春に散るのレビュー・感想・評価
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ふたりの出会いからタイトル戦までの1年間にてんこ盛りにしながら、ダレずに引きつけるのは瀬々監督の力業でしょう。ギッシリ濃密な力作です。
ボクシング映画にハズレはない。そしてシンプル。リングでは倒すか倒されるか。殴り合いにのめり込む人々の生き様(時には死に様)や人間模様がドラマとなるのです。
何者でもなかった主人公が、血と汗と涙の末に夢をかなえる。胸が熱くならないわけがありません。
一方でボクシング映画は難しい。スポ根の王道を行く物語はこれまで何度も作られており、どこかで見たようなとなるからです。それだけに、試合の場面がウソくさいと全てが台無し。
このところ俳優が体作りに精を出し撮影技術も蓄積されて、「BLUE/ブルー」「ケイコ 目を澄ませて」など力作が目立つこのジャンル。本作は沢木耕太郎の同名小説を、瀬々敬久監督で映画化しました。見応え十分、プロの力を感じさせる一作です。
●ストーリー
40年ぶりに故郷の地を踏んだ、元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)。引退を決めたアメリカでホテル事業を興し成功を収めていましたが、心臓に病を抱え、不完全燃焼だった人生にケリをつけようと突然帰国したのです。
かつて所属したジムを訪れ、かつて広岡に恋心を抱き、今は亡き父から会長の座を継いだ令子(山口智子)に挨拶した広岡は、今はすっかり落ちぶれたという二人の仲間、佐瀬健三(片岡鶴太郎)、藤原次郎(哀川翔)に会いに行きます。
ある夜、酒場で絡んできたチンピラを軽々と殴り倒した広岡。それを近くで見ていた黒木翔吾(横浜流星)は、そのパンチに見惚れて、思わず広岡に手を出してしまうのです。翔吾は、不公平な判定負けに怒り、一度はボクシングをやめた元ボクサーでした。しかし広岡は翔吾を必殺のクロスカウンターでKOしてしまいます。この一発で翔吾はボクシングへの情熱に目覚めるのでした。
季節が巡り、一軒家を購入した広岡は、佐瀬や藤原に広岡の姪の佳菜子(橋本環奈)も加わり、不思議な共同生活が始めていました。そこへ翔吾が訪れ、再起を期してボクシングを教えてほしいと頼み込みます。
やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん一度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいきます。果たして、それぞれが命をかけて始めた新たな人生の行方は?
●感想
元ボクサーの広岡と路地裏でクロスカウンターを打ち合う翔吾。この。瞬間”が、運命を決定づける出会いのシーンが鮮烈です。
大筋は正統派。ともに不当な判定負けを喫した過去を持ち、黒木は再燃した勝負への熱意を広岡にぶつけ、老境に差し掛かった広岡は諦めた夢を黒木に託す。世界を目指す2人に、父子のごとき絆が生まれるのです。
世代間の継承という主題は、老いたロッキーが青年を指導する「クリード チャンプを継ぐ男」を連想させます。味わいはもう少し複雑。翔吾にとっては人間的成長を遂げる通過儀礼の一年間でもある。対して仁一は黒輝明の「生きる」ではないが、残された人生でどんな仕事をするべきかとの問いに向き合うのです。
原作では、老いた男の生き方、あり方をテーマにしたところに新しさがありました。映画は、一度はボクシングを諦めた青年の再起に同じぐらい重きを置いたのです。
定番の展開となり、盛り上がりは保証されましたが、同時に既視感も出てしまいました。また主人公が2人になったため、感情が迷子になってしまいました。その点は難しいところです。
