「『1917~』の塹壕戦をドイツ側から描く」西部戦線異状なし 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
『1917~』の塹壕戦をドイツ側から描く
サム・メンデスの『1917 命をかけた伝令』と合わせ鏡になり、ドイツ軍側から見た第1次大戦の西部戦線に於ける塹壕戦の壮絶を描いている。純粋に愛国心から年齢を偽ってまで連合軍との戦いに参加したドイツ人青年が見る、誇りや高揚感とは真逆の、尊い命が紙切れにように使い捨てられていくプロセスは、血生臭いシーンをより血生臭く感じさせる視覚効果、恐怖感を煽るような音楽、そして、砲弾や銃弾が炸裂する合間に挿入される、雪の大地や森の静寂と共に、観る者を完全に圧倒する。
戦争とはなんと無慈悲で愚かで、一部のリーダーによる誤った国家間によって始まり、そして、永遠と続くものなのか!?
休戦協定直前に多くの兵士の命が失われた西部戦線の後に、同じドイツからヒトラーが現れて第2次大戦が勃発したように、たった今の世界では、終わりなき戦争が人々の不安を煽っている。そういう意味で、ドイツ映画が自省的な立場から放った戦争映画が、幅広い支持を得て本年度の賞レースを駆け上がっていることは必然的とも言える。
何よりも、一寸先に何が待ち受けるか分からない恐怖とサスペンス、人間ドラマとしの重厚さと虚しさ、若い俳優たちの熱演が、随時痛いほど刺さる本作。慌ただしいシーズンに時間を作って観る価値はある。
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