作総指揮のブラッド・ピットは、グウィネス・パルトローと付き合っていた当時彼女からワインスタインによるセクハラを聞かされ、彼に直接「俺の彼女に二度とあんなことをするな」と啖呵を切ったそうだ。
ワインスタインの醜悪さも見せられたものの(中盤にあった、被害女性との会話の録音音声はもしや本物?)、記者の覚悟や執念が物語の中心になっていてよかった。キャリー・マリガンとゾーイ・カザンのバディっぷりが自然で親近感があって、それでいて頼もしい。パトリシア・クラークソンが演じた上司のレベッカは毅然としていてかっこよかった。
一方、被害女性が多いので仕方ないが、それぞれの女性の描写が断片的な印象があり、20年以上黙っていたことを話そうと決心した契機が、人によっては分かりにくい場面があった(アシュレイ・ジャッドなど、一部本人がキャスティングされていたのはすごい)。
それと、ジョディがイギリスにあるロウィーナ・チウの家に行った時、本人が不在なのにワインスタインの行為を知らない夫に彼女の過去を話したシーンだけはかなり引っかかってしまった。いや、本人隠してたのに夫にぺらぺら話すってアリなの?結果オーライではあるけどさ……その辺はちょっと残念。
68歳で禁固23年を言い渡され、その後も別件で裁判が続いているワインスタインは、もう娑婆で悪事をすることはできないだろう。その後のMetoo運動で、彼のような人種は「前時代の悪弊」として一掃されつつあるようにも見える。
しかし、権力の周辺に驕りや腐敗が生じやすいのは、人間に心の弱さがある限り普遍的なことだ。どのような業界でも組織でも、決定権が集中する場所には、情報の風通しのよさと異論に耳を傾ける土壌、権力を持った者の恣意的な振る舞いを抑制する仕組みが必ずなければならない。
ワインスタイン後にそういう社会になったのか、その状態に近づけるべく自分自身に何が出来るのか。そういったことをあなたも考えて欲しいと、この物語から投げかけられている気がした。
セクハラのキッカケ!
ここから法律改正となってセクハラ問題が全世界に広まったんですね。素晴らしい作品です。犯人を最後まで見せないのは良いと思います。ただ、口調と体型がアンマッチでそこがマイナスポイントでした。
【哀しき沈黙を、執念で抉じ開けた子を持つ2人の女性ジャーナリスト魂を描く。長きに亘り、唾棄すべき行為を繰り返して来た映画界の権力者の真の姿。今作が製作され、世界で公開された意義は非常に大きい。】
ー ご存じの通り、映画プロデューサーだった、ハーヴェイ・ワインスタインの性犯罪を告発した2017年のニューヨーク・タイムスのスクープは衝撃だった。
この唾棄すべき男の所業を、全世界に露わにした2人の子を持つ女性ジャーナリストの執念は、今作で描かれている通りである。-
◆感想
・冒頭、忌まわしきトランプのセクハラ疑惑が描かれているが、(あの電話の声はトランプに激似であった。)是非、ミーガン(今作では、キャリー・マリガン)とジョディ(今作では、ゾーイ・カザン)のお二人には、トランプの所業を露わにして頂きたいと思うとともに、巧い構成だと思った。
ー スクープの難しさを描いているからである。-
・ジョディは、ハーヴェイ・ワインスタインの毒牙に掛かった女優や、ミラマックスの関係者の証言を追い求め、西海岸まで車を飛ばし、イギリスに飛ぶ。正に”現地現物”である。
ー 今作の魅力は、ミーガンとジョディの執念で取材する姿である。ミーガンは産後鬱の中、ジョディは幼き娘を家に置いて飛び回る。それを支える夫の姿も良い。-
・ミーガンとジョディの上司である、ニューヨーク・タイムス編集長や、編集局次長のブレない姿勢と彼女達を支える姿も心強い。
ー ハーヴェイ・ワインスタインの脅しともとれる電話に毅然と対応する編集長の姿。部下を持つ者はかくありたいモノである。-
・ミーガンとジョディの執念により、最初は沈黙をしていたが、徐々に思い出したくない出来事を語るローズ・マッゴーワン、アシュレイ・ジャッド等の女優達や、且つてハーヴェイ・ワインスタインの下で働いている時に、被害に遭った女性達の哀しみと怒りが綯交ぜになった表情。
ー セクハラ、レイプという行為が、如何に長年被害を受けた女性の心や、働く環境を奪っていたのかが良く分かる数々の告白のシーンは、哀しい。-
・被害に遭いながらも、示談金を積まれ、更に機密保持契約で口封じをさせられていた女性達。それを組織ぐるみでしていたミラマックスの愚かしき真実が明らかになるシーンも、恐ろしい。
ー 劇中でも、数名の女性が口にしていたが、”負のサイクルを止める制度を作らないと駄目。”と言う言葉は、重い。-
<マスコミの過剰報道が問題になる事も多い、昨今であるが今作を観ると、矢張りジャーナリズムとは地道に取材を重ねる事で、真実に辿り着くのだな、という事を改めて感じた作品である。
今作の製作総指揮には映画製作会社”PLAN B"の名があり、エンドロールでもブラッド・ピットの名前がクレジットで流れる。この貴重だが、重い作品にキチンとハリウッドの大スターが関わっている事は、素直に嬉しかった。>
タイトルなし
最初のカットで入る劇場間違ったか?と思った(後程彼女が誰だか分かる) 映画業界の悪をあぶり出すちょっと地味だけど社会派なストーリー、ウォーターゲート事件描いた1連の作品みたいでした この件を境に映画業界も騒がしくなってきたのでよく覚えている 映画って撮ったら終了だし労働環境等メスが入っていない旧い体質だったのかもしれないとは感じた
しかし映画を見る側としては作品にこんな裏が有ったのかもしれないと思うと心が痛んだ 夢を抱いて後を断たれた女性達がとても気の毒だ、その後も映画には関われないのか?
よくぞニューヨーク・タイムズ紙取り上げて、あんなに各所飛び回って調査してくれたと思う
難を言えば、出てくる人物が多すぎて誰か覚えるの大変、グウィネスパルトロウご本人出演してほしかったなぁ
記者の取材に対する執念
報道取材そのものに焦点を当てた作りで、『大統領の陰謀』を思い出しながら観ました。
性描写は一切出てきませんが、怯え、恐れ、怒りに満ちた被害者たちから、加害者の非道さ・卑劣さは充分に伝わってくる内容。
過去の被害者を守り、今後に新たな被害者を生まないために、こういう取材や告発は非常に重要だと思いました。
その、記者の取材に対する執念に対する賞賛も。
(同時に、手段と目的を入れ違えて、己の快・不快だけを基準にし、男性や表現を排除するのに利用することは、こういう事案の被害者をむしろ貶めることになるとも思いました。似非フェミのせいで、MeeToが足を引っ張られたようにも感じ)
そんな「重要性」をストレートに描いた、映画としてのクオリティの高さにも感嘆。
この素晴らしい映画、ブラッド・ピット(プランBエンターテインメント)やミーガン・エリソン(アンナプルナ・ピクチャーズ)が作って、ユニバーサル(と日本では東宝東和)が配給しているが、ディズニーで配給して欲しかった。
事件が起きた(隠蔽された)当時に、ワインスタインのミラマックス社を買収して、傘下に収めていたのはディズニーだったからw
(報道があったのは、ディズニーが同社を売却後)
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