銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価
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親と子の絆とすれ違い
個人の感想と解釈であることをご了承の程よろしくお願い致します。
映画とは不思議な縁で結ばれています。
今日は映画館にくる予定ではなかった。
映画を観るなら他に観たいものもあった。
でも、自分の今の気持ちと上映時間のタイミングで
本作を観ることにしました。
とても観てよかった。
この作品に出会えてよかった。
もし、今日出会えてなければ
配信になってからもこの作品を観ることはなかったとも思います。
子供に先立たれた親の目線で観ると、
どんなに振り回されていいから
どんな生き方でもいいから
長く生きて欲しいと思う気持ちはわかります。
親を散々振り回した子供の目線で観ると、
本当に申し訳ありません。
もう僕には何もできない。
どうすることもできない。
こんな子供でごめんなさい。
と思う気持ちもわかります。
親は子供の1番の理解者でありたいと努力をするものです。
子供は親に認めてもらいたいものです。
そこがちょっとの感情のすれ違いでうまくいかなくなったりもします。
親の心、子知らず。
されど子の心、親も知れず。
だからこそ、お互いに元気なうちに、
会えるうちに、
話せるうちに、
一言でも多く会話して
素直な気持ちをちゃんとはっきりと
伝えておかなきゃいけない。
って思いました。
子供が親より先に亡くなるのは親不幸だということも理解できます。
残された親は生きているだけで罪悪感を感じから。
自分自身も高齢の親よりも一日でも長く生きていなきゃと思います。
でも、亡くなった子供が親不幸だとは全く思いません。
自分も最後は
「ありがとうございました」
と言って旅立ちたいと心に決めました。
素晴らしい作品に出会えてよかったです。
「綺麗に死ね」
不安定ながら、父目線のため心情の説明がされない賢治を菅田将暉が(たまにあばれる君に見えるくらい)好演。
役所広司も硬軟織り交ぜた名演で全体を支えるが、そんな中で本作の鍵となるのはやはりトシを演じた森七菜。
父の説得から病床の姿まで、素朴ながら芯のある姿は彼女ならではの奥行きが感じられた。
また、本人のみならず賢治が死に取り乱さなかったことも、「綺麗に死ね」の言葉があってこそ。
登場シーンが劇中で最も画面が明るかったことが象徴するように、宮澤家を照らす存在でした。
ただ、話が断片的な上に“間”を取らずカットが切り替わることが、切り貼り感に繋がっていて残念。
子供がカメラをガン見していた祖父の葬列シーンは撮り直しもカットもせず、画的には素敵だが話的には完全に不要なチェロのシーンは入れる。
わざとらしいスロー演出なども含め、引き算ができずに各シーンの余韻が殺された印象です。
母親が「最後くらい」と清拭をする場面も、それまでの“添え物感”が強すぎて、今さら我を出されてもと感じてしまった。
タイトルも惹句としては素晴らしいが、内容的には『銀河鉄道の夜』を引くには違和感があります。
しかしながら、政次郎が『雨ニモマケズ』を暗唱し慟哭するシーンでは涙腺が緩んだ。
「質屋を継げ」に対する反応で賢治の変化を、ランプの火の調整(賢治は小から大、政次郎は大から小)で二人の違いを出すのも上手い。
惜しい点はありましたが、演技も画作りも十分に良かったです。
久々に感動の純文学映画!
昔は跡継ぎとして生まれた男子には、家を途絶えさせない為の使命があり、それも含めて長男が生まれた時の父親政次郎の喜びようを観ていたら、私の父親もこうして我が長兄の誕生を喜んだのだろうなと、長兄に甘々だったことに嫉妬していた自分の子どもの頃を思い出した。
そして、思春期の真っただ中の賢治が少々狂気を帯びて反抗する場面ではちょっと引いたが、その激しい感情の迸りを父親役の役所さんがまるっと包み込んでくれるので、あとは賢治が大人になって行くのをただただ観て待った。
だけど、待っていたら。。。。悲しい結末が襲って来て、気が付けば私の頬から涙がとめどなく流れていた。
辛いとか、悲しいとか、そんな言葉では表現できない「死」という現実を見せつけられたけれど、父政次郎はそれを乗り越えて、作家宮沢賢治を作り上げた。
私の両親はすでに他界しており、母親とは大人になってから女同士としていろんなことを話をしたし無条件に尊敬しているが、父親とは大人になってからもずっと疎遠なままで、父親とも生きている間にもっといろんな話をしておけば良かったと寂しい思いが後を引いた。
宮沢鉄道に乗って
宮沢賢治の著作を愛読したり、特別思い入れあるって訳じゃないが、それでも子供の頃『銀河鉄道の夜』が国語の題材であったり、ちょっとかじって読んでみたり、アニメ映画を見たり、1996年には伝記映画が2本競作された事を覚えているなど、自分の人生に於いても少なからず宮沢賢治に触れている。
本作はそんな宮沢賢治のただの伝記映画ではない。
宮沢賢治の生涯も勿論描かれているが、と同時に、父の物語でもある。
父・宮沢政次郎。
あの宮沢賢治の父という事もあって、この父も知られた人物。
自身も父から代々引き継いできた家業の質屋の主人。厳格な父だったという。
息子に店を継がせたいが、別の道を歩みたい息子と度々衝突。
やがて息子の文才を認め、宮沢賢治の一番の読者に。
本作は“銀河鉄道の生みの親”と、“銀河鉄道の父”と、父と息子のレール(物語)である。
大森一樹監督の1996年の『わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語』で政次郎を演じていたのは、渡哲也。威厳と貫禄たっぷりだった事を記憶している。
本作で演じるは、役所広司。名演や存在感は言うまでもないが、役所広司が演じた事により、滲み溢れ出すたっぷりの人間味。
とにかく、親バカなのだ。
待望の第一子(賢治)誕生を聞き、急いで帰る。
賢治が赤痢で入院した時、父や妻の制止を振りほどき、病院に付きっきりで看病。
その溺愛ぶり。晴れて本を出版。鼻が高いが、書店で大量の売れ残り。それを全部買い占め。親ならあるあるなのかな…?