惜しむらくは、ドラマ部分が駆け足なこと。上・下巻ある長い小説を、2時間13分の映画に収めたせいかもしれません。翔吾の恋人になる佳菜子(橋本環奈)、仁一に複雑な感情を抱くジムの会長、かっての仲間との人間模様にまで踏み込んだせいで、話が散漫になったきらいがあります。エピソードを絞るか、2部作にしても良かった気がするのです。 とにかくこれだけのドラマを、黒木と広岡の出会いからタイトル戦までの1年間にてんこ盛りにしながら、ダレずに引きつけるのは瀬々監督の力業でしょう。ギッシリ濃密な力作です。
●素晴らしい横浜流星の役作り
ともあれ横浜がいい。最近の日本のボクシング映画では、「あゝ、荒野」の菅田将暉、「アンダードック」の森山未束も良かったですが、それ以上でしょう。肉体は本物のボクサーのようで、筋肉を付け鍛錬を積んだのが分かります。パンチにもキレがあり、走るシーンまで美しいのです。
試合場面では音といい動きといい、本物らしく見せる工夫が十分。クライマックスの20分にわたる死闘は、まさに手に汗握ります。激しくストイックなトレーニング風景など、定番要素は十二分に盛り込まれ申し分ありません。
原作では脇役だった中西を敵役に格上げし、翔吾陣営を挑発する世界王者にしたのもいいアイデアでした。演じた窪田正孝の小憎らしい演技と持ち前の身体能力も手伝って、ピリピリとする打ち合いとなりました。最後のスローモーションの多用と判定による決着を除けば、ボクシングシーンに不満はありません。
●広瀬は監督の分身
老いや死をどう迎えるかの美学を描いた原作を踏まえた本作は、どこか黒澤監督の『生きる』につながるところを感じました。特に唐突に描かれるラストシーンはまさにそれです。
瀬々は仁一に自分と同じ大分出身の設定を付与し、同い年の佐藤に主役を託しました。広岡がボクシンから離れていた空白期間は、瀬々が映画作家として日本社会の軋みを描き続けた時期と重なります。そして今、分断や格差を埋める架け橋となり、チャンスを与える存在となって本作に取り組んだのです。
広岡に瀨々監督を重ねて鑑賞すれば、きっと瀨々監督の映画の情熱を感じることになるでしょうし、瀬々個人の“うた”が確かに聞こえてくることでしょう。
日本的ボクシング映画
しょぼい
黒木がチンピラかぶれだったのに、橋本環奈の前では急に好青年になってるのに、おい!キャラ変わりすぎるでしょ!
黒木があれだけファイト見せたのに、じいさんは手術怖いって手術せず桜の木の下で花びらまみれで野垂れ死にするし。
たとえ死んだとしても、最後のシーンがしょぼい。
橋本環奈がもう家を出た黒木に走りよって新妻気取りでお弁当を持っていくのがわざとらしいし、おそらくマドンナ役なのに、ひたすら暗いのよ。
黒木はチンピラかぶれじゃなく、黒髪で話し方も好青年になり、リクルートスーツ着てるし、結局サラリーマンになるんかーい。
通勤途中、知らないじいさんとぶつかりそうになり、「見えてないんかい!」とキレられるシーンあるけど、黒木の表情だけで、見えてないと分かる表情やらが欲しかった。黒木の演技力が乏しい。
しかも、通勤途中、死にものぐるいで走った土手にきて、ずっと後ろ姿だけで、突然「走りゃいいんだろっ」とチンピラ言葉になり、ジ・エンド。
後ろ姿じゃなく、黒木の表情で様々な思いを伝えたっていいし、幻、幻覚、妄想、せめて空耳でじいさんの声くらい流しても良いよね。
1枚の桜の花びらで始まるなら、最後は桜の花吹雪くらい散らしても良いと思う。
映画を観る人の気持ちを考えていない。今時、読解力が必要な映画はめんどくさい。
非常に後味が悪い映画です。
邦画久々に観たけど、相変わらずしょぼいのにガッカリした。
レビューが良かったから期待した私が浅はかだった。
結局は、若造のわがままに振り回されて老人が死に、自分は片目になりボクシングも出来ず、そこまで犠牲を払ってようやくサラリーマンになると言う薄っぺらい映画です。
迫真の演技
すっぴんのハシカンは最高❤️
なんだけど、、、
