「人間関係の複雑さ」理想郷 Sachikaさんの映画レビュー(感想・評価)
人間関係の複雑さ
田舎暮らしを求めてやってきた夫婦と、その地に生まれ住み続けてきた隣人の諍いから始まる物語。
一人一人思考が違えば感情も違うし、何を愛し・憎み・求めるのかも違う。
誰もが自分の信念のまま生きるエゴだらけの世界で、唯一無二の夫婦の愛がとても美しく映る。
差別と言い争いの激しさの中で描かれる、細やかな感情と仕草がとても好き。
途中までは「田舎暮らしって怖い!」と思っていたし、ずっと心がざわざわしていたけど、スリラー要素とは違う物語の別のテーマに気づいた時にグッと好きになったし、物語の見方・描かれ方がガラっと変わるのもよい。
サスペンスだと思って観ていた所からの、癒しや救い、愛。そこは前作の『おもかげ』と共通していてとてもおもしろい。
季節の流れ、時間の移り変わり、場面転換が秀逸。
印象的な場面はいくつかあるけど、隣人兄弟と夫アントワーヌが酒場で、各々の気持ちを吐露するシーンが記憶に残る。
それまで兄弟の執拗な虐めが悪だと感じていたけど、あそこだけ一瞬、アントワーヌがこの村を脅かす侵略者の様にも見えた。
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