劇場公開日 2023年9月1日

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「小百合愛」こんにちは、母さん masaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5小百合愛

2023年9月22日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

老齢になってからの山田洋次は、家族映画の中により色濃く時事問題を挟むようになったが、今作もリストラ、夫婦の離婚、ホームレス、老人介護という、様々な社会問題を提示している。そして、それら問題に対するリアクションが相変わらず昭和的オーバーアクションなのが気になる。更に社会問題に目を向け過ぎた分、高齢者同士の恋愛という肝心なテーマが少し希薄になってしまったのが残念だ。
しかし、近年の山田映画の中ではなかなかの良作だ。
山田監督世代には永遠のアイドルである小百合愛に満ちており、いつもは違和感を感じてしまう吉永小百合の老人役が、今作では本人の年齢に沿った美しさがぐっと醸し出されている。着物姿で庭先のビルの谷間に打ち上がる花火にはしゃぐ横顔は、かつて「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」での若い歌子(吉永小百合)の姿を彷彿とさせる。
脇を支える俳優陣も良く、衣装のヘボさは気になるものの、孫役の永野芽郁のおばあちゃんとの絡みもなかなか自然な好演だし、特に会社と家庭の問題を抱える人事部長を務める息子を演じる大泉洋の演技は主役の吉永小百合を食う勢いだ。

吉永小百合の台詞、
「死ぬのが怖いわけじゃない。人の世話になる事が辛い」
という言葉は、監督自身を含めた多くの高齢者の声を代弁しているかのようだ。

masa