次元を超えるのレビュー・感想・評価
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サイキック密教×「アルタード・ステーツ」的な奇作
豊田利晃監督56歳、波乱に満ちた経歴の持ち主だ。十代で将棋棋士を志すも断念し、二十代から映画業界入り。30歳のとき「ポルノスター」で監督デビューするが、7年後に覚醒剤所持で有罪、執行猶予。2018年に「泣き虫しょったんの奇跡」が公開されるも、翌年には銃砲刀剣類所持等取締法違反(拳銃の所持)で逮捕され、不起訴処分。以降は「「狼蘇山(おおかみよみがえりやま)シリーズ」と呼ぶ短編群を自主制作で発表してきた。この最新作「次元を超える」は同シリーズの集大成だという。
サイキックパワーを操る密教僧たち(千原ジュニア、渋川清彦)のバトルがあったり、修行者(窪塚洋介)が精神的な高みを求めて宇宙空間を旅したりと、スピリチュアルな題材が好きな人に向きそう。60年代後半から70年代のヒッピー文化の影響を受けた「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」に似た感じもある。逆に言えば、精神世界や哲学に興味がないと、なにやら荒唐無稽な法螺話に思えるかも。
豊田監督の波乱万丈な経歴を思い起こすなら、ある種の開き直りさえ感じさせる自由奔放な奇作と言えるだろう。警察沙汰を二度起こした危うさはあれど、才能に惚れ込む俳優も多いのか、先述の3人のほかに松田龍平、芋生悠、東出昌大、板尾創路、祷キララとキャストもなかなかに豪華。万人受けしないのは確かだが、こんな尖った映画が劇場公開されるのも豊かさなのだろうと思う。
世界の果てを追求した怪作
人はどこから来てどこへ行くのか?というテーマをスピリチュアルな映像と独特のユーモアで綴った怪作。
時空を超越した世界観で繰り広げられる死生のドラマだが、如何せんスケールのわりに映像やドラマがチープで壮大さは余り感じられない。しかし、このチープさが一周回って味わい深かったりするのも事実で、個人的には中々楽しく観ることが出来た。
それにしても、銀河の遥か彼方や摩訶不思議な万華鏡の空間、呪術による幻覚といったシュールで超然としたシーンが断続的に登場するので取っつきにくい作品であることは間違いない。
また、説明不足で意味不明な個所が多々あるため、いわゆる難解な映画でもある。
例えば、どうして阿闍梨は小指に固執するのか?トイレの便座を全裸で温めていた女性が意味する所は?なぜ法螺貝を吹くことで次元の扉が開くのか?極彩色の惑星ケルマンやミスター・ケルマンとは何だったのか?
おそらく夫々に何かしら意味はあるのだろう。しかし、これらを一々理屈を考えながら観るとかなりフラストレーションが溜まる映画である。したがって、軽く受け流すくらいの感じで観るのが丁度いいのかもしれない。それでもドラマの核となる部分は、ある程度理解できるようになっている。
実際、物語の主軸は意外にシンプルで、いわゆる失踪者を捜索する探偵物のようなプロットになっている。
現世から解き放たれようと次元の果てを目指して失踪した狼介。そんな狼介を死して尚、引き戻そうとする恋人・野々花。死んだ野々花から狼介の捜索を依頼される殺し屋・風。そして、次元の果ての謎を解き明かそうと、狼介と風を”けしかける”カルトの教祖・阿闍梨。夫々の思惑が現実と幻想、時空を超えて交錯する。
まるでキツネにつままれたようなラストが面白い。観た人によって様々に解釈できるエンディングで、個人的には阿闍梨が言うように風は狼介の呪術にまんまとハマった…と解釈した。
