フェイブルマンズのレビュー・感想・評価
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"映画"を巡るある家族の日常
感想
現在の"巨匠"と呼ばれるに至るまでの半生を、鮮烈なサスペンスパートを取り込みつつ描いた、愛と抱擁の作品だった。
・物語構成
スピルバーグ監督の半生を取り入れた自叙伝作品。幼少期に両親と映画を観た事で、映画の魅力に取り憑かれ、母親から貰ったカメラで日々自主制作映画を撮るサミー。ある日、カメラに映っていたある場面が家族の絆に亀裂を入れる...。といったあらすじ。
スピルバーグ監督が映画業界人になるまでの経過をフィクションの設定と物語ベースの中でも随所に感じられる細やかな脚本だった。特に親の視点主軸で進む本作は、無垢な少年と、仲の良い家族を形作る事に常に徹する親の視点の違いを描き分けられていると感じられた。
個人的には、幼少期の頃から本格的な映画づくりをしていて、家族やボーイスカウト、学校のプロムパーティなどの多人数の環境で披露して生活してきたという部分に現在の"巨匠"となる部分の片鱗を感じられて嬉しくなった。
意外だった要素にサスペンスパートがある。家族のある秘密に気づいてしまう、往年の昼ドラ的展開。この展開は予想していなかったので、素直に驚かされた。
この事実を知った後の家族への接し方についても、スピルバーグ映画らしさを感じられて感動した。
他にもユダヤ系出身である事に対する迫害についても、監督自身の経験から描かれていると思われるイジメ描写に生々しさを感じられた。
・スピルバーグ印
スピルバーグ監督ならではの、美しい場面作りは今作で健在で観やすかった。
総評
スピルバーグ監督の原点を垣間見れる傑作。監督自身の物語としてだけではなく、観客も共感できるメッセージ性の強い物語に没入できた。
映画監督とは
スピルバーグという天才的な映画監督が、科学者と芸術家の間に生まれた子供だったというのはすごく頷ける事実でした。
父からは冷静に物事の真実を見つめる目、母からは感じたものを信じて突き進む心を受け継いだのだと思います。
初めは映画を撮る楽しさを、次第にその辛さ(自分をえぐるような)を知っていく。そうした映画を通しての成長と、どちらかというと辛いことの方が多い環境の中での心の成長とが一体となっていて、まさに映画と共にある人生だったのだと感じました。
心が苦しい、それでも撮るというこの方の凄みを知ったような気がしました。
芸術を取るか家族を取るか
スピルバーグの自伝、といっても、映画監督になってからのキャリアの話ではなく、青年期までのスピルバーグとその家族についての映画です。
夢を持つ子供とその一家の物語として楽しみました。
「芸術を取るか家族を取るか」という問いが、この映画の一つの主題のように思います。
科学の道を極める父親や、ピアノを弾いたり踊ったりと「表現者」な母親。
家族それぞれに芸術肌な一面があり、よく言えば個性的、悪く言えば収まりの悪い家族に見えます。
芸術を極めることと、家族の一員として生きることは相反することで、夢を追う人はいつでも、どちらを選ぶかという選択を迫られているのだと思います。
夢を追う人だけでなく、その家族にも見てほしい映画だなと思いました。
最後のワンショットがとてもいい!
映画の時間から何十年も経って、今も生き生きとカメラを持っている「少年スピルバーグ」が最後に出てきてくれたように感じました。
表現者へのエール
良い意味で思ってたのと違った!
