西部戦線異状なしのレビュー・感想・評価
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戦争の恐ろしさ、人間が抗えない見えない敵との戦い。
第一次世界大戦のドイツ側からを描いた作品。
死んだ兵士の服や靴を集めるところから、それらを洗ってつぎ当てして縫い直し、再度使用する場面が淡々とした作業工程になっていて、それらは新兵に配られる。死んだ兵士のものとも知らず。
ここが戦争の恐ろしさを感じる一場面になっていた。
死んでは補充され、死んでは補充される。
戦争とはなんとも残忍であることを理解させられる。
この作品としては、なんとも言えない無力感を感じる。誰も戦争などしたくはないのにさせられる。敵を殺したいと思わないのに、殺さざるを得ない。敵は目の前にいるというよりも、戦争そのもの、人間そのものかもしれない。
主人公も、敵兵士を殺しておいて、慌てて助けようとする矛盾した行為。人間がおかしくなっていきそうである。
休戦協定が締結されてからも、その効力が発揮されるまで戦いは続く。むしろ、締結されてから発揮されるまでになんとか最後の一撃を与えるべく死んでいった人々は多かったのだろう。
韓国映画の高地戦も似たような話だったが、酷い話ではある。
何のための戦い、そして死
国のために戦うことは名誉なことであると焚き付けられ、現実を何も知らされないまま意気揚々と戦場へ送り込まれた兵士たち。
そしてこんなはずではなかったと後悔しながら命を落とす。
冒頭の兵士が代替え可能な消耗品であることを示すようなシーンが辛い。
戦場に横たわる無数の死体。身に付けているものを剥ぎ取られ、人間であることを忘れられたかのように雑に処分される。
そして彼らの軍服は補修され、また次の兵士へと受け継がれていく。
どこまで行っても終わらない泥沼の地獄。
兵士たちはもはや生き抜くことだけを目的に生きるようになる。
しかしほとんどの兵士がいずれ死を迎えることになる。
それが早いか遅いかで、そこには名誉も尊厳もありはしない。
ほとんどのシーンが何も知らない兵士の視点で描かれるが、この戦争の行方を決められる軍の上層部の人間の傲慢さに怒りを覚えるシーンも多い。
彼らは戦場で兵士が倒れているにも関わらず、贅沢な食事をし、己の尊厳のために戦争を長引かせている。
終わらない戦争に兵士たちの目からは次第に輝きが失くなっていく。
休戦協定が結ばれたにも関わらず、自分では手を汚さない軍の上官は、またしても名誉を振りかざしながら兵士たちに突撃を命じる。
とにかく最後まで虚しさを感じさせる作品だ。
戦っている相手も同じ血の通った人間だ。
ただ立場が違うだけで兵士同士に個人的な恨みがあるはずがない。
そしてやはりこの映画は何のために兵士たちは死ななければならなかったのかを考えさせられる。
無意味に思える死が多すぎる。
絶望の中にも一筋の光は見られるが、それでもこの映画に救いはまったくない。
どうしても1930年制作のアメリカ映画と比較してしまうが、より戦争の虚しさを感じさせるのはこちらの方か。
ただ主人公が蝶に手を伸ばそうとして敵兵に撃たれる1930年版のラストシーンもやはり忘れられない。
凄惨な戦場にて
第77回英国アカデミー賞作品賞受賞作。
Netflixで鑑賞(Netflixオリジナル映画・吹替)
原作は未読、1930年版は鑑賞済みです。
ドイツ文学である原作が、ドイツ語で改めて映画化されたことに意義を感じました。初めてドイツ映画を観ましたが(ネットフリックスの資金力のお陰かは分からないけれど)、ハリウッド映画と遜色無い迫力と迫真の演出に心奪われました。
愛国教育によって自ら兵士に志願した若者たちが戦場の過酷な現実を知り、心も体も蝕まれていく…。旧作でも描かれていた要素はそのままに、原作にも旧作にも無い停戦協定のシーンが挿入されたことで、戦場の兵士と戦場から遠く離れた場所にいるお偉いさんとの待遇の違いが明確に描写されていて、戦場の過酷さがより際立つ構成になっているのが巧みでした。
旧作でも印象的だった、砲弾穴で鉢合わせして刺し殺した敵兵もまた人間であったと主人公が衝撃を受けるシーンは、より生々しくなっていて、胸が痛みました。
