「日本古来の差別の形成過程をみせてもらったような」山女 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
日本古来の差別の形成過程をみせてもらったような
タイトルからサンカの話しかと思って鑑賞しました。遠野物語(柳田國男)からインスパイアされた作品とのこと。文化庁も応援していますし、訴えたいポイントも明確なので、まずまずの作品で、キャストもほぼベストと言える布陣でした。
主演の山田杏奈。とてもよかったです。山田杏奈は芋生悠とのダブル主演の「ひらいて」でいいなぁと思った若手女優さん。山女や山男については柳田國男は里に暮らす人間とは民族的に異なる人種の存在を想定していたようですが、ご自身が集めたエビデンスはまったくないので、サンカはなおさらミステリアスな魅力に包まれた存在として今に続いています。意志が強くて生命力に溢れる山田杏奈の魅力が味わえる一品でした。そして、全盲の弟の存在がなおさら愛情深いキャラクターを引き立てます。人柱の描き方(火炙り)は、ちとやり過ぎだと思いましたが、突然の豪雨と落雷の描写は遠野物語拾遺28(人柱)のエピソードをアレンジしつつ、日蓮上人のエピソードを彷彿とする印象深いシーンでした。個人的にはサンカの成り立ちにひとつのヒントを提示しながら、昔の農村社会の不条理性を描いた作品として評価します。でんでんは漁労長とか村長とか古い体質のオサ役をやらせると真っ向からは憎めない独特の味を出すのでうってつけです。セリフひとつない森山未来の不気味な役どころも切なさと相まってとてもよかったです。ちょっとくさすぎる傾向のある永瀬正敏さんもこの役なら合格点ですね。山中崇と川瀬陽太のキャスティングも秀逸としかいいようがありません。
ただし、正確な史実に則った作品と思わないほうがいいですね。あくまでエンタメ作品として味わい、評価するニュートラルな立場を保つほうが賢明だと思います。
ハル役の三浦透子は抜群の存在感で怖いほどでした。さすが。
カールⅢ世さん、お邪魔します。
>突然の豪雨と落雷の描写は遠野物語拾遺28(人柱)のエピソードをアレンジ
そうなのですか。勉強になりました。
「遠野物語拾遺」
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