「古来の日本にみる「神」という存在を感じる」山女 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
古来の日本にみる「神」という存在を感じる
サービスデイの土曜日、シネスイッチ銀座で今週公開の本作の客入りはけして多くありませんが、雨の中わざわざこの作品を観にくるのですから、やはり皆さん熱心なのだと思います。そのせいか、上映が終わってもすぐに立ち上がることなく、席で「余韻」を味わってる方が多いように感じました。
主演は22歳の山田杏奈さん。小柄で童顔のためまだまだ制服役を演じててもそれなりに見えなくもないですが、子役時代から役者としてのキャリアが長い彼女には「本作のような作品に挑む姿勢」に強い意気込みを感じるからこそ、逆に「彼女主演なら見逃せない」と思わせてくれます。セリフは全編が舞台である遠野(岩手県)の方言で苦労も多かったでしょうが、静かに燃える感情の表し方は流石のもので、後半は物語の展開も乗じて神々しさすら感じます。
そして、助演の皆さんも素晴らしく、特に今回もでんでんさんと永瀬正敏さんはヤバいですね。この手の作品に現代の価値観を重ねてしまうのはむしろ間違った観方だと思うのですが、それにしてもお二人のやることなすこと、立場こそ対照的なのにどちらにも共通する「人間の弱さ、そして狡さ」が、演じるお二人の「表情そのものに刻み込まれているよう」で説得力しかなく、本作を観た後に(本作の原案である)柳田国男の『遠野物語(未読)』を読めば恐らく、そこかしこにお二人の顔を想像してしまいそうな気がします。
さらに、最早「彼以外考えられない存在感」で、「演技を超えたアクション」なのが森山未來さん。世を捨てた凛(山田杏奈)に生きる意味とそして喜びを感じさせますが、けして「(それを)与えている」という恩着せがましさがなく、代償を求めないところは本当の意味で神のようであり、むしろ、人間が「すがるために作り出した偶像的な神」とは違います。途中、巫女のお婆(白川和子)の「貢物も無いしのう」という言葉の偽物感が対比的でおかしく、最後の展開にそれを嘲笑うようなシーンがそれまでの重たい気持ちに対し少し救われます。観る価値ありました。