雨の詩

劇場公開日:

雨の詩

解説

「祖谷物語 おくのひと」の蔦哲一朗監督が、自然エネルギーを活用するオフグリッドハウスで生活を送る主人公たちの姿を通して「脱成長」の生き方を描いた作品。

雨水をろ過して生活用水に変える循環機能をもった「アースシップ」という家に住み、電気も水道もないなかで、自然に配慮し、自給自足の生活を送っているジンとテラ。都会から移住してきたジンは、地元民のテラから狩りなど田舎での暮らし方を教わり、文学や詩を楽しむように自然を理解していく。自分たちで野菜を作り、自然の中で生きることに意義を感じていた2人だったが、次第に関係がギクシャクし始めて……。

アンドレイ・タルコフスキーやタル・ベーラ、ツァイ・ミンリャンらを彷彿させるスローシネマで、雨や光、音の表現にこだわったモノクロの映像で物語を紡いでいく。

2021年製作/45分/G/日本
配給:ニコニコフィルム
劇場公開日:2022年11月12日

スタッフ・キャスト

監督
プロデューサー
増渕愛子
撮影監督
青木穣
撮影助手
石井綾乃
村上拓也
録音技師
佐々井宏太
サウンドデザイン
佐々井宏太
助監督
久保寺晃一
制作進行
辻秋之
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フォトギャラリー

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映画レビュー

3.5シンプルイズベスト?

2022年11月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

「あなたの人生をシンプルにすると、宇宙の法則がよりシンプルになります。孤独は孤独ではなくなり、貧乏は貧乏ではなくなります。そして弱さが弱さではなくなるのです。」(ヘンリー・デイビッド・ソロー)

19世紀の奴隷解放論者であったアメリカの詩人ソローは、実際この映画の主人公のように、湖畔に家をたて、自給自足の生活を営み、数年の間一人、本を愛する生活を営んでいたそうです。そしてソローの「森の生活」はタルコフスキーの愛読書でもあったわけですが、この映画にはそんなタルコフスキー映画の特徴である、「雨、火、時間を刻印するためのスローな移動撮影」などが頻出します。

ガラス窓に打ち付ける雨音、二人が叫びながら泥だらけになって鰻や魚をとろうとする湿原や清流に降り注ぐ驟雨の光、そして虫の鳴き声、焚き火の揺らめく火を見つめながら朗読される詩の言葉。
この作品の16ミリ白黒フィルムに焼き付けられた、そんな原初の根源的な体験に身を委ねると、不思議な幸福感に包まれます。

考えてみれば我々の遺伝子に組み込まれている狩猟の歴史は180万年、農耕の歴史は2000年、産業革命の歴史は200年、情報革命の歴史は数十年です。ふとたちどまり我々を形作っている根っこの部分に耳を傾けて、今の生活を振り返ってみるのも面白いかもしれません。

短くある意味あっけ無い印象を受けられる方も多いかもしれませんが、ふと立ち止まり、遠い来し方に思いを馳せながら、今を振り返ってみるには良い作品だと思いました。

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pen

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