うーん、ストーリーがベタベタなのは分かりきっていたので、特にマイナスにはならないがw、例によって「制作者側は明白のことなのに、観客にはうまく伝わっていない」というシーンが見受けられた。
例えば冒頭の土手をダッシュするシーン。6本しか出来ない黒木に「10本出来るようになってからだ」と突き放すのだが、その“ダッシュ”の苛酷さがイマイチ分からない。草むらをハアハアしながら走っているだけで、ロングも無ければ主人公目線も無い。
そして最初の試合のシーンで、相手の妻子が必死になって応援している姿を見て黒木のラッシュの手が緩んだかと思えば、最後は叩き潰すような流れになり、ジンに呆れられて叱責されるが、何がいけなかったのか私には良く分からなかった。
父親(ジンの兄)が死んで大分の実家が解体されてしまったハシカンが、(そうなるだろうけど)いつの間にかシェアハウスに住んでおり、いつの間にか黒木と恋仲になっているのが唐突すぎる。スマホで「これが広岡家の最後です」というだけでなく、少しは説明を入れてよ。
最後の日本人同士の世界タイトル戦なんて武道館や国技館、横アリレベルのデカい箱でやるのは当たり前で、あの三千人くらいの狭い会場なんてあり得ない。その辺りに日本映画の限界を見るしまう。
…とクドクドと言っては見たけれど、全体的には良く出来ていたと思う。ファイトシーンはどれも素晴らしかったし、最後のシメもアレしかない。
そして、タイトルにも書いたが、すっぴんの橋本環奈は素晴らしい。つい先日はミノムシのような汚い格好で出番も少なかったのに…これぞハシカンここにあり!かと。
Life Goes On
格闘技経験者が集う渋さ全開のボクシング映画。宣伝があまりされてないのがもったいないくらいの良作でした。
若い頃にボクシングを辞め、アメリカに渡米し、再び日本に帰ってきた仁一、居酒屋でパンチを食らわせた翔吾が弟子入りを志願し、お互いの夢のために歩き出すが、仁一は病気を抱えており…といった感じのストーリーです。
ボクシング1本に絞りつつ、登場人物のバックボーンを掘り下げ、試合と共に成長を描くというのはとても王道ですが見やすくて良かったです。少し端折りすぎかなーと思う場面があったのは惜しかったです。
役者陣の熱がビシビシ伝わってきました。横浜流星さんの肉体は完成されてますし、パンチのキレや避ける動作にとても見応えがあり、プロのライセンスまで取っちゃってるので本格的にこういうアクション路線に舵を切ってきたなという印象です。獣のような目つきで対戦相手を捕らえにいくのがこれまたカッコいいです。
佐藤浩一さんのザ・師匠な風格が本当たまらないです。パンチのキレも健在ですし、時に厳しく、時に優しくを貫く姿が渋かったです。
片岡鶴太郎さんの気のいい爺ちゃんぷりも見応えありです。ギスギスした空気を分断し柔らかな雰囲気にして、対立が起きると宥める側に回る、この作品の良心と言っても過言じゃない存在だと思います。
橋本環奈さんは普段の役柄とは全然違う幸薄そうな表情に仕草、ここまでの顔を広げられるとは…恐れ入りました。どんどんこういう役が増えていけばいいなと思いました。
窪田正孝さんの強キャラ感も素晴らしかったです。もう少し登場頻度が多ければ深掘りできたのになとは思いましたが、チャラさと強さを同時採用していてそれでいてボクシングも達者ときたらもう文句の付け所なんて微塵もありません。
翔吾vs中西の対戦、これは激アツでした。真っ向勝負、小細工なしのぶつかり合いに観ているこちらも固く拳を握りしめていました。
仁一から学んだ攻めと守り、これまで戦ってきた相手との経験を活かした考えるボクシングと直感のボクシングをフル活用して挑む姿が絵になっていました。目を怪我して失明の危機がありながらも、その傷を増やしながらも勝負を止めない姿は心を打たれました。血を垂らし吐きながらも、お互い生きるために戦い続ける、「勝負」ってこれだよなと再確認することができました。防御を捨て、フルアタックで打ち込むシーンは鳥肌物です。