製作、監督、脚本は「PORNOSTAR ポルノスター」、「青い春」、「ナイン・ソウルズ」、「空中庭園」の豊田利晃。自分はこの辺りで作品を観るのが止まってしまったが、その後、氏はプライベートで色々な問題を起こして暫く活動休止の状態に追い込まれてしまった。ようやく最近になってドキュメンタリーや自主製作という形で短編を発表し、今回の長編製作に至ったということである。ちなみに、その短編はシリーズ物となっていて本作はその集大成ということらしい。もしかしたら、そちらを観れば本作の理解は更に深まるのかもしれない。
最も印象に残ったシーンは、狼介が過去を振り返りながら雨の中を歩く場面である。「PORNOSTAR ポルノスター」のナイフの雨、「空中庭園」の血の雨等、やはり雨のシーンを印象深く撮るのが豊田監督は上手い。
キャスト陣は、いわゆる豊田組の常連で固められている。狼介を演じた窪塚洋介、風を演じた松田龍平、阿闍梨を演じた千原ジュニア、鉄平を演じた渋川清彦等、アクの強い俳優陣が夫々に存在感を見せている。他に、マメ山田、板尾創路も常連組と言えるだろう。また、東出昌大が信者の一人で登場するが、ぱっと見て彼と分からない風貌で後になって判明した次第である。
エンディングはThe Birthdayの「抱きしめたい」。フロントマンの故・チバユウスケ繋がりで言えば、ミッシェル・ガン・エレファントを全面的にフィーチャーした「青い春」が想起された。
次元を超えた体験…
存在感ある役者陣が出演していることと「人はどこから来て、どこへ行くのか」というキャッチコピーに惹かれ鑑賞。千原ジュニアによるクレイジーな宗教家のインパクトまでは良かったが、、、
退屈、、、早く終わらないかな、、、序盤でそんな風に感じる映画はたま〜にあるが、おおむね中盤以降はストーリーの面白さや共感ポイント、心に響くメッセージ等に引き込まれ、最後は「やっぱり観てよかった〜」となる、、、のだが、、、
本作に関してはラストシーンを見終わった瞬間、ため息と「うそでしょ…」という心の声しか出てこなかった、、、。
観る人によっては面白い作品なんだろうが、、、私にとっては、観たことを後悔する作品に初めて出会うという、まさに次元を超えた映画体験でした。
Break On Through To the Other Side!
何をさっきから言っとるんだね君は
2025年劇場鑑賞295本目。
エンドロール後一瞬映像有り。別に何か話が進むわけではないので観なきゃ観ないでもいいくらい。
最初にクレジット的には主役のはずの窪塚洋介が映ったきり、後は松田龍平と千原ジュニアが中心で動きます。こういう教祖って総じてインチキでトリックを使うのが相場なのですが、この阿闍梨、きっちり呪術を使ってきます。
バックボーンが全く分からず、能力者と言われた割には、多分言われた時点では全く普通の人間(カタギではないですが)の松田龍平が、徐々に能力に目覚めていくので最後は超能力呪術大戦に突入するかと思いきやそうでもなかったです。
最初にタイトルが出ず、真ん中でトランスレイト ディメンジョン(うろ覚え)と出たのですが、そこから15分くらいしょぼいCGの宇宙と、次元を超えた先がセリフ無しで描かれるので、あれこれ製作総指揮大川隆法?と思いましたが違いました。
こんな所で終わっちゃってどうすんだ、ってところで終わってしまいました。
ただ、千原ジュニアの怪演は見どころです。
う~ん、よく分からない映画でしたね。。
う~ん、よく分からない映画でしたね。。
映画館で予告を何度も見ていたので気になっていた作品。
次元を越えるというセリフが劇中に何度も出てくるが、何なのか、いくら考えても分からなかった。。
千原ジュニア、松田龍平、窪塚洋介、この3人の存在感というかキャラだけで成り立っていた感じ。
ゴーという轟音が各所で使われていて、体に響く音量なので映画館ならではの鑑賞体験。
この体感があったので耐えられたけど、家で見てたらかなり辛かったと思う。
