「自分の物語と他人の物語の衝突は、精神的な作用の中で別次元を作り出すの、かも」次元を超える Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の物語と他人の物語の衝突は、精神的な作用の中で別次元を作り出すの、かも
2025.10.21 MOVIX京都 Dolby Cinema
2025年の日本映画(96分、PG12)
ある行方不明者を追う謎の男と、その秘密を知る宗教家との邂逅を描いたSFミステリー映画
監督&脚本は豊田利晃
物語の舞台は、日本のとある山奥にある「狼蘇山」
そこにある「修験」では、宗教家の阿闍梨(千原ジュニア)を信奉する信者たちが集まっていた
護摩壇にて何かの儀式を行なっている阿闍梨は、一通りの儀式を終えた後に、信者たちにお茶を立てて寛ぎを与えることになった
盲目的な信者ヤス(東出昌大)が阿闍梨に悩みを打ち明けると、彼は「自分の物語を作り直さなあかんよ」とアドバイスをする
さらに「小指を詰めて宇宙に飛ばせ」と言い、彼に指を切断することを強いていく
それを見ていた阿闍梨に懐疑的な鉄平(渋川清彦)は席を立ち、廊下に並べられたホルマリン漬けの小指に戦いた
物語は、阿闍梨の元を訪れた狼介(窪塚洋介)が失踪し、彼を行方を追う恋人の野々花(芋生悠)が殺し屋の新野(松田龍平)に阿闍梨殺しを依頼していたことが描かれていく
新野は野々花とともに阿闍梨の元を訪れ、彼自身の能力にふれていく
そして、彼の能力が新野の能力を開花させることに繋がり、阿闍梨の言う「その先」と言うものに近づいていくのである
映画は、かなり難解を装っている内容だが、至ってシンプルな物語となっている
能力を開花させたものは人を操ることができるのだが、それと同時に幻覚を見せることができる
物理的な波動を繰り出すこともあるのだが、そのほとんどは脳内に作用させていると思う
阿闍梨は「自分の物語を作り直せ」と言うのだが、彼自身は他者に対して「自分の物語を押し付けている側」であり、それに屈しなかったのが新野であると言える
そうした戦いの末に何が残ったのかはわからないが、首謀者としての狼介は目的を果たしたし、その手伝いをしていた阿闍梨は使命を終えたように描かれていた
何を描いているのかよくわからないのだが、自分の人生を作れていない人は、誰かの仕掛けた物語に組み込まれていることになるということだろう
狼介が今の道を歩んでいるのも、5年前に自殺した野々花が影響していて、それによって科学的な修行と言うものに従事することになったのかもしれない
指は行くべき方向を指し示すもので、自分の中にだけ残った人々の行き着く先は何なのか
ある意味において、この道は野々花の指し示している道のように思え、そうだとしたら「自分で作り直したと思っている物語」と言うものも、どこかで作られた誰かの物語の一部ということになるのかな、と思った
いずれにせよ、難解かどうかは何とも言えない部分があり、法螺貝によって「その先」に向かうことはできるように思える
その先には「立ち位置が変わった野々花と狼介」がいて、最初は難しい話をしていたのが狼介だったが、後半のパートではその立場が逆になっていた
これは狼介自身が自分の物語を作り直したと思っていたが、実際には野々花が作り直した物語に閉じ込められていることを意味しているのだと思う
そう言った意味において、死者の呪縛というものは最強の呪術と言えるのかもしれません
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