ただ、終盤はスローモーションでの打ち合いになってしまったので、そこまでの高ぶりがシュンと沈んでしまったのが残念でした。最後まで魂の殴打を続けて欲しかったんですがこればかりは仕方がないのかなと思いました。観客をマジマジと映さんでもいいのになと5分くらい思っていました。これは邦画の悪い癖です。
「春に散る」というタイトルの時点で、ある程度どのような終わり方になるかは予測できていましたが、桜の木に沿って倒れている仁一の姿と共にタイトルが出る流れは味があるなと思いました。その後に翔吾の半年後の姿が映されますが、ここは正直無くても良かったかなと思いました。未来へ繋ぐという演出だとは思うんですが、そこまで映さなくていいのにという気分になってしまいました。
地味に食事を大事にしているシーンが多く描写されていたのが好印象で、仁一特性のカレーがまず美味しそうですし、佳菜子の手作りのお弁当がとても美味しそうでしたし、食堂で出されるランチも美味しそうでしたし、ここの力の入れっぷりはプラス評価です。
熱を帯びた邦画を観れてとても良かったです。血で血を洗うボクシング、全員が命をかけて映画に向き合ってくれたからこそ今作が誕生したんだと思います。まだまだ邦画も強く進み続けてほしいです。
鑑賞日 8/30
鑑賞時間 12:30〜14:55
座席 J-28
23-103
後悔しない生き方
ドラマとして良く言えばそつがない。人物像がしっかり描かれていて
納得はした。しかし決して悪くない代わりにドラマ部分は想定の範囲内
というか、正直言って感情を大きく揺さぶられることはなかった。
その代わりボクシング場面は心に訴えてくるものがあった。
一番の見所は役に真摯に取り組んだ横浜流星のボクサー姿。過去に
様々な役者がボクサーを演じてきたが、素人目にもそれっぽく見せて
いるだけ?と思う人もいた。その点彼は別格だった。
役作りでトレーニングするのは当然として、日本ボクシングコミッション
(JBC)のC級(4回戦)プロテストに合格したというのだからどれほど
本格的に役になりきろうとしていたかが分かる。
鍛え上げた肉体、切れのある動きもそうだし顔付きや話し方まで
そこにいるのは「ボクサー・黒木翔吾」だった。
一度は挫折しながらも広岡仁一と出会い、一から出直して世界
チャンピオンを目指す。街のチンピラ風から始まり、ボクサーとして
人として成長するに従って顔付きが変わり貫禄も出てくるところが良い。
対戦相手役の窪田正孝・坂東龍汰も良かった。そう言えばボクシングを
題材にした映画でトレーナー役でよく見かける顔がいるなと思ったら
松浦慎一郎という人で、出演すると同時に役者へのボクシング指導も
していたそうだ。この人の貢献も大きい。
登場人物それぞれが心に傷を負っていたり身内に先立たれたりしている。
自分自身の健康状態が危うい者もいる。しかしどんな境遇にあっても
必死になって頂点を目指したり、あるいは目指している誰かを支援する。
そんな前向きな人生を生きている人達はやっぱり輝いて見える。
世の中は不公平だから努力がすべて報われるとは限らないけれど、
目標を定めて着実に進んでいく人にはその人しか味わえない達成感や
充実感が待っている。この映画は黒木翔吾や周囲の人間関係を通して
後悔しない生き方というものを見せてくれた。
俳優・横浜流星自身が、「後悔しないように全力で生きる」とコメント
しているのも黒木翔吾の人物像と重なって共感できる。
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終映後場内が明るくなった時、原作本(ハードカバー)を表紙が見える
ように抱えた初老のおじさんがいて、周囲のお客さん(面識なし)に
「こんな面白い映画久しぶりに見た!」と言って同意を求めていたのが
微笑ましかった。そのおじさん、劇場スタッフにも同じことを