だからこそ、衝突もしょっちゅう。
反対したり、理解したり、唖然とさせられたり、叱咤激励を送ったり…。
賢治の絶命の寸前、賢治の本の文章を朗読。それくらい、息子の本を愛読していた。文字通りの一番の読者。
初めて褒められたと賢治は意識も絶え絶えに喜ぶが、父は昔から息子の成長を称え、褒めていた。
政次郎にとって賢治は、愛息で誇りだった。
生前は日の目を見なかった賢治。作品や再評価されたのは死後。
37歳という若さで没したが、その生涯は全うした人生以上。自分のやりたい事を父と衝突してまで貫き通し、かと思えば五里霧中。
元々は物書き。家業の跡継ぎは拒絶し、進学を望み、事業(人造宝石)を始めたいと言い出し、次は信仰に生きる。
政次郎じゃないが、息子は一体何をしたいんだ…?
自分の歩む道が見出だせない。自分は何をしたいのか、何の為に生きているのか、自問自答と苦悩の連続。
今を生きる若者と被る。日本文学の偉人も、我々と同じ悩み多き若者であった。
やがて、自分の道を見出だす。農業や、再び物書き。
地に足を付け、農民の視線に立って。“雨ニモマケズ風ニモマケズ”の有名な一説は、農民たちを謳ったかのよう。
農民の視線に立て。かつて父が言ったように。父の望む道には進まなかったが、父の思いは受け継いだ。
賢治の文才は、信仰や人生観、周りや家族、触れ、育み、生き学んできたもの全てから。賢治の魂と心の結晶。
人に寄り添った賢治を、菅田将暉が好演。
意外にも初共演の役所広司と菅田将暉。共に現日本映画界を担う存在。演技合戦やそこから体現する親子の愛情はさすが。
主に政次郎と賢治の父子の物語がメインだが、取り巻く家族、特に妹・トシの存在も大きい。
早逝した賢治だが、トシも。僅か24歳。当時不治の病であった結核により…。
かつて描かれた作品でも本作でも病に伏した姿が多く、儚げで薄幸なイメージもあるが、実際は芯の強い女性。
学業も優秀で、読書好き。兄の一番の理解者。
進学を巡って父と兄が衝突した時、その聡明さで父を説得。
圧巻だったのは、祖父の惚けが進み発狂した時、家族皆戸惑う中、祖父の頬を打ち、抱き締める。
強さと、包み込む慈愛。
家族の中の純真な心。見始めは力量不足かなと思った森七菜だが、見ていく内に様になり、臨終の演技は胸打った。
兄が執筆した物語を何より楽しみにしていたトシ。
病に伏した妹を喜ばす為、物語を書く賢治。
しかし、その妹はもう居ない…。自分の物語は誰の事も救えない…。
悲しみに暮れる息子を奮い立たせる政次郎。
息子の物書きを反対していたが、その物書きを続けるよう。
読者は居る。一番の読者の自分のように。
誰の事も救えない事なんてない。現に妹は元気付けられた。
賢治が創り出していく物語は、読む人の心に響く大きな愛となって。
成島出監督の演出は誠実。話題のアニメーションやエンタメ作がひしめき合う現国内興行に於いて、ストレートな良心作。邦画らしい邦画。
それ故地味にも映り、作りも淡白でもある点も少々否めない。
『銀河鉄道の夜』のようにもっと深く、もしくは格調高い文芸作を期待したら、ちと物足りないかもしれない。
が、本作はあくまで普遍的な家族の物語。それに徹した作りは好感持てる。
いきものがかりのエンドソングは確かに作品に合ってなかった…。
賢治は農業と執筆の二足のわらじ。
政次郎は質屋を店じまいするも、次男が新たな事業を開く。
愛娘の死を乗り越え、家族は各々歩み出し、後は安泰…。
…ではなかった。再びこの家族を、病魔が襲う。賢治が妹と同じ結核。死が迫る…。
子が親より先に逝く。しかも、二人も。
私は子は無いが、その心中は察する。政次郎の悲しみは計り知れない。
人の生死は抗えない。物語のようにはいかない。
が、短い生涯であっても、あまりにも突然の死別であっても、紡がれたレール(愛)は生き続ける。
銀河鉄道に乗って、また会う事が出来る。
我々はその愛の形や物語に、ずっと魅了され続ける。
あめにもまけず
「あめにもまけず~そういうものにわたしはなりたい」
宮沢賢治は最後の最後まで「そういうもの」であろうと生きた人なんだろうなぁ
実際は分からないけど、賢治が死ぬ間際に訪れた農民の前に、真っ白な足袋をはいて現れた姿には、賢治の生き様を見せつけられたようだった
政次郎の「たくさん褒めただろう!立って歩いたときも梨を食べたときも!」という台詞にはグッと来てしまった
こどもはきっと覚えていないけど、親は可愛い可愛い、いい子いい子って育てきた
親になった人、こどもの立場の人、このシーンはお見逃しなく!