宇宙とか次元を超えたシーンなどの観念的な映像がたくさん出てくるけど、これがイマイチ。
なんか映像がチャチかった。
この映像がもっと雰囲気があったら印象はだいぶ変わったと思う。
今までの作品の総決算的な映画との記述もあったので、過去作を見ていれば違ったのかもしれないが。。
さすがにあの内容ではまったく理解できないですよ。
キャストのおかげもあって雰囲気は良かったのだから残念。
もう少し脚本を練って分かりやすくしてほしかったですね。
待望の映画館公開
ストーリーを追うよりは、窪塚洋介、松田龍平、千原ジュニアといった俳優の存在感、音や映像を感じる映画。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の伝説のカルト映画『エル・トポ』と『ホーリー・マウンテン』の風味をちょっと感じた。
近年の「狼蘇山シリーズ」の集大成となる長編とのこと。「狼煙が呼ぶ」と「破壊の日」はどうにか見ることができていたけど、その他の短編は観れてない。(3つの短編を再編集した作品が隣のスクリーンで上映中だったことに帰ってきてから気づいた)
松田龍平演じる殺し屋・新野は、豊田監督の2012年の映画「I'M FLASH!」と同じ役名。怪しい阿闍梨役の千原ジュニアがハマっている。千原ジュニアは豊田監督の『ポルノスター』(1998年)で主演しているから、監督とはもう長い付き合いだ。窪塚洋介もすごいよ、やっぱり。窪塚は、2018年の『プラネティスト』に参加してた。
なんじゃこりゃ........
次元を超える(解脱するとか悟りを開くに近い?)ことを目指す修行者が怪しい宗教家の所に行って行方不明に。何故か修行者の恋人が暗殺者に捜索と宗教家の暗殺を依頼する。修行者と宗教家と暗殺者の対立、呪詛による戦い........
50年前のSFを思わせるような今風とは言えないストーリーでちょっとストーリーには乗れない.........なのだが、演技とカメラと音響が巧みなので結構楽しく見れちゃうという.......
なんの話だったのかはよくわからないけれど
渋川さんと松田さんは『破壊の日』と同じ役名だけど、窪塚さんはちがう役名で、『破壊の日』と地続きの話なのか、それこそ別次元の話なのかわからなくてちょっと混乱した。
てゆうか『次元を超える』ってタイトルだけれども、まさか比喩ではなくまっすぐに次元を超える話だとは思わなかった。そして、ダサくて長いタイトルバックの締めに登場する、次元を超える?指型ロケットめちゃくちゃおもしろい。
じっくりと役者さんの顔がアップになることが多くて、窪塚さんはきれいな顔だなあ、松田さんは本当に小さな子どもみたいなきょとんとした顔するなあ、ジュニアさんはやっぱりせいじさんに似ているなあと思ったりした(東出さんはただただ不憫だった)。
エンディングテーマがThe Birthdayで、チバさんの歌声がきこえたときにいちばん感動しました。
その先へ
緊張(残虐)と緩和(笑い)の妙は評価出来るが…
阿闍梨(千原ジュニア)と呼ばれる怪しげな新興宗教系の修験者を中心に展開するオカルト映画でした。
阿闍梨は信者たちに「小指を落とせば迷いが消える」と説き、序盤では東出昌大演じるヤスが大ナタで小指を切り落とされるという衝撃的なシーンが登場します。残虐描写が続くのかと思いきや、物語は題名の通り“異次元”に赴き、新たな何かを発見することを目的とした展開へと移っていきます。
そこへ、阿闍梨に恋人を殺されたという女性・野々花(芋生悠)が現れ、殺し屋の新野(松田龍平)に阿闍梨の暗殺を依頼。ところがその直後、駅のホームから身を投げて自殺してしまいます。突如としてグロテスクな場面が差し込まれるなど、観る者を油断させない演出が随所に見られ、このあたりは中々面白い構成でした。