言っていた。原作ファンとして相当嬉しかったんだろうな。
骨太の見応えある映画
桜の花びらが印象的
春に散り、また何度でも咲け
正直、ストーリーとしてはありがちで、テンプレといってもいい。
しかし、奥行きのある演技と熱量を感じる演出が、作品を非凡なものにしていた。
出演作を見るたびに、横浜流星が分からなくなる。
そのくらい、本作では身体も眼差しも、熱く真っ直ぐなボクサーそのものだった。
窪田正孝も、ジムに顔を出した際の去り際と、わずかな練習シーンで中西のイメージを一変させる。
舐めた態度は彼なりの鎧だったのだろう。
本作に出てくるボクサーは、翔吾と戦ったパパさん含めてみな必死である。
最後の試合も、お世辞にも綺麗ではなく、後半にいくにつれて泥試合となり、判定。
(判定は広岡と翔吾の過去に絡むのもあるけど)
そのあたりも人間臭くて、観ていて熱くなる要因でもある。
橋本環奈はいつになくメイクが薄く、新鮮だった上にキャラにも合っていた。
しかし、母は結局会場に行かないし、立ち位置的に必要だったかは疑問が残る。
むしろラストは彼女の支えなしで翔吾が独りで立っていた方が、より強い演出になったようにも思う。
哀川翔のキャラもあまり存在意義を感じなかった。
(どちらも演技はよかったんですよ)
逆に片岡鶴太郎は、佐藤浩市より数段元ボクサーっぽかったし、いい脇役だったと思う。
広岡家での疑似家族の形成など空白も多いが、演技の厚みでカバーされていて薄さを感じない。
試合の臨場感だけでなく、全体に熱量を感じる快作でした。
佐藤浩市と横浜流星、二人の演技だけで満点をつけられる
※ボクシングはミリしらの人が書いてます
※ドラマ含めて実写映像が苦手な人が書いてます(あまり実写事情を知らないです)
近所の終映まで何回か見ると思うのですが、あまり入りがよくなかったようなので、鑑賞を迷っていらっしゃるどなたかのお耳に届けば…という気持ちで理解が浅いながらも初見でレビューを記載します。
酔っ払ってるので誤字脱字あったらご容赦ください。後ほど気づけば直します。
【春に散る】は、「純粋である」ことの儚さと尊さを、極限まで追求した作品です。
予告編での役者さん達の演技が強く印象に残っており、公開を待ちわびていました。結果、期待を超える出来でした。
表題のとおり、満点としたいと思います。
<最初に>
格闘技苦手、ボクシングとか殴り合いでしょ…という方でも見れる方が多いのではと思います(自分がそうなので)。
出オチですが、試合でもさほど悲惨なシーンはありません。作品のテーマも格闘技じゃないです。
もし作品が気になっているのなら、むしろそこで止まってしまって見ないのはもったいないです。
<最大の見所>
なんといっても、主演二人の演技力に尽きます。
話は何も想定外は起きない感じですが、この作品では、ストーリーの意外性や複雑さはかえってノイズになると思います。
佐藤浩市も横浜流星も映画全編、どの場面も一分の隙なく、予告の高品質を貫き通していました。彼らから目が離せないです。
・物静かでインテリの雰囲気もあるビジネス成功者、なんでこの人が闘拳やってたねんていうトレーナー役の佐藤浩市
・貧しい中でも限りなくピュアでまっすぐな、護る拳のボクサー役の横浜流星
生老病死、自分ではなにひとつままならない中、この二人の「生」が交錯したごく限られた時間での、極限まで不純物を取り除かれた透明感がすごすぎました…青春時代ではよくあるテーマと思いますが、親子よりも年が離れた世代間でここまで峻烈に輝けるものなのか、と衝撃を受けました。
ただこれは、佐藤浩市と横浜流星「だから」表現できた世界観だと思っています。おそらく、演出も最大限彼らを活かすことに専念されたのではと拝察します。
オレの親父になってよ…、ひとつのプライドも気負いも虚飾もなく、共に過ごした何千何万の思いをただこの一言にのせて、まっすぐに佐藤浩市に乞える横浜流星の技量の凄さ。
