「緊張(残虐)と緩和(笑い)の妙は評価出来るが…」次元を超える 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
緊張(残虐)と緩和(笑い)の妙は評価出来るが…
阿闍梨(千原ジュニア)と呼ばれる怪しげな新興宗教系の修験者を中心に展開するオカルト映画でした。
阿闍梨は信者たちに「小指を落とせば迷いが消える」と説き、序盤では東出昌大演じるヤスが大ナタで小指を切り落とされるという衝撃的なシーンが登場します。残虐描写が続くのかと思いきや、物語は題名の通り“異次元”に赴き、新たな何かを発見することを目的とした展開へと移っていきます。
そこへ、阿闍梨に恋人を殺されたという女性・野々花(芋生悠)が現れ、殺し屋の新野(松田龍平)に阿闍梨の暗殺を依頼。ところがその直後、駅のホームから身を投げて自殺してしまいます。突如としてグロテスクな場面が差し込まれるなど、観る者を油断させない演出が随所に見られ、このあたりは中々面白い構成でした。
一方、野々花の恋人である山中狼介(窪塚洋介)は、異次元──“この世の果て”──で彷徨う存在として登場します。ただ、その異次元の舞台が合わせ鏡を組み合わせた部屋として描かれており、かなりチープな印象を受けました。作品内で最強を誇る阿闍梨の探求対象としてはスケール感に乏しく、ここで作品全体の世界観が頭打ちになってしまった感は否めません。
とはいえ、最大の見どころは何といっても千原ジュニア演じる阿闍梨の存在でした。
怪しげでありながらもニヒリズムに満ちた語り口はどこか魅力に満ちていて、強烈なカリスマ性を放っています。妖術を操る姿は安倍晴明を彷彿とさせ、信者を惑わす手口はまさに“悪しき新興宗教”そのもの。同じく怪しい修験者・鉄平(渋川清彦)との対決シーンも、妙に滑稽で笑わずにはいられませんでした。笑いの要素としては、小指を失ったヤスが、もみ殻の桶から起き上がるシーンもかなり面白いものでした。
緊張と緩和を巧みに組み合わせる構成は評価すべき点だと感じましたが、惜しむらくは、魅力的なキャラクターや展開の妙を活かすだけの“異世界”描写が追いつかなかったこと。そこさえ補えていれば、より深みのある異端的オカルト作品として完成していたかも知れないと感じたところでした。
そんな訳で、本作の評価は★3.4とします。
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