一方、野々花の恋人である山中狼介(窪塚洋介)は、異次元──“この世の果て”──で彷徨う存在として登場します。ただ、その異次元の舞台が合わせ鏡を組み合わせた部屋として描かれており、かなりチープな印象を受けました。作品内で最強を誇る阿闍梨の探求対象としてはスケール感に乏しく、ここで作品全体の世界観が頭打ちになってしまった感は否めません。
とはいえ、最大の見どころは何といっても千原ジュニア演じる阿闍梨の存在でした。
怪しげでありながらもニヒリズムに満ちた語り口はどこか魅力に満ちていて、強烈なカリスマ性を放っています。妖術を操る姿は安倍晴明を彷彿とさせ、信者を惑わす手口はまさに“悪しき新興宗教”そのもの。同じく怪しい修験者・鉄平(渋川清彦)との対決シーンも、妙に滑稽で笑わずにはいられませんでした。笑いの要素としては、小指を失ったヤスが、もみ殻の桶から起き上がるシーンもかなり面白いものでした。
緊張と緩和を巧みに組み合わせる構成は評価すべき点だと感じましたが、惜しむらくは、魅力的なキャラクターや展開の妙を活かすだけの“異世界”描写が追いつかなかったこと。そこさえ補えていれば、より深みのある異端的オカルト作品として完成していたかも知れないと感じたところでした。
そんな訳で、本作の評価は★3.4とします。
理解不能だが、引き込まれるものは感じた
千原ジュニアよかった
気になる方は一人で観てね
■ 作品情報
豊田利晃監督による「狼蘇山シリーズ」の集大成。第54回ロッテルダム国際映画祭出品作品。監督・脚本: 豊田利晃。主要キャスト: 窪塚洋介、松田龍平、千原ジュニア、芋生悠、渋川清彦、東出昌大、板尾創路、祷キララ、窪塚愛流(声の出演)、飯田団紅、マメ山田。
■ ストーリー
修行者・山中狼介が、宗教家・阿闍梨の家を訪れたのちに行方不明となってしまう。山中の恋人・野々花から捜索依頼を受けた暗殺者・新野風は、法螺貝に導かれるように狼蘇山で邂逅を果たす。狼介と新野は、鏡の洞窟で対峙し、時間も空間も次元も超えていく。(ごめんなさい、自分でも何を書いているのわかりません。)
■ 感想
冒頭から漂うオカルト的な雰囲気には、正直引き込まれるものがあります。これは期待できるかもしれないと心躍らせ、SFやサスペンスの要素も垣間見え、いったいこの物語がどこへ向かうのか、ワクワクしながらスクリーンを見つめていました。
しかし、期待は裏切られ、物語は完全に理解不能なカオスへと突入します。宗教的、哲学的、あるいは精神的な何かを表現しようとしているのかもしれませんが、それが何であるのか、全く掴むことができません。意味ありげに続く無駄に長いカットの連続は、意図的に物語の進行を妨げているとしか思えず、その遅すぎるテンポは、集中力を容赦なく削いでいきます。おかげで、わりと早い段階から理解が追いつかず、方向性を見失い、覚醒を保てませんでした。
今思えば、この作品自体が観客に一種の呪術をかけているのではないかとすら感じるほどで、自分はまんまとその術中にはまったようです。もはや他の方のレビューを読んで、深く考えを巡らせて理解を深めようという気力すら湧きません。
鑑賞後、後席から聞こえてきたご婦人方の「なんだかごめんね」「いいよ、のんびりできたから」という気まずい会話が、この映画のすべてを物語っているように思えてなりません。基本「ぼっち鑑賞」の自分は、誰にも迷惑をかけることなく、この異次元の映像体験を完遂できました。それにしても、まあまあの客入りでしたが、いったい何人の人が次元を超えられたのでしょう。自分は小指を失いたくないので、一生超えられなくていいです。
なんか次元を超えた気がします。
中年のナルシシズム。
全24件中、1~20件目を表示














