「現在の香港の状況を知るのによい作品」燈火(ネオン)は消えず yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
現在の香港の状況を知るのによい作品
今年39本目(合計1,131本目/今月(2024年1月度)39本目)。
(ひとつ前の作品は「砂の器」、次の作品は「弟は僕のヒーロー」)
香港で過去、現在に起きている実際の出来事をテーマにしたヒューマンドラマです。
ここのサイトや公式サイトでは「建築法の改正」とあり、2010年ごろから少しずつ始まったとされるこの「ネオンサインの現象」は意外に知られていない(香港を舞台にした映画はカンフー映画以外では何らかの形でネオン街が出てくるが、それは現在2024(2023)年ではほぼCGによるものこと)といったところで着眼点は良かったかなというところです。この点、国の制度として中国の直接統治を受ける香港と、争いはあっても一定の自治権が存在する台湾とでは事情が異なる部分です。
映画ではヒューマンドラマの色合いを強くするために(換言すれば、ドキュメンタリー映画あるいは問題提起型の映画にしないため)このように「法の規制によるもの」として一気に紹介されますが、実際にもっと調べてみると、香港に関しては、
・ いわゆる雑居ビルで、1F~2F程度がお店、3F以上がマンション(賃貸アパート)というビルが普通に見られたが、住居場所とお店の分離が進んだ(土地開発の一環)
・ (こちらのほうがより自明ですが)オンラインショッピングの発達により、そもそもオンラインショッピングで代替のきかないもの(有名なお店の飲食物やホテル等、代替性がないもの)を除き、それらの発達により昔ながらのお店そのものが成り立たなくなる状況になった(消費者の志向や情報技術などによっておきたことがら)
…の2つもあり、特に3番目の「オンラインショッピングの普及」によって発生したという部分がやはり若干強いようです(どれか一つに決まる、というものではない)。
ただ、この問題提起をするタイプの映画ではないし、香港で実際に消えつつあるネオンサインをめぐる一つのヒューマンドラマとしては良いかなというところです。
なお、(日本の)公式サイトでも「日本についても同じ現象がみられる」とされていますが、こちらは記載されている通り「技術の発達により、ネオンサインの作り手の不足(後継者不足)である」というのが正しいようです(日本ではいわゆる中華街である神戸・横浜以外では表立ってネオン街というようなものは見当たらないし、この2都市でさえ今後どうなるかは微妙。ただ、いわゆる昔ながらの中華街文化があるこの2都市に限っては(その限られた範囲の中華街で作りうるものに限定される以上は、(負担の度合いが異なる以上)ネオン文化は続くとみることもできるし、ここは未来予知でもできないのでいろいろな解釈が可能)。
採点に関しては以下が気になったところです。
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(減点0.3/字幕について(ネオンサインについて))
・ もちろんすべてのネオンサインに字幕が付くのではないところ、一方で漢字文化圏に属する日本ではある程度の推測はつきますが、中には「安易な推測ではできない」ものもあるので(よく言われる「飯店」は日本では「レストラン」を想像するが、中国語(あるいは、香港で実際につかれている語)では「ホテル」の意味しかない)、これら「類推のきかない語に関しては」ある程度ケアが欲しかったです。
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