勝手にノスタルジックな映画愛に溢れる作品だと思っていましたが、自分らしくあることへの犠牲と覚悟…スピルバーグ監督から、今この時代に“表現”しようとする全ての人たちに向けてのエールでした。
そして、観客の私たちにも…ラストショット。カメラを覗く作り手の目線に「これから作られる映画たちをお楽しみに!」と言われた気がしました。
全編、光と影がとても印象的です。
映画は光と影の芸術だからですね。
映画の持つ光と影、良い影響があれば悪い影響もある。
そして人間の持つ光と影。
光だけのものはない。両方あるから複雑で美しい。
自分自身に正直に生きること、自分自身を表現することは、誰かを犠牲にしたり、傷つけてしまうこともある。
「でも、それを怖れないで。」
同じくアカデミー作品賞にノミネートされている『イニシェリン島の精霊』にも通じるテーマだと感じました。
世の中には自らを表現せずには生きられない人間と、表現しなくても生きられる人間がいる。どちらも良くてどちらも悪いけれど、自己表現や自己主張には区別と選択が伴う。
何かを選ぶということは、何かを捨てるということ。
『イニシェリン島…』はかなりストイックに突きつけてきますが。笑
女性問題から多様性ダイバーシティへ。環境問題からSDGsへ。
この数年で社会は成長した。
お互いに認めあう世の中で、自分の思いを表現することは、時として配慮が足りないと指摘されることもあるだろう。
「でも、それを怖れないで。」
『フェイブルマンズ』は悲しんでいる家族を前にカメラワークを考えてしまうような…どうしようもなく表現する側の人々を勇気づける作品だったと感じます。
映画がもたらすドキドキやワクワクに魅了された少年は、映画でメッセージを伝えることができることに気づきます。
役者の演技はもちろん、編集や様々な技法で表現された映画は、人々の心に深く入り込み、非常に影響力を持ちます。
なかでも興味深かったのは、虚像に対する苦悩。
これは観客にも責任があり、社会が成長したように、観客も成長しなければならないと感じました。
一昔前だとドラマの敵役はファンから嫌われたりしました。
さすがに今どき、悪役だから悪い人だと思う観客はいないでしょうが。
映画マジックが生んだ虚像を、演じる人に重ねてしまうこと自体は、今もなおあるのではないでしょうか?
あまりにもリアルな演技だと、あたかもその人自身のように感じてしまいますが、
正義のヒーローを演じた役者に、プライベートでも同じイメージを求めていないでしょうか?
人間なので間違うこともあるのに、ガッカリしすぎたり、必要以上に注目して大騒ぎしすぎていないでしょうか?
さすがに昔のゴシップやパパラッチほどタチの悪い暴かれ方は無いにせよ、逆にSNSなどで縮まった距離からの過剰な反応には、いくら夢を売る商売の人とはいえ精神がもたない。
観客も分別を持って作品とは切り分けて見るように、成長しなくてはいけない気がしました。
使い捨ての消費社会も描かれていて、今の感覚からすると本当に衝撃です。
今とは全く違う社会の価値観の中で生まれた作品たちは、その当時のテーマを当時の尺度で描いている。
昔の映画で描かれる価値観や倫理観を責めて作品を排除するのではなく、見る側の観客がきちんと作られた時代を加味することで学ぶべきテーマが見えてくると感じます。
今までに作られた映画へのリスペクトと、これから作られる映画へのリスペクト。
引き算の余韻に巨匠の余裕を感じました。
おまけ
ある学生から「映像を作る時に、自分の作品が誰かを傷つけるのが怖い。どうしたらいいでしょうか?」と質問され
「そんなことなら作るな。それが怖いなら作る資格がない」と答えたのは、大島渚賞の審査員である坂本龍一さんです。
主人公のサミー少年が、両親に連れられて初めて映画館で映画と言うもの...
主人公のサミー少年が、両親に連れられて初めて映画館で映画と言うものを鑑賞し、衝撃を受け、その後の人生に大きな影響を与える様は、自分自身にも少し当てはまり、とてもワクワクしました。誰しも、人生で大きな影響を受けたであろう作品との出会いがあり、彼の衝動や、この上手く表現しがたい高揚する気持ちは共感できるのでは・・・?
物語は、いかにしてサミー少年が映画製作に人生を捧げるようになるか、家族との物語を中心に描かれており、特に芸術的センス面で非常に影響を受けた母親との描写は印象的。反対に、映画製作を単なる【趣味】と決めつけ、現代社会に無くてはならない、当時は最新鋭のモノづくりに多大な影響をもたらしたであろう父親との関係も印象的。
1960年代以降のアメリカ社会の描写にも、とてもワクワクさせられた作品でした。
それにしても、彼の映画製作のセンスは、あの時代のかなり幼い時期に既に確立されていることは、非常に興味深かったです。本作鑑賞後、改めて彼の代表作を観ると、新たな発見があるかもしれないと感じます。
想像してたのと違ったが、、、
試写会にて初めて視聴しましたが、生い立ちエピソードは短めで初監督作品から現代に至るまでのエピソードをメインだと勝手に思っていました、、、。
そしたスティーブンスピルバーグ監督の壮絶な家族関係に正直びっくりという言葉しか出て来ませんでしたが母をきっかけに今至ると思うととても考え深い作品だなと思いました。
続編を期待したいですがなさそうです、、、。
ひたすら映画愛を語る青春時代を描く作品かと思いきや、シリアスな家族...
