「「味」がする人間」アイアム・ア・コメディアン crisさんの映画レビュー(感想・評価)
「味」がする人間
映画館にて。
なぜこの映画を知ったのか忘れちゃったけど、知ってからは「気になる」という気持ちが続いて。公開されてる間にちゃんと観に行かないとな、って。なぜかそんな気持ちになっていた。
村本さんのことを好きとか嫌いとか、私自身どっちでもなく、その上での感想。
見て良かった、と思う。
人間だなあ。生きてるなあ。ってのを、見れた映画。
彼自身、いろんな主義主張を持っている。
その主義主張を「出したい」という欲求。
抑えられていること、禁止されることに対する疑問や反発心。
そういうことが、人よりも強く、そういう自分を裏切れない、だから行動する。そんな姿に目を奪われるものがあった。
「大人になる」ということを、この世の大勢がしていく中で、
なんで?どうして?えやだな。ほんとは嫌だな。でもやんなきゃな。ルールだもんな。etc...
そういうモヤモヤがありながらも、目を瞑ったり、紛らわしながら自分をごまかしながら「大人になって」く中で、
モヤモヤに目を瞑ろうとしない彼の姿に、目を惹きつけられる。
私は、そういう大人が嫌いじゃない。
むしろ気になって仕方ない。
もがいてる大人って、すごく良い。
主義主張に賛同はできないかもしれない。でも
"姿勢"にすごく惹かれる自分がいる。
確かに彼の表現したい形は、スタンダップコメディの形にとてもマッチしているような気がする。だからNYでゼロから頑張ろうと立ち向かってる姿は、素直に勇気をもらえるシーンだった。良いシーンだった。羨ましくも感じた。挑戦してる姿に。学生の部活してる姿のキラキラ、スガスガしさを見たような、そんな感じ。
40代になっても挑戦する姿は勇気をもらえた。
自分もいくつになっても挑戦する大人でいたい。
このNYでの活動が、この映画のメインでたくさんシーンがあるのかなと思ったけど、移住前2020年コロナあたり〜の話がメインだったのね。
なぜ、NYでスタンダップを目指すに至ったのか、その経緯を知れる映画。
でも、「やってる感」はすごくあるだろうな、とひしひし感じた。
実際にそれをやってる渦中は大変だし不安もあるし、”やってる感あるわ〜”なんて浸る感じじゃないだろうけど、
それとは逆の状態、「経済的にもこのままいけば安定してるんだけど、なーんかこのままでいいのかな」とか「お金はもらえるんだけど、なんか幸せじゃないんだよなあ」とか、そんな状態の人って多いと思う。
その状態の人間からすると、彼のような「大変そうだけど良い汗をかいてる人」が、すごく眩しく見える。
なんやかんや問題や、大変なことが起きたりするけども、その中でももがいてる姿は、なんか、見てしまう。人間がちゃんと生きてる姿を見れるから。
人は、有名になったり地位や名声を手に入れると、失いたくないものが増える。そうなると、波風をできるだけ立たせないようになるので
だんだん、味がしない人間になってくる。聞き分けのいい人間になってくる。文句を言えばいいってことじゃなくて、なんだろう、「こうしとけばいいんでしょ」をやってる人間って、シンプルに魅力が薄れてくる。
そういう意味で彼は、とっても「味がする」人間。
そういう「人間」を見れた。
芸能人になって、そういう選択をするのは本当に大変なこと。
元々村本さんの性格をよく知らなかったので、なるほど、こういう時にこういう心境になる人なんだなあ、とか。
そういうのも見れて、良かったかな。
とにかく、人間だった。