「MUD GOD」マッドゴッド 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
MUD GOD
人類最後の男によって地下深くの暗黒世界へと派遣された孤高のアサシンは荒廃したその地で地獄を目撃する。
地下世界に広がるディストピアを舞台に、グロテスクなクリーチャーが蠢く中を進む主人公の冒険を描いた、狂気のストップモーションアニメーション。
これだけ聞くと何となく『JUNK HEAD』。
予告を見ると更に『JUNK HEAD』。
本編冒頭で完全に『JUNK HEAD』。
JUNK HEADの二番煎じ感がどうしても否めないが、実際にはこちらの方が製作開始から約30年なので、JUNK HEAD側が真似たのかもしれない。
弱肉強食の残酷な世界、人間という愚かな生き物、と毒気全開の地獄のような悪夢のような光景を延々と見させられる。
そこには忖度もユーモアも小綺麗さも何もない。あるのは汚くて気持ち悪くて、それでいてどこか神聖な雰囲気のある混沌。
確かにとんでもない映画だった。唯一無二の世界観だった。
しかし、意外にもあまり印象には残らないかもしれない。
とにかく壮大な物語。
良くも悪くも今年一番長い84分。私には少し壮大過ぎたように思う。
メッセージを詰め込み過ぎて、何が一番伝えたかったのかはっきりしない。
まさか実写を混ぜてくるとは思わないし、地下世界から最終的に宇宙に行くなんて誰が予想できただろう。
後半があのような難解な感じの展開ならば、シー・イットに喰われるクリープとか、空飛ぶモノリスにいとも簡単に轢き殺されるシットマンとかもっと観たかったような。
申し訳ないけど、私は断然JUNK HEAD派。
比べるのは違うって分かっているけれど、この内容ならどうしても比べたくなる。
ただ、嫌いではない。
完成度はこちらの方が上回るし、容赦ない描写の数々にはものすごく熱意を感じる。
いろんな観点から人におすすめできない作品だけど、私のような尖った映画好きなら観る価値は大いにある。