劇場公開日 2023年3月3日

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「ルーツをたどる」フェイブルマンズ N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ルーツをたどる

2023年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

どこまでが事実でどこまでが演出なのか。
探ることこそ無粋というやつだろう。

それもこれもまるっと受け止め残るのは監督のルーツ、
これは家族についての、とりわけ母親の物語なのだ、ということだろう。
だからして主人公と映画の関係を深掘りするより家族それぞれの表情やエピソード、
母親を中心にした人間関係が丁寧に描かれている。
同時に劇中、それらを狂わせる悪者的立場で「映画、映像」は登場し、
不穏の象徴ときらめくような対象としては出てこない。

懺悔でもなく、そういう事があったと言わんばかり淡々とした本作は想像していた以上に抑えられた作品で予想と違っていた。だがどうともはっきりさせることなく終わる悪者的映画、映像の件に転機があったことだけは感じられ、傷つきながらも手放すことだけはしなかったその後にアーチストの狂気と現実を垣間見る。

公のスピルバーグ像を讃えるものでなく、大変パーソナルな思い出をスチール写真のように切り取った一作は、文学短編を読み終えた後に似て少し心がざわついたままである。

追記
もっと快活、豪胆な物語をみたかった、といったような感想を多く見かけるが
冷静に考えて、自身の人生を、自身が監督して、自身の映画として公開しているのである。
それでいて内容が自分スゴイだろ、なんてあるわけない。
できるとしたらうぬ惚れた、メタ認知不能の、恥ずかしいくらいイタイ人物である。
だからして華々しい内容にならないのは当然なのである。
そこが本作のもっとも生々しい点であり、ナイーヴな真実に触れた証でもあると感じている。

N.river
N.riverさんのコメント
2023年4月15日

自身を切り売りするなどと、自尊心の低いゲスさでは、これまでの快挙こそ生み出せなかったと感じています。わたしはものすごい告白を受けた、くらいの驚きを感じました(^^)

N.river
トミーさんのコメント
2023年4月15日

「オレのイタかった青春時代観て金を落としやがれ! 」とも考えていたと思ったんですが、やはり奥ゆかしかったんでしょうね。

トミー