さらに驚いたのは、結末が大きく変わっていたこと。旧作のラストシーンも悲劇的でしたが、変更したことで一層戦争の悲惨さが浮き彫りになった様に感じました。
戦争が齎す悲劇を冷徹に描き、反戦のメッセージを突きつける本作は、戦争が起きている今こそ観るべき作品でした。
すごかった
戦場の過酷さが容赦なくえぐい。しかしもっと興奮してもよさそうなものなのに、夜中子どもを寝かせて小さいボリュームで見ていたせいかあまり興奮しない。自分が青年でもなく、つらい思いをしているのがうちの子よりずっと大きいからか、感情移入ができなかったせいか。
ずっと生き残っていたのに、農家の子どもにお腹を刺されて死ぬのはつらい。機関銃を乱射している戦線に突っ込んで行っても弾が当たる人と当たらない人がいる。ガチャとしか言いようがない。戦争なんてうっかり志願するものじゃないとつくづく思う。ウクライナにも行かない方がいい。
語るべき真実がある、しかし口を閉ざすのだ
原題
Im Westen nichts Neues
感想
エーリヒ・マリア・レマルクによる1929年の同名小説を原作としたエピック・反戦映画。
ものすごく重たい作品でした、観終わって胸を締め付けられる思いです。
ただ壮大なスケール、圧巻の映像美には脱帽しました。
さすがアカデミー賞に色々とノミネートされた理由がわかります。
停戦まで残り15分で突撃って…。
最後のフリードリヒ将軍の突撃命令はイラっとしましたね、自分は現地で戦わないくせに。そして背いたら殺すってどうしようもないです。兵士からすると停戦で終わると思っていたのにですね…
塹壕戦はしたくないです
友人のドックタグは取りたくないです
新兵の仕事はドックタグ集め
僅か数百メートルの陣地を得るため300万人以上の兵士が死亡
第一次世界大戦では約1700万人が命を落とした
※西部戦線異常なし
『西部戦線1918』については、レビューを書いたのは、長らく僕一人
『男に権力を与えれば、野獣になる』が
『人に力を与えれば、獣になる』
となっていた。かなり意味が違うと思う。この映画の主旨は『男に‥』だと思う。
さて『西部戦線異状なし』系の映画は3種類見たが、この映画は『西部戦線一九一八年』からの着想が多かったと感じた。勿論、元祖からの着想も多数あった。従って、オリジナリティとしての緊張感が全く無い。
90年前の映画のリメイクを見る価値があるのかと感じる位のレベル。だから、本家を見てからのレビューを見る方々には望む。『西部戦線1918』については、レビューを書いたのは、長らく僕一人と言うのが情けなくなる。
また、あれから、100年以上経って、全く同じ事を、地を変えてやっていて、その国に武器を供与しようとドイツはしている。原発に誤って誤弾が、無いことを祈っている。
第一次世界大戦で、数メートルの領地獲得で1700万人死んでいると、反戦を訴えているが、噛み砕いて解釈すると、だから、第二次世界大戦では、ナチスドイツは領土拡大をして、ロシア人を殺戮したのだ。と言っている様に聞こえる。それは事実だが、そのドイツが武器供与するのは、歴史を学習していない証拠だし、こう言った映画は作れないと思う。アメリカに負けた言い訳をしている様に見える。
そもそも、第一次世界大戦と第二次世界大戦は全く違う戦争だと考えるべきだ。ソレは、第二次世界大戦の争いは侵略戦争が主体だと言う事だ。
そして、今の戦争もそれと全く同じ。だから、この映画を見て、反戦を訴えられても、感動一つしない。
追記
そもそも、この映画のストーリーは破綻している。気が付くと思うが、僕は最初気づかなかった。でも、見終わって、許せなくなった。この映画は戦争映画ではない。ファンタジー映画になると思う。
追記2 原作がそうなんだ。原作読んでいないから、驚いた。原作読んで見ようと思うが、この映画の評価は変わらず、
疲れた
一気に観た…疲れた〜。
100年以上前、第一次世界大戦。
フランスに侵攻したドイツ軍の最前線。
わずか数メートル進むために1700万人も亡くなったらしい。
親に嘘をついてまで入隊したパウル。
いきなり仲間達と親しくなっていたが、その辺りは割とあっさり。
ほとんど戦場のシーンだったので、息つく暇があまりなかったし、最後の最後までハラハラ。
結局は前線で戦う兵士達は捨て駒なんだよね…戦争の浅はかさ、人間はいつになったらわかるのでしょうか。
