春に散るのレビュー・感想・評価
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主演二人が両輪を成し共闘していく様が魅せる
沢木耕太郎といえば「深夜特急」が思い出される一方、「一瞬の夏」などのボクシングに焦点を当てたノンフィクションでも知られる。そんな彼が小説という形で二人の男の再起をかけた共闘を描いたのが「春に散る」だ。映画と文学はまた別物と思いつつ、冒頭の居酒屋で佐藤浩市がたった一杯のビールを大事そうに、美味そうに飲み干すシーンを見ただけで、この映画が受け継ごうとしている魂を感じた。そこからの身のこなし、全てのきっかけを作るパンチ。極限まで体を鍛え上げた横浜流星が炎の塊だとすると、本作での佐藤浩市は熱すぎず、冷めすぎず、人生を少し達観したところから見つめる共闘者を真摯に演じている。この両輪が素晴らしい。また、彼が声をかける昔の仲間として、片岡鶴太郎がなんともいえない味わいをもたらし、微笑ましくも胸熱くなる。その他の競演陣が色を添える様も実に見事。それぞれの生きる道が重厚に織り込まれたドラマに仕上がっている。
邦画界の“ボクシング部”的人材が大集合
大勢の熱意が結実した力作なのは確かだ。毎回演技派の人気俳優たちが豪華に顔を揃える瀬々敬久監督作品だが、今作には実際にボクシングや他の格闘技の経験があったり、過去作でボクサーを演じたことのある身体能力の高い役者たちが大集合。翔吾役の横浜流星は中3で空手の世界大会で優勝し、「きみの瞳が問いかけている」ではキックボクサー役で主演、また本作の役作りの一環でボクシングのプロテストを受け合格した。 翔吾が所属するジムのトレーナーの一人、山下を演じる松浦慎一郎は、瀬々監督が認めるように近年の日本のボクシング映画のキーパーソン。大学でボクシング部に所属し、俳優の下積み時代にはトレーナーも兼業、ボクシング指導を担った作品は「百円の恋」「あゝ、荒野」「ケイコ目を澄ませて」など多数あるほか、ボクシング映画への出演も多い。世界チャンピオン・中西を演じる窪田正孝は「初恋」「ある男」に続き3度目のボクサー役で、「ある男」で共演した松浦から撮影後も個人的にトレーニングを受けていたという。別のジムのトレーナー・郡司を演じた尚玄は、「義足のボクサー GENSAN PUNCH」のタイトルロールで主演。佐瀬役の片岡鶴太郎も、芸能活動で人気を博してから33歳でプロテストに合格している。こうした役者たちの豊かな経験と資質に加え、瀬々監督の演出と松浦の指導の下、ボクシング演技の精度をさらに高めていったことが本作の迫力ある場面に貢献したのは間違いない。 個人的な好みになるが、翔吾と中西の試合でパンチが顔にヒットして打ち抜くまでのアップをスローで見せる演出は、当然ながら相手に怪我を負わせない力の入れ加減がわかってしまうので、再生スピードを落とさずにカットを工夫して見せる演出の方が迫真度が増したのではないか。もっとも劇映画でこれ以上のリアリティーを求めるなら、現役のボクサーたちを起用して実際に殴り合う姿を撮影するか、打たれた瞬間の顔の歪みや頭部の揺れをポストプロでCG加工して描画するしかないだろうという気もする。 もう一点、これも好みの問題だが、「春に散る」のタイトルが表示されたあとのシークエンスは蛇足に感じた。あのタイトルショットで潔く終わった方が余韻をより深く味わえそうなのに。とはいえ、若い世代には希望が託されるラストシークエンスの方が共感度が高いだろうか。
男たちの映画
原作未読。佐藤浩市と横浜流星がかっこよすぎる。さらに窪田正孝と坂東龍太がしっかりと身体を作りこんでいるおり、特に窪田正孝はどれだけトレーニングしたらこんな身体になるんだろう、というレベル。横浜流星がボクサーライセンスを取ったというだけあり、ボクシングシーンも迫力満点。これだけで満足度は充分。 小説を2時間にまとめるのは難しいのだろうけど、橋本環奈だけ話がつながらなかったので☆マイナス1です。橋本環奈のくだりは全カットして、男だけの映画にしても良かったかも。
また観たい!