対して佐藤浩市は、死期への悟りから、これ以上になく優しく、懇請を拒絶します。これ以上奪うものを相手から増やせないという心情が漏れ聞こえてくるような、巧い演技です。
演出やカメラワークは完璧に二人を生かした構成になっており、非常に美しい場面でした。
この場面を見るだけでも、二千円を払う価値があります。
自分ではなにひとつままならない、というのはメインキャストも共通していて、メインキャスト陣も非常に好きでした。
かつての栄光から落ちぶれた元ボクサーの鶴太郎さんと哀川翔さん、親の介護で人生を台無しにしてきた環奈ちゃん、みんな、弱い糸のように諦念のなかを漂いながら、それでも優しくまっすぐ、自分にとっての大切ななにかを守るために強く生きるさまを好演されていて、心から幸せを願いたいキャラクターたちでした。
<ただ残念…>
否定的なことなのでちょっと言葉を濁しますが、「あしたのジョー」では葉子さん役に当たる方は好きになれなかったです…役のせいか役者さんのせいか明文化が難しいのですが、他のかたの配役でみたかったという感想は正直強く、周りがレベル高すぎてだいぶ差があったように思います。予告編でも唯一違和感があったちゃそう。
まあでもメインキャスト中ではあまり重要ではない役だったので、ここは我慢内の範疇としました。
<最後に>
桜が、本作のテーマになっています。
どれほど忙しなく生活していたとしても、来年もまた満開の桜を見たい…本作を見て、そう思いました。
春の嵐が、花をすべて散らしてしまう前に。
熱い試合だった
ストーリーがベタでいいです
おじさん構文の様な映画
その昔、ボクシング映画にハズレなし‼︎が合言葉だった。
邦画から足が遠のき映画館で観る機会が減っていたが、YouTubeに流れるCMを見て合言葉宜しく一人でレイトショーに。
久しぶりの映画館での邦画、それもボクシング映画。
往年の名俳優の演技、そして時代が経ったことを感じさせるそれぞれの顔。世代交代をした主役達。
あぁ自分も歳とったなぁと思うと、出て来る登場人物のキャラ構成もどっか懐かしい。
安定感のある名優達の演技がこの物語を支えている。
しかしその物語。
現代風にアレンジされてるが、それがおじさん構文みたいに色々とズレている。端折り具合も連ドラの1話を見逃したくらい端折る。
あと橋本環奈な…これ一番さむかったかな。ここは無名どころで塩顔な子が良かったな。流星と並ぶと絵面が一気にシラけるんよ。温度と合ってないというか。
題材はすごくいいから、監督はファーストラブの寒竹ゆりで連ドラにすれば良かったかもしれない。世代間ギャップをうまく繋いでくれただろうし、ノスタルジーと昭和の価値観の描き方は彼女の得意なとこだろう。
もしくはコーチ編、出会いと初戦編、最終戦編 の3部作の和製クリードにしても良かったかもしれない。
まぁここまでグチグチ言ったが、高評価なのは何となく理解出来る。わかりやすく誰も悪者もいなし、おじさんが若者に向けた無粋なエールだからかもしれない。
横浜流星、いいっす!
ボクシングをテーマにした映画は、
どうしても既視感のある物語に
なりがちだ。
数々の名作があるから、どこかで
観た場面が出てくるのはしょうがない。
でもこの映画は、長年ボクシングと関わってきた
沢木耕太郎の原作だけあって、一味違う。
佐藤浩市を始めとする、三人のおっさん、
片岡鶴太郎、哀川翔をコーチ役にしたのも、
新味を加えた。
そして何しろ、主演二人、佐藤浩市はもちろんだが、
横浜流星がいい!
どうしようもない現実を、拳ひとつで変えようとする
若者の焦燥、苛立ちが、がんがん伝わってくる
面構えと肉体だ。
対する窪田正孝も、さすがプロのライセンスを取った
だけあって、殴り合う場面はとてもリアル。
片岡鶴太郎の芝居も初めて、いいと思った。
’
ボクシング、やっぱり、映画に向いてるなぁ。
自由になれ! そのために練習しろ。でも立ち向かえ!