全戦異状あり
戦争をドイツの視点から描く。
と言っても第二次大戦ではなく、第一次大戦。あの独裁者は生まれていたが、まだ政治の世界に入る前。
第3回アカデミー賞で作品賞を受賞し、名高い反戦映画の名作を、原作と同じ本国ドイツでリメイク。
尚、原作未読。昔の映画も未見。初めて“西部戦線”へ。
親の反対を押し切り、書類を偽造してまで、青年パウルは戦争へ。
国や周りが闘っているのに、自分だけじっとしていられない。
軍上層部も2週間で敵は墜ちると豪語。
意気高揚と戦場へ。
そんな浅はかで青臭い闘志が脆くも砕かれるのは目新しいものではない。
が、いつ見ても、どんな作品見ても、突き付けられる。
戦争という地獄を…。
膠着状態続く。
塹壕に身を隠し、響き渡る敵の銃声、砲声。
爆発や死がすぐ隣に。
仲間も次々命を落としていく。
赴いて初めて知った。戦争の現実を。
そこには掲げた理想も正義も秩序も理性も微塵も無い。
顔身体中泥や血にまみれ、過酷と恐怖に迫られ、今にも気が狂い出しそう。
先に気が狂った方がまだマシかもしれない。
こんな状況下でずっと恐怖でいたら、生きている心地がしない。生き地獄。
2週間なんてとうに過ぎ、2年経っても終わりが見えず…。
そんな中でも、気を紛らわす事が出来るのは、仲間との交流。
他愛ない話をしたり、食糧にありつけたり…。
前線で食糧の配布なんてない。現地…つまり、敵陣にて調達。銃をぶっ放してくる農夫から逃げおおせ、カモをゲット。
盗みは罪だけど、こんな地獄で生きていくには仕方ない。
が、終盤、同じシチュエーションで…。
仲間の死は辛い。それを目の当たりにするのは特に。
フォークで自分の首を刺し、死を選ぶ。負傷した身体。いつ終わるか分からないこの地獄。こんな世界で生きるよりかは…。
敵兵と遭遇。取っ組み合いになり、短剣で相手を刺す。
息も絶え絶え、苦しそうにもがき苦しむ“人間”を見て、正気を取り戻す。
とんでもない事をしてしまった…。
恐怖と後悔。幾ら戦場での任務とは言え、この手で、人を殺してしまった…。
戦場に転がる敵味方の無惨な遺体…。
毒ガスによって重なり合うように死亡…。
血と唸り声と死が溢れる野戦病院…。
戦争は、全てを狂わす。
戦争を続けたがるのは軍上層部。
が、一部は戦争終結に奔走。
会合での条件はあまりにも不条理なもの。
多くの未来の命を犠牲にし、得たものは、何も無い…。
停戦日時が決められ、後僅か。
やっと戦争が終わる。ここまで生き延びたんだ。死んでたまるか。
戦争で命を落とすのは惨劇。
戦争以外で命を落とすのは悲劇。
食糧調達で再び農家に忍び込む。が、見つかり…。しかも、撃ったのは…。
自業自得とは言え、あまりにもやるせない。
停戦間近で、あちこちで戦闘も無くなり、静かになり…。
そんな時、耳を疑う命令。英雄として帰還したくないか?
敵陣へ奇襲。
後僅かで停戦。
死にたくない。絶対に。
が、戦争の渦中には、いつだって死神がさ迷う…。
軍上層部は前線の事など何も知らない。結果や報告を聞くだけ。
停戦の時刻。戦争が終わった。
後ほんの少しだけ、早かったら…。
周囲に気を付けていれば…。
運が良かったら…。
運はここまで生き延びた事に使い果たしたのかもしれない。
戦争は悲劇でしかない。
戦場の迫力、臨場感は圧巻。
Netflix配信なのが惜しい。劇場大スクリーンで観たかった。
そして恐怖しただろう。考えさせられただろう。
この第一次大戦以前も以後も、現在も戦争は続く。
不条理な理由で。
多くが犠牲に。
人間と戦争は切り離す事は出来ないのか…?
EDクレジットによると、第一次大戦の犠牲者は1700万人以上。
最後に表示されたタイトルが皮肉だ。
西部戦線異状なし。
何処に異状など無い…?
いつだって、全ての戦争は異状ありだ。
あまり印象に残らなかった!!
2022年にWWIIの映画が作られる(しかもドイツ軍)のは貴重だと思いますが、内容はごく普通だと感じました。兵士たちの生死や上層部の和平交渉も盛り込んでいますが、薄く長い配信映画という印象でした。終盤は日本軍でいう、厚木航空隊のような展開になって少し良かったです。
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