「"まったく熱くなれないボクシング映画…"な映画」春に散る stoneageさんの映画レビュー(感想・評価)
"まったく熱くなれないボクシング映画…"な映画
胸に来るものが全くありませんでしたね…。
瀬々敬久監督作は『菊とギロチン』でも感じたことですが、登場人物たちは皆個性のあるキャラクターばかりなのに、全然印象に残らないというか、心理描写が甘いなと…そのキャラクターが背負っているものがまるで見えて来ないんです。
この作品であれば、例えば、橋本環奈演じる女性(佐藤浩一演じる男の姪役)ですが…父の看病やらで長年自分の人生をフイにして来た彼女が、父の葬式後、やっと解放された事に対して感情を大声で爆発させます。しかし、全然共感出来ないんですよね…彼女にまつわるエピソードの一つをただ垂れ流して、らしい"台詞"を言わせているだけ…にしか映らなかった。子ども食堂の場面も同様です。不幸な人生を送って来たこの女性は、同じく不幸の中にいるだろう子どもの姉弟に優しい、そんな女性だ…というエピソードを単に垂れ流しているだけなんですよね。各配役の各々のエピソードについても同様です(哀川翔演じる男はとても重要な役柄であったとは思うんですが、最後は何だか取ってつけたような感じになってしまってました。そして、横浜流星演じる主人公はただただやかましいだけでした)。
各エピソードが積もって行った先に最後のあの"格闘"があるはずなのに、残念ながら、そのエピソードの数々がこの作品になんの深みも与えていない。結局、横浜流星と窪田正孝の体の仕上げ具合が素晴らしいな…ぐらいの感想しか出て来ませんでした。
ラスト、桜の木の下で亡くなる佐藤浩一も、それこそ取ってつけたような場面で、そういうシナリオだからそういう場面を撮りましたという様な終わり方で、つまらない映画を観せられたな…という感想しか湧き起こらなかったですね。
瀬々敬久監督の作品は、映像作品としてはちょっと平凡過ぎるのでは?と改めて思いました。