「桜の木下で眠りにつくのは美しい!」春に散る 三輪さんの映画レビュー(感想・評価)
桜の木下で眠りにつくのは美しい!
ラストの佐藤浩一の満足し切った死に顔は美しかった。日本人が好きな桜のあるシュチエーションです。口は半開きで目も半分開いていました。いわゆる半眼半口という悟りを開いた者の顔つきでした。合掌です。タイトルは「春に散る」ですので、観る前はちょっぴり忌避感があったのですが、燃焼し切った男の顔でした。ボクシングというスポーツが、この作品の表の部分ですが、裏の部分は楽しいことや辛いこともある人生を、それぞれの登場人物たちが燃焼し切って生きる豊かな軌跡の物語でした。私が泣けたのは、佐藤浩一の姪に当たる橋本環奈の霊柩車を追いかけるシーンでした。メインではないのになぜか涙がほろり。佐藤浩一は世界チャンピオンとなった過去がありながら挫折しています。その人生の中でやり残したことを、横浜流星に託したのでしょうか。横浜流星の世界チャンピオンをかけた見事な勝負の結末は、観るものを感動させずにはおかないでしょう。横浜流星はその戦いの中で失明?しながらも宇宙に届くような歓喜を味わいます。その歓喜は、佐藤浩一にも間違いなく届いていました。それは二人にとっての人生の大勝利だったのでしょう。与えられた人生のシナリオを完璧にこなすことが、一番の幸せなのだということを教えてくれた傑作と言えるかもしれません。ボクシングというスポーツを借りて、人生の醍醐味を見せつけてくれたような気がします。
追記 横浜流星(極真会)と窪田正孝(ボクシングの映画で活躍)の二人は、どちらもボクシングに取り組んでいましたので、試合風景はまさにガチでした。プロ顔負けで素晴らしかったです。山口智子、片岡鶴太郎、哀川翔の存在感も完璧でした。
共感ありがとうございます。
まともな葬式が出せず、医学部ヘ献体。普通じゃない霊柩車を追う所は、瀬々監督ぽくて良かったです。一人、祭から逃げるように出ていく所も。