「チャンプを目指すな、人生を学べ! 己が戦う意味を知る。」春に散る The silk skyさんの映画レビュー(感想・評価)
チャンプを目指すな、人生を学べ! 己が戦う意味を知る。
すぐ暮れる ヒグラシ騒ぐ 夏のあと
いよいよ 夏休みも終わりっすね。
そんな中「春に散る」噂の作品を観に行きましたよん。
春にチル~ 夏なのに今ナンデ?とは思いましたよ・・・
いや~ マジで良かったですよ。
観る前からこの手の作品は苦手だな~とちょっと思ってたんですが、
流石 瀬々敬久監督ですね。中々なボクシングの打ち合いのシーンと
それぞれの人物像が心に秘めた思いを上手く引き出し表現されてたと思います。
原作:沢木耕太郎氏
監督:瀬々敬久氏
--MC--
・広岡仁一(主人公、元ボクサ、米国帰り):佐藤浩市さん
頭が白髪で、温泉?入浴場面の上半身裸体がお父様の三國 連太郎さん似と思った。年々風格が似てきたかな。味のある役ところ。
桜の木の下で亡くなるのは最初から読めてたけど、それも味かな。
・黒木翔吾(若いボクサ-):横浜流星さん
ここ数作、彼の出演作を観てきたが一番彼らしい感じがしたかな。目線は良いと思う。中西との壮絶な打ち合い場面は良かった。顔もパンパンに腫れた演出もグッド。中々大変な役作りだったと感じました。
・広岡佳菜子(主人公の姪):橋本環奈さん
こんな役の彼女が観たかったベストワンかもです。今まで色んな役でしっくりした感じが無かった気がしますが 今作役は凄く合ってて良いですね。大分訛りも自然な感じで目線もイイ。特に父親の出棺時 追いかけて”ウォ-ッ”て叫ぶところね。環奈さんらしさだったと思いますね。育った家の解体、出棺と。こう言う演出が監督の冥利と感じます。
・大塚俊(黒木のライバル):坂東龍汰さん
今後の活躍が楽しみ
・佐瀬健三(かつてのボクサ仲間1):片岡鶴太郎さん
実際にボクサ-を育てられてたんで、そう言う意味ではこれ以上無いハマり役。
広岡と黒木が目の事で試合出場でもめた時、
”ボクシングってもっと良いもんだろう~” さらりと言うセリフがステキ。
・藤原次郎(かつてのボクサ仲間2):哀川翔さん
何で出てるのか微妙にわからなかったけど。
もう少し役柄に個性ある味が欲しかったかな。暴れん坊のイメ-ジしか残ってない。そこが惜しい。
・中西利男(現チャンプ):窪田正孝さん
最後の壮絶な試合で、前歯が半分折れてのドツキ合いが いい感じ。
実際のチャンプがこんな軽い無作法者とは思えないけど これも演出ね。
・真田令子(ジムのオーナ-):山口智子さん
ビジネスチックに経営してる感が演出だけど ちょっと違和感あった。
もちょっとボクシング選手が この上なく好きである思いが欲しいと感じたな。
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(思った事)
・とにかくボクシングの打ち合いが結構本格的にやってます。しかも長め。通常 カット入れまくりの部分繋ぎの構成にしたのが多いのですが 長く回し撮って繋いでるので試合自体に白熱さを感じました。そこが他作には無い所かと感じます。
顔の傷とか腫れ、常に目線がボクサ-選手になってて 礼儀などシッカリ描かれてて試合が終わった後、心に熱いものを感じますね。そこがとっても心地良いです。
・”パパ頑張って” 妻と子の泣きながらの応援・・・その選手を相手に黒木が一瞬躊躇してしまう。 ここの演出 心にジーンときたわ。広岡が”ボクシング何てやめちまえ” 捨てセリフを吐く。
こういう場面って実際良くあると思うのよ。見かけだけでなく実に良く捉えたシーンと思うわ。なんか 負けたけどあの親子がメッチャ気に成ったよ。
・人生とはそんなに上手くは行かないもの。それを説いている。一つを成就すると次の難関がまたやってくる。それの繰り返しであると感じます。
監督の過去作はどれも登場人物像の人間模様が 最後まで示しておらず、中途留りの印象が多いけど、人の人生は常に変わっていくもの。観念を固定的にせず、最後は少し浮かせ気味の方が 良い味がするのかも知れません。それに気が付いた次第。
・最終試合に 勝つ方が良いか?、負ける方が良いか?
ここは非常に悩む展開の岐路。どちらにしても広岡は死ぬだろうし。
人生と全く同じで、勝って得られるものと、無くしたもの。もし負けても得られたものと やはり無くすものが有ると思う。
大塚は引退した。そして何かをこの先 得るだろうきっと。
中西はどうか。きっと彼も負ける事で得るものが有ったろう。
黒木はどうか。勝っても 目がダメに。もうボクシングは出来ない。
でも、そこから始まる事があると思う。 きっとそれが人生だ!
ご興味のある方は
是非 劇場へどうぞ!!