広岡が死んだ会長の言葉として「自由になれ、そのために練習しろ、そのために考えろ」というのは、ボクサーは色々な動機に後押しされてそこに至っているが、練習によりある境地に達し、自分の動機となっていた「しがらみ」から自由になれるという事だろう。それは、ボクシングに限らないのかもしれない。
黒木(横浜流星)も中西とのタイトルマッチで、右目をやられ見えなくなっている中でも、タオルなんか投げるなよと言い、今最高に面白い、新しい世界が見えることを言っている。すなわち徹底した練習の中で、単に母を守るという動機を超え、試合の中で新しい境地に至り「自由」になったのだろう。
広岡(佐藤浩一)は、自分の死んだ会長が好まなかった「打たれても向かってゆく、騙されても立ち上がる」、そういうボクシングがロスの日系人を励ましたという自分を拾ってくれたホテルのオーナーの言葉を今さらながら思い出し、会長が言っていた、「頭の良さだけで、打たれず打つ、倒されず倒す」というボクシングではダメだということに気づく。まさにそのスタイルのボクシングが、黒木に敗れた世界まであと一歩だった大塚のボクシングであり、大塚のジムの会長(山口智子)は、「うちは考えるボクシングなの」とスタイルが違うと黒木が所属することを断った。
しかし、大塚を負かした「打たれても向かってゆく、倒されても倒す」という黒木のスタイルに、最後の中西との世界一をかけたタイトルマッチでは、黒木を否定した大塚のジムの会長(山口智子)も黒木を応援するようになっていたのである。その姿勢には、人の心を動かす、励ますものがあったと彼女も黒木の戦いが終わって広岡に言っている。
こうしたスタイルは、生きる姿勢に繋がると感じた。
時に不公平な判定で負ける事だって人生にはある。広岡(佐藤浩一)はそれでボクシングを止めてしまった。でも、そんなことがあったとしても、立ち上がる、打たれても立ち上がる。若き黒木の姿勢に過去の自分ダブらせ、自分の人生を振り返り、そんな姿勢が人の共感を呼ぶオーラになり、人を励ましうる力にもなるのだと広岡も気づき、失明の危機がある黒木と最後まで挑戦した。そして、勝った。
「春に散る」とは、そうして倒れても立ち上がり続けて春を迎え、また次のステージへと再挑戦するリスタートでもある。広岡はもう心臓の心配をする事なく、黒木の「春」を見届けて人生を散らした。黒木も、ボクシングを通じた挑戦で春を迎えながらも、失明し別の人生へ「再再出発」をすることになる。
黒木は、死んで見えなくなっても広岡に「走れ」と発破をかけられながら、一回り成長した彼は、自転車にぶつかりそうになって、自転車に乗っていたオヤジからクレームを言われても、怒らず詫びてやり過ごす。これも、打たれても立ち上がった新たな姿の象徴だ。彼は次の春を目指してゆくのだろう。
☆
この映画は、広岡や彼の仲間も通して、年配の男の生き方を考えさせるという意味でも、私に刺激を与えて、残りの人生をどう生きるかを考えさせてくれた作品で、記憶に残る作品になった。
来年の桜が観れるだろうか‼️❓いや、悔いなく生きれるだろうか‼️❓
この映画はとても原作を🎞省略しています。
だから、この映画を観るためには、行間を鑑賞者が埋める必要があります。
例えば、ガソリンスタンドのエピソード、唐突ですよね、でも、このボクサーの生きる根源です、母親を守るためにボクサーになる、暴力男からボクサーアイテムを返してもらう、それでも、無謀だけど、不器用な象徴でもありますボクシング自体判定は理不尽です。
映画には演技が必要ですが、演技を超えるものがあれば、我々の魂を揺さぶります。
例えば、トムクルーズですが、日本にも稀有ですが例があります、チアダンでは演技の数十倍訓練してました。
この映画で、横浜流星や窪田正孝は演技の数十倍トレーニングしています、それはただ肉体だけでなく精神のぶつかり合いです。
こんな命懸けの映画に出逢えることは🎞凄い幸運です。
ありがとうございました😊😭これからも生きる糧になりました、最後のシーンで、私も走ることにしました、本当に良い映画でした🎬🎟
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