「中国への返還後、香港名物のネオンは規制され、取り壊しが進んでいた。...」燈火(ネオン)は消えず りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
中国への返還後、香港名物のネオンは規制され、取り壊しが進んでいた。...
中国への返還後、香港名物のネオンは規制され、取り壊しが進んでいた。
根っからのネオンサイン職人だったビル(サイモン・ヤム)が死んで6週間ほど。
残された妻メイヒョン(シルヴィア・チャン)が夫の残した工房に出かけると、工房には見知らぬ青年(ヘニック・チャウ)がいた。
彼はビルの弟子だと名乗り、師匠が最近現れず、工房の家賃の支払いも滞っていると告げる。
青年のスマホには、ビルから指導を受ける青年の姿が写っている。
青年が続けて言うには、ビルは最近なにかのネオンの再現に取り組んでいたが、なにを作っているのかは教えてくれなかった、と。
メイヒョンは青年とともにビルがやり残した仕事を完成させようと取り組む・・・
といった物語で、あらすじだけ書くとしんみりしたハナシなのだが、香港映画特有の猥雑さやユルさなどが織り込まれていて、しんみり一辺倒というわけではありません。
ネオンはかつての香港の象徴であり、ネオンを題材にするのは中国に取り込まれた香港の、香港人としての抵抗みたいなものだろうなぁというのが鑑賞する前からの予想だったが、それは当たっていた。
メイヒョンが取り壊されようとするネオンにすがって、「わたしを先に殺しな」とわめくエピソードはまさにそのとおり。
ただし、そんな香港人の怨念・怨嗟のようなばかりだと映画は成立しないので、最終的には、ネオン慕情、香港ノスタルジー、さらに香港のネオン職人たちを讃える(ひいては中国人を讃える)方向に決着させ、当局の検閲を掻い潜っている。
このあたりの逞しさが底辺に流れているのことが、本作の見どころ。
シルヴィア・チャン、サイモン・ヤムのベテランふたりの存在感も素晴らしいが、へなちょこ青年を演じるヘニック・チャウもなかなかにいい。
まぁ、時折、柄本時生に見えて仕方がなかったけれどね。
監督はアナスタシア・ツァン。脚本もツァイ・ソーウェンと共同で担当してる。