試合のシーンががっつりあって満足度が高い。ボクシングの試合演技って殺陣とはまた違った覚え方だと思うけど俳優陣の記憶、動作、鍛え方に尊敬する。 ボクシングには詳しくないので これを機にタオルを投げ入れる意味を知った。
正統派だけど
見ていて一つだけ気になったことが。。。 限られた時間の中で全てを盛り込まず、あー、そうなったんだって、感じのシーンが割とあった。スッキリと見られた気もするし、アッサリし過ぎている気もした。
仁一と翔吾の「想い」
<映画のことば> 「そういうのなぁ「特攻精神」って言うんだよ。そんな考えは捨てちまえ。」 「仁さんだって、隠して、手術しようとしないで、メチャクチャじゃねえかよ。」 「年寄りは、メチャクチャなんだよ。」 上掲の映画のことばのように言って、仁一は翔吾の世界への挑戦を引き留めるのですけれど。 しかし、翔吾が最後に挑戦を決断したのは、けっきょくは「幸運の女神に後ろ髪はない」ということなのでしょう。 その決断が正しかったのか、間違いだったのか―。 ただ、間違いがないのは、翔吾にとっては失明の危険を冒してでも世界に挑戦する気概があり、彼はその気概を大切にしたという「事実」が残るだけなのだと思います。 だから、その「事実」だけを「事実」として受け止めるべきなのであって、そういう決断の当否は、第三者が論ずるべき筋合いのものでもなく、決断をした当の本人にも、本当は分からないのかも知れません。 ただ重く受け止めるべきは、トレーナーを引き受けた仁一と、世界に挑んだ翔吾の「想い」ということなのだと思います。 そう考えると、ズシリと重いものが胸に迫る一本だったと思います。 そして、その中にほのかに見える仁一と翔吾との師弟愛が素敵な一本でもありました。 そして、往年のボクサーとしての仁一にも、思い残すことは、これで何もなかったことでしょう。 「願わくは/花の下にて/春死なん/その如月の/望月の頃」と詠んだ西行のような、明鏡止水の心境だったのだろうとも思います。 そんなこんなの意味をこめて、佳作としての評価が適切な一本であったとも思います。 (追記) それにしても、歳をとりましたねぇ。佐藤浩市も。 見事な白髪になっていましたけれども。 今年(2024年)の誕生日が来て64歳ということですから、まだこれが「地毛」というわけでもなかったのだろうとは思いますけれども。 その見事な白髪が、本作では印象に残りました。 (追記) ボクシングは、ある意味、不思議なスポーツでもあると思います。 グラブやマウスピースといった(最小限の?)保護具を装用した上でとはいえ、半裸の男たちが、ただただ殴り合うということだけで、どうしてこんなにも観客の熱狂を誘うことができるのでしょうか。 (その点、ジョー的な要素が強いプロレスリングとは、好一対かとも思います。) ただ只菅(ひたすら)に自分の足で走るだけというマラソンという競技が、あんなにも観客の感動を呼び起こすのと、同じなのかも知れないと、評論子は思います。 (追記) 試合の時に、レフリーが両方の選手にかける掛け声も、評論子には、意外でした。 「ファイト」(頑張れ)ではなく、「ボックス」(殴り合え)なんですね。 それは、もともとが殴り合う(ボクシング)というスポーツなのだから、ということになりそうです。 妙なところに感心してしまいました。
チャンプを目指すな 人生を学べ
最近ボクシング映画が増えてきたような気がする。「BLUE/ブルー」、「アンダーザドック」、そして本作。 松山ケンイチ、東出昌大、森山未來、北村拓海、そして本作の横浜流星と窪田正孝。みんなストイックに筋肉を作って、本当のボクサーのような体型に仕上げる。この俳優魂はやはり凄いと思う。ただ、いつもTKOがなく、リングで打ち合い続けるのはウソだと思うけれど。 ウソでも、その鍛えられた体を見ると文句が言えなくなる。 どこまでが真剣勝負かはわからないが、彼らはまさにボクサーだ。 「すんげえ世界が見えたんだよ」 この横浜流星の言葉にウソはない。 そして、彼が練習してきたジムに掲げられていた、「チャンプを目指すな 人生を学べ」という文字がいつまでも心に残る。
内容的には可もなし不可もなしという感じ。 横浜流星の動きはプロライ...
内容的には可もなし不可もなしという感じ。 横浜流星の動きはプロライセンスを取っただけあってなかなかよかった。 最後、佐藤浩市を死なせる必要があったのか疑問だが、「春に散る」というタイトルには佐藤も含めてということか。
劇場案件だったかも
原作を読んでいたけど、すっかり忘れていたので。 2時間半も納得の内容の濃さ。 佐藤さんと流星くんが、ミット打ちのようなリズム感&マッチング。 というか気づかないと、流星くんってわからないワイルドさ。 山口智子さんのジム会長をはじめ、どの配役もベスポジだったな。 これからの若者と、病気を抱えた元ボクサー。 「かつての自分の、夢を託しすぎているのでは?」の箇所は。 それが勝負の世界の、新旧交代だと思う。 終盤のファイトシーンは、特殊メイクを使ったにしても圧巻。 (苦手な人は、そもそもこの映画は見てはいけない) 監督・脚本瀬々敬久さんでしたか、納得! ⭐️今日のマーカーワード⭐️ 「自由になれ、そのために練習しろ」
横浜流星の身体を張った演技が勢いだけでなく細かく丁寧に演じられてい...
