「余白を残した作品でした」葬送のカーネーション 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
余白を残した作品でした
採点3.7
亡くなった妻を故郷に埋葬するため、棺を背負い歩む老人とその孫娘の旅。
台詞が、取り分け親子の会話がほぼ無く、その代わりに旅の途中で触れ合う人たちの言葉が優しく彩ます。
そして舞台となるトルコの景色や自然が雄大。そしてそのカットが実に美しい。
絶望感さえ感じる荒野なのですが、すごい魅せられました。
BGMもほぼ無く、風や雨や獣など自然の音だけです。
それぞれの立ち位置やバックボーンも語られる事なく、逆にその一瞬一瞬だけが浮かび上がるよう。
何となく感じる二人の難民らしさと、根付いたイスラムの思想も感じました。
孫のハリメと老人ムサの間にも"仕方なく一緒にいる”といった距離がずっと横たわっているんですね。
そんな気持ちは二人、遂に辿り着いた国境で完全に浮き彫りになります。
絶対に帰ると決めた故郷と、絶対に戻りたくない向こう側。
紛争下における、それは家族であってもある世代による意識の違いを写し込んでいるのは見事でした。
もう一度観たくなる、余白を残した作品でした。
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