ひたすら映画愛を語る青春時代を描く作品かと思いきや、シリアスな家族を描く作品でもあった。芸術を愛することができる人間とそうでない人間、それぞれの葛藤が痛いほど伝わってくる深みのある物語でした。ミシェル・ウイリアムズとポール・ダノが素晴らしい演技でした。落ち着いた色調も懐かしい感じで良かったのと、何と言ってもラストの大監督の登場に鳥肌が立って点が甘くなったかも。。
ノスタルジックで映画愛あふれる作品でした。どの登場人物の視点で観る...
ノスタルジックで映画愛あふれる作品でした。どの登場人物の視点で観るかによっても印象が変わってくると思います。それぞれ個性的な父母などキャスティングも良かったです。何といっても最後のあの大物役をあの監督にやらせるセンスにときめきました!
思ってた感じと違いました
試写会にて鑑賞。
スピルバーグの自伝的映画と聞いていたので名作へのルーツなど感じられるかもとワクワクしていたのですが、思っていた感じとは違うテイストでした。
幼少期の映画との出会いや少年の彼が映画を作る過程のシーンは興奮しましたが、家庭問題がメインとなり、そこが観たいんじゃないんだよなぁというのが正直な感想です。とはいえ、名匠にもこんな闇深な過去があって、苦労もしたんだなと感じることができて良かったです。
映画神スピルバーグだから為せる所業
試写会で拝見しました
映像を見ることの快楽、映像が暴く真実、映像が作り出す虚構
それぞれをスピルバーグが言葉ではなく映像によって、圧倒的な説得力を持って我々にこれでもかと叩きつける
彼が映画を語るためには、映画が全てである自身の人生を題材にするのが最も適切だったのだろう
自身の幼少期を無邪気に懐古することなく、映像によって映画を語りきり、最後は爽やかなユーモアで終わってみせるこの余裕
昨今は監督の自伝であったり、映画についての映画が増えているが、エンタメとしての自伝においても、映画論を語る映画においても、本作が頂点だと思う
淡々さに若干違和感が‥
試写会で拝見しました。巨匠の青春時代がテーマだったので、起承転結ドラマチックを期待していましたが、淡々と進んでいき、若干肩透かし感がありました。両親の離婚シーンも客観的でした。スピルバーグ監督と言えども自叙伝ではより客観性が強まるのを感じました。淡々さで150分超は少し長く感じました。スピルバーグ監督作品での意外性を観たい方にはお勧めです。
スピルバーグ監督の映画愛
映画に魅せられた少年が映画作りの道へ進むまでを、家族の物語を中心に描きつつ、芸術を仕事にすることへの喜びと困難にも触れていて2つの面で楽しめた。
映画作りの楽しさが中心となっていて2時間半があっという間に感じるくらい、エンタメ作品として完成度が高かったと思います。
ユダヤ人差別の描写などメッセージ性もあって、監督の経験がベースになっているのがよくわかる作りになっていたと感じました。
エンドロールのつづき、バビロン、エンパイア・オブ・ライトを見て感じた共通点は、映画の仕組みや映像として見える仕組みも含めて映画という存在が好きなんだなってこと。
この部分はどの監督も語っていて見比べるのも面白いと思います。
うーん…
スピルバーグの半生なので、もちろん創作作品ほどの起承転結があると思って観ていないが、それでもあまりに淡々と話が進んでいく。
時代背景なのか、お国柄なのか、自分の知識・理解不足のせいなのか。なんでそういう会話になるんだろう?という場面も多々ありなんとなく消化不良。
ただ青年時代の環境が揃わない中での撮影の創意工夫や、ラスト5分はワクワクしました。
作品は、幼少期に初めて映画を見てから虜になり、青春時代の話と、彼が...