横浜流星の身体を張った演技が勢いだけでなく細かく丁寧に演じられているのが映画の評価に高得点を与えていると思う。佐藤浩市を含めて周りの人の暖かい人間味の描かれ方も映画に幅を与えて素敵な作品になっている。
やっぱり佐藤浩市
やっぱり佐藤浩市は素晴らしい俳優だと思った。 見ているだけでなにか感情移入してしまうなにかを持っている。散り際の桜のような美しさがある役者である。 昭和期にあったボクシングというスポーツの美学が体現された映画で、当時を知るものとしては、ありがちなストーリーだけど、ここまで仕上がってるのは素晴らしいと思った。まあ、でも令和の現代の世代に通じるかは?。
今に生きる
凄まじく突き動かされて放心状態。背中で魅せる名優たちの熱気。それを熱波師の如く爛漫に率いる横浜流星。挨拶からも並大抵じゃない挑む姿勢。あの超越した集中力。涙も枯れる1Rに懸ける翔吾は唯一無二。無我夢中がことごとく人の想いを。何分咲きでも今を一心不乱に生きていたい。
タイトル通りが過ぎる映画
ポクシングとか格闘技系はあまり好きじゃないから好んで観る系統ではないけど、瀬々監督に横浜さんだったので観てきた。 自分の中でボクシングのイメージが覆された。映画だからという演出もあったかもだけど、試合でめちゃくちゃ殴り合ってた選手同士が試合終わった途端に相手を讃えあうって。爽やかすぎる。軽く感動した。相手役の窪田さんも上手すぎだったし。 あと、橋本環奈さんね。主役じゃなくてキラキラもしてない橋本環奈さん観れる映画って珍しいんじゃないかな。すごく良かったな。 あそこまでタイトル通り過ぎる終わり方は正解なのか問題。ひとりで桜見にいくあたりから、まさかと思ったけどそのまさかでウソーって感じだった笑。
久しぶりに最高の映画に出会えました
格闘技は怖いと思っていたのですが、そう思って観ないのはもったいない! 主人公の熱い想いにめちゃめちゃ感動しました。 俳優陣の演技力はもちろん、ボクシング技術も本物! 今年観た映画の中でも、特に友人に勧めたい映画!
ベテラン俳優陣の円熟した演技と、それに気圧されない若い才気が際立つ一作
老境に差し掛かった元プロボクサー(佐藤浩市)と、才能はあるものの若さゆえの危うさも持っている若きプロボクサー(黒木翔吾)の、ボクシングを通じた交流のドラマ、ということで、『クリード』(2015)みたいな作品かな、と思いつつ鑑賞したところ、確かに「ボクシングを題材とした師弟物」としておよそ想定できる事態、要素はだいたい出てきました。 しかしそういった既視感が全く退屈さに結びつかず、むしろ作中に登場する彼ら彼女らの人生をもっと見たい、と思ってしまう魅力が本作にはありました。それは『ラーゲリより愛を込めて』(2022)でも見せた、瀬々敬久監督の、ともすれば情緒的になりそうなところをぎりぎりで回避する演出と、佐藤浩市、片岡鶴太郎、山口智子ら、経験豊富な俳優陣による円熟した演技、そしてそうしたベテラン陣の経歴の厚みに気圧されることなく、しっかり体を作り込んで試合場面に迫力と緊迫感をもたらした横浜流星の努力と才気などが噛み合った結果と言えます。 非常に厳しいプロボクシングの世界を、少なくとも観客に生々しい現実感を感じさせるほどに作り込んだ日常描写も素晴らしいです。練習風景や試合場面など、本作の各場面について、『BLUE/ブルー』(2021)を手がけ、自らもボクサー経験のある吉田恵輔監督の感想を伺いたいところ!
