劇場公開日 2023年7月7日

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「むしろ『パール』と『X』の間を知りたい」Pearl パール りらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5むしろ『パール』と『X』の間を知りたい

2023年12月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

『X』を先に観て、数ヶ月後に『パール』鑑賞。予告編や煽りの文言からイメージしていたのとは結構違ったけど、面白かった、というか、意外にシリアス度高めに感じた。なんだか勝手に、ファンキーでコミカルさもあるような、人バンバン殺されまくる映画かと思ってたもので。

要介護度高い父と、狂信的なまでにストイックで支配的な母との三人で町から離れた農場に暮らすパール。夫は従軍中で不在。ダンスで映画スターになる夢を抱きながら、抑圧された生活を送るパールの密かな楽しみあるいははけ口は、たまに町でこっそり映画を観ること、そして小動物を殺しては池のワニに与えること。
母親のパールへの態度がまさに毒親なので、パールが不満を溜め込み、その反動でスターへの夢が妄想レベルに強まっていくのは分かりやすいし、ちょっとパールかわいそうにも思える。パールの思い込みの強さや歪んだ世界観はかなり危うさを感じさせるものの、もうこれは生まれながらに邪悪だよね、とか、シリアルキラーになるしかなかったよね、とは思えない。境界線上に立ってふらふらしている、という感じかなー。

むしろ、パールがこの映画のラスト以降に何があり、どんな暮らしや出来事を経てXのパールになったかがキモだと思うわ。だって兵役を終えて帰郷したハワードは、いきなりあの狂気の食卓と、それ以上に狂気をはらんだパールの笑顔を迎えられてなお、パールを捨てずに何十年も夫婦として暮らすんですよ? その心情や思うところがめちゃくちゃ知りたい。愛は責任でもあり、恐怖でもあるのか…そこは観た人が想像してくださいってことかしら。

皆さん言及されているミア・ゴスの顔芸は言わずもがな、ちょっとした描写がうまいタイ・ウエストさん。個人的には、義母から届けられた仔豚の丸焼きが軒先に放置されて、どんどん蛆がわいていくのとかね、何げないシーンが怖くておぞましいのがナイスです。
続編はマキシーンが主人公だそうだけど、ぜひハワード視点のスピンオフ短編とか撮ってほしいです。

りら