作品は、幼少期に初めて映画を見てから虜になり、青春時代の話と、彼がプロダクションに入るまでのストーリーを描いています。 思春期に家庭環境や生活環境が変化し、悩みながらも映画を取り続けた人生が描かれています。
この作品の中で映画を撮るシーンがとても印象的で良かった。
また、スピルバーグの人生の一端を見ることができて、とても良かったです。
夢を描く全ての人!地平線の位置を面白くしよう!
試写会にて鑑賞!
映画.comいつも試写会ありがとうございます!
スティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的作品と言うことで絶対観ようと決めていた作品!
もちろん脚色はあるだろうけど、若かれしスピルバーグ監督には世界がこんな風に見えていたのかな?
ファッションや街並み、色合いカメラワーク…とにかく画面に映るもの全てが美しい!
流石スティーヴン・スピルバーグ。
映画館に初めて行った時の高まる気持ち、映画と共に歩んだ人生…。
自伝的作品というだけあって、スティーヴンスピルバーグ監督の原点を少しだけ知れたような気持ちになる作品でした!
芸術家の想像力の豊かさと家族と葛藤…。
スピルバーグ監督の作品で家族の絆が素晴らしい表現で描かれる理由も少し覗けた気がする。
鑑賞後にはぜひラストシーンの地平線とポスターの地平線に想いを馳せてほしいです!
夢を描く全ての人!
さぁ!地平線の位置を面白くしていかないとね!
私事ですが…スティーヴン・スピルバーグ監督と誕生日一緒なんです✨
だからなんだって話なのですが、誕生日が一緒の有名人(しかも好きな映画の監督)ってドキドキワクワクしませんか?
偉大な映画監督が少年だった頃
フェイブルマン家はユダヤ人の家系。戦後まもなく生まれたサムは家庭の都合で引っ越しをすることが多く、差別を受けることもあるが優秀な電気技師の父親のお陰で物質的には裕福だった。幼い頃に見た映画というものに惹かれすぐに見様見真似で映画作りを始めるサム。サムが監督し、妹や友達が演者、出来上がった作品はコミュニティ内で上映会をする。そんな充実した日々がやがて終わりを告げる……という、スピルバーグ監督の自伝的作品。
スピルバーグ監督、母と同世代で、物心ついたときには既に偉大な映画監督であったので「どんな少年時代を過ごしたのか?」など考えたこともなかった。母親から受け継いだ芸術的資質と、突然家族の形が変わってしまったことがスピルバーグ監督の優しくてファンタジックな作品として現れているのかなと思った。
齢70を過ぎても子供の頃の孤独や葛藤というのは消えないのかな。となんだか少し怖くもなったが、様々な経験が映画に生きているし、映画作りを通して昇華するしかない。そういう業の深さも感じて、スピルバーグ監督作品が好きな人は勿論、創作活動と日常生活とのバランスを見つめ直したい人にもオススメの作品です。
ところでガブリエルラベル、冴えないスティーヴロジャースみ(CGで縮んだくりえばみ)がありません?すごく気になってしまった……。
スピルバーグの映画愛
スピルバーグ監督が、映画人生を懸けてどうしても世に出したかったという熱意が、丁寧に、繊細に描き出されていて、さすが巨匠としか言いようがない。
そうですか、これを撮りたかったんですか、スピルバーグさん。
スピルバーグさんて、すごく心が優しい人なんですね。
想像していたよりも遥かに家族のお話で、だから「フェイブルマンズ」というタイトルなんだね、と後から気付く笑
ベテラン勢はもちろん、若者達の演技めちゃくちゃ良かったな…。
主演のガブリエルくんという子が、途中からクリエヴァに見えて仕方なかった()
残念なストーリー
盛り上がる場面が少なく、平坦で退屈な作品でした。監督として活躍するところまで描かれていればまだ結末として納得出来たと思いますが、単に学生時代の冴えない生活をダラダラと描いただけで、感動も学びも無く、途中で飽きてしまい残念でした。作品中の音楽だけは美しくて心地よく満足しました。
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