久々に映画を観た感じ。
これ、女性友だちと観に行くつもりだったんですよね。 ところが…ものの見事にフラれちゃいました( ͒ ́ඉ .̫ ඉ ̀ ͒) そんなんは、別にどーでもええねんで!みたいな感じでスクリーンに釘付けの2時間弱の幸せな時間を過ごさせていただきました。 タイトルからして、主人公のどちらか、あるいはどちらもが命を散らすお話だということはわかっていて。 仁一が引退した経緯が伏線になっていて、翔吾も同じ道を辿るのかな?せやったらなんかモヤモヤしてイヤやなぁ…と思いながら観ていましたが、見事に乗り越えてくれちゃいましたね。 このあたりのカタルシスが本当によくて。 『ロッキー』以来じゃね?こんなにも迫力のあるボクシングシーンの迫力ある描写って。 ただ、唯一惜しかったのは、せっかくの哀川さんご出演なのに見どころが、もうひとつだと思ったのね。 もっとストーリーに絡めてほしかったかなぁ。 鶴太郎さんは、本当にいい味出しまくりでしたが。体ほっそ! そして、添え物程度のアイドルにしか思っていなかった橋本環奈がほんっとにいい女優さんになっていたのにはビックリするやら嬉しいやら。 懐かしきスポ根感ありーの、爽快感ありーの、人間ドラマありーの、見事な作品でした。
橋本環奈が意外と良かった
2023年映画館鑑賞50作品目 9月24日(日)イオンシネマ新利府 ハッピーナイト1300円 原作未読 監督と脚本は『64-ロクヨン- 前編/後編』『最低。』『友罪』『菊とギロチン』『護られなかった者たちへ』の瀬々敬久 脚本は他に星航(新米?) プロボクサーを引退し海外でホテルマンに転身した広岡仁一 ホテルの経営を後輩に譲り40年ぶりに帰国した広岡は旧友と再会し親睦を深める そんなときに辞めかけていたプロボクサー黒木にボクシングを教えてくれとしつこくせがまれてしぶしぶトレーナーを引き受ける話 広岡は心臓疾患で余命わずか 黒木はタイトルマッチ直前に目を痛めていた ボクシング映画は日本でも最近多く作られるようになった気がする 理由はよくわからない ただトレーナーが主人公なのは邦画では珍しい 監督と脚本は実績豊富な瀬々監督(『楽園』はいまいちだったけど) ベテラン若手と演技力高い俳優陣を揃えた ボクシング映画というジャンルは比較的にいって当たりやすい 面白くないわけがない 21時15分の回で観たが全く眠くならなかった 27年ぶり映画出演!山口智子 ホームベースのような輪郭は相変わらずで懐かしい そういえば夫は大の野球好きだったな 見せ場はやっぱりボクシングの試合でしょ 特にチャンピオン戦 最終ラウンドはなぜかノーガード戦になるけど 嘘っこでパンチをして別撮りで鼻血メイクとか殴られた感じを作る『みなさんのおかげです』のコントのアレを思い出した しかもスローで表現 観客も 『8時だよ!全員集合』前半コントのボクシングの加藤志村を思い出す 映画でこの試合クリンチが多用されたからなおさら ありふれた表現だが嫌いじゃない ノーガード戦は賛否が分かれるところ NOはなにかとね ノーバントノーボール作戦にNOといえる日本にノーパン喫茶 いいぞいいぞと拍手喝采する者もいれば怪訝な表情を浮かべる人もいるだろう はっきりノーを表現すると波風が立ちがち 『最後の猿の惑星』では禁句になるくらい 豪華俳優陣の中で橋本環奈は若干心配した ひとり浮いちゃうのではないかと しかし瀬々監督のおかげなのか父の介護疲れで苦しんできた仁一の姪を演じきったその姿はとても良かった 少し驚いた 彼女を見くびっていた やれば出来る子 2ちゃんねるとかでキモオタがゴリ押ししていたからか俳優として仕事を始めたころはあまり好きじゃなかった 最後どうなるかはタイトルでだいたいネタバレ だからといって全然悪くない 佐藤浩市の死体を演じるのだが表情が素晴らしい 黒木のトレーナーを引き受けた元プロボクサーの広岡仁一に佐藤浩市 若手プロボクサーの黒木翔吾に横浜流星 大分から上京した仁一の姪の広岡佳菜子に橋本環奈 真田のジムで世界戦を期待されているプロボクサーの大塚俊に坂東龍汰 仁一の旧友の元プロボクサーでジム経営に失敗し妻子と別れた佐瀬健三に片岡鶴太郎 仁一の旧友の元プロボクサーで傷害で出所したばかり妻を病気で亡くした藤原次郎に哀川翔 プロボクサーでチャンピオンの中西利男に窪田正孝 広岡がかつて所属していたボクシングジムの会長の娘で現在は父を継いで会長を務める真田令子に山口智子 黒木のセコンドの山下祐二に松浦慎一郎 大塚のセコンドの群司に尚玄 和美の職場の同僚で付き合っている原田に奥野瑛太 ガソリンスタンドで働いている翔吾の母の黒木和美に坂井真紀 中西が所属するボクシングジムの翼会長に小澤征悦
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