「どうしたいのか?を観る側にお任せし過ぎてモヤモヤ~」理想郷 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
どうしたいのか?を観る側にお任せし過ぎてモヤモヤ~
テレビの映画コーナーで紹介されてから気になっていた作品をやっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと…モヤモヤ~w
煮え切らないしスカされるしとなかなか鬱憤が貯まる作品w
良い部分も多分にあるけど、何故こうなった?何故こうした?何故こうしなかった?と言うのがいろいろと出てくる作品です。
定年後に田舎に引っ越して念願の田舎暮らしと言うのは日本でもよく聞きますが、田舎暮らしが思ったよりもハードと理想と現実の違いに愕然としてあえなく都会に戻ると言うのはよくある話と聞きますが、実は田舎暮らしの独特のルールと近隣住民とのお付き合いによるトラブルで揉めるのが原因の3割らしい。
個人的には都会が大好きで綺麗な水洗トイレに慣れきった身の上では水洗でなく和式のトイレはすんごく嫌。それだけで多分なストレスになりますw
作中のアントワーヌとオルガは田舎暮らしにはなんの文句もないけど、アントワーヌを最初から小馬鹿にしている近隣住民とのトラブルでのストレスが100%の原因でそこに来たばかりの時に村に風力発電の話を反対したのが決定的なドドメとなってる。
最初はアントワーヌと粗暴なシャンとロレンソのお隣さん兄弟にアントワーヌ側の味方の心境だったけど、中盤での話し合いの中でなんとなくシャン兄弟の気持ちも分からなくないと言う感じになってきた。
産業もなく、貧乏が慢性的な村にゆりかごから墓場までを全うすることが当たり前のような住人にとっては、風力発電の建設の話は振って沸いたようなタナボタ話。
慢性ビンボーの身の上なら景観が壊れるなんて知ったこっちゃ無いと言うのもなんとなく分かります。
そこに引っ越してきたばかりのご新規さんが俺にも権利がある!とばかりに権利を主張して、反対となったとあればそりゃあ怒るわなと。
村の長年の状況を踏まえず、理想論を振りかざして、反対を唱える。それも自分達が理解出来ないような理論にインテリぶった感じになったら、そりゃあムカつきもしますわなとw
最初と最後はアントワーヌ側であっても、中盤の酒場の話し合いのシーンではシャン兄弟側の心境も理解出来る。このシーンって意外と作中でも重要かつ屈指のシーンだと思います。
あと、この作品って結構長回しのシーンが多いんですよね。長回しは役者泣かせかと思いますが、役の心境や気持ちの流れや空気感が際立つので、この作品でも空気感や緊迫感が秀逸に感じます。
ただ、正直…どうなの?と思うくらいの肩透かしが多数。
アントワーヌの煮え切らないし態度は観ていて“やっておしまい!”と思いつつも“やらんのかい!”とツッコミ大盛りw
元教師であったとしても、立派な体格は喧嘩でも負けそうにないのにハートはチキン野郎。結局アントワーヌの煮え切らないし態度が悲劇を生んだと言うのが1割くらいはありそう。
また、妻のオルガが最初は“村を出ましょう”とアントワーヌに諭すのに、アントワーヌが行方不明になってからの村への固執が心情描写が微妙なんですよね。それがどうも分かり難くて、オルガがなんか良からぬことを企んでいるのでは?もしくは黒幕だったのか?と勘繰ってしまう。
それに至るのに地元警察の煮え切らないし態度に“お前らもグルか?”と感じてしまうから余計にタチが悪いw
なんか無意味なセクシーショット(娘のマリーは良いがアントワーヌのはホントに意味が分からんヽ(`Д´)ノ)もあるし、飼い犬のティタンは人(犬)が良いのか、番犬感が薄い。でもティタンの性格って、アントワーヌとよく似ていると思ったら結構納得w
肝心なシーンが省かれていたりして、アントワーヌやシャン兄弟、オルガやマリーが何故そこに至ったのか?と言うのがバッサリ。
変にBGMが盛り上がって“何かあるのか?”とドキドキしても特に何にも起こらなかったり、ラストの締め方もなんか中途半端で“…えっ?これで終わり!?”とスカッと感が薄い。
まあ、ある意味フランス映画らしいとも言えますが、ちょっと丸投げ感が強い。
役を全うしたのはホント、終始小悪党のシャン一家といつまでも煮え切らない態度の地元警察官ぐらいでしょうかw
あと、二部構成とありますが、オルガ編はかなり付け足し感が強いです。
シャン兄弟とアントワーヌとの和解の糸口的なのはなんとなくちらほらあったようにも思えるけど、結局は双方の主張が互いに理解出来ないことに終着。
あと、一歩踏み込んで互いを理解出来たら?
あと、一歩踏み込んで先を見通して行動出来てたら?
アントワーヌは態度では無く、話し合いで解決を試みるんやったら、もっと確りとそうせんかい!と思えるし、オルガも捜索するのならもっとちゃっちゃとやらんかい!とモヤモヤ~
理想郷はあくまでも理想とするからであって、その地は理想とは限らないのは分かる。
でもそんな哲学的解釈は置いといても、もうちょっと確りと描いて欲しかったなぁ~と個人的には感じます。