役所広司さんは言うことなしで素敵でした
似合ってたな~政次郎の役柄!
意外だったのは森七菜ちゃん!
いつこんないい女優さんになったんだろう?
宮沢賢治のことをあまり知らない人でも気軽に観られる映画でした
枠からはみ出した天才を支え続けた家族
宮沢賢治の作品は「注文の多い料理店」しか読んだことがありません。「風の又三郎」は、読んだことも無いのに、『どっどど どどうど どどうど どどう』の、独創性に富んだリズミカルな言葉が、記憶に残りました。本作でも、自作の童話を妹に読み聞かせますが、賢治は音楽の素養があるので、文章を声に出して読んだ時の効果を考えたのかもしれません。多趣味でセンスが良い人だったんでしょう。
そんな賢治の一番の理解者は妹のトシで、愛情深い父親、そして家族が支え続けたのが分かりました。
俳優の演技は良いですが、演出はくどくて好みではありません。妙にコメディだったり、妻が夫に敬語を使う家庭で孫娘が祖父をビンタしてハグしたり、風の又三郎だからと原稿を飛ばしたり、謎演出です。ちょっとぶつ切りで、賢治の人物像が捉えどころのないものとなりました。金持ちのボンボンらしく、おっとりして気前は良く、気まぐれだがこだわりは強いようには見えますが、考えている事が分かりにくかったです。父親も、そういう所は理解できなかったのかもしれません。それでも息子の作品を愛して、世に出す為に尽力しました。無償の愛です。でも、賢治の凄さをもう少し伝えてくれないと、ただの親バカの話になってしまいます。
トシが本当に「お兄ちゃん」と呼んだのかもしれませんが、私の母(宮城県北部出身)は、「あんちゃん」と言ってます。イントネーションは、後ろが上がります。音階にすると、1オクターブ下の「ソ(あん)シ♭(ちゃん)」位です(←適当です)
私はいきものがかりは好きな方ですが、本作のテーマ曲は可愛らしすぎて合ってないと思います。
森七菜さんの透明な声で「見上げてごらん夜の星を」のような歌を歌ってもらった方が良かった気がします。
泣けました。
宮沢賢治さんのことは、詳しくは知らないけど、
何となく面白そうと思い観賞。
菅田くんが演じた賢治には、
いろんな苦悩や葛藤があったんですね。
観賞後、パンフレットを読んで、知ったのですが
男性に想いを寄せて、失恋していたとのこと。
あの場面はそういうことだったのかと理解しました。
役所さん演じる父親は、本当にチャーミングでした。
愛情深いお父さんがいなければ、宮沢賢治が世に広く知られることも
無かったんですね。
賢治が亡くなる時の、役所さんの演技には
泣かされました。
「雨にも負けず…」の意味が心に刺さりました。
子が親より先に死んでしまうって、
本当に辛いことです。
ちょっと笑えて、泣けて、
全体的に良かったのですが…
正直な感想は「悪くない作品」って感じです。
悪くはないがちょいと残念
井上ひさしの『イーハトーボの劇列車』を観ている身からすると物足りない。
父親が主人公である事はわかる。
しかし親子の対立なら演劇の方の日蓮宗と浄土真宗で極楽が何処にあるかの問答で、日蓮上人の教えに従うなら、宮沢家を、花巻、仙台をユートピアにする事が本筋でないかと説教する話のが面白い。
更に演劇では賢治を花巻に戻す最終手段もして…
映像は悪くない。
逆に昔の商家の間取りや田園風景等は面白い。
役所の演技も悪くないと思う。
しかし演劇で観た様な、偉大なる木偶の坊としての突き刺さる言葉、会話が思い返せないのだ。
宮沢賢治自身の物語ではないかも知れない。
しかし最後の『雨にも負けず』の詩に結びつき、家族への気づきに繋げてほしかった。
あと世情の変化と共に賢治への評価の変化と共に家族の思い等も描いて欲しかった。
【”あの家族ありて、宮沢賢治ありき。”それまでの宮沢賢治像を粉砕した父の”駄目息子だが愛せずには居られない。”という想いが尊い。そして、妹トシを演じた森七菜さんの畢生の演技が輝く作品でもある。】
ー 序盤は、私が勝手に思っていた”聖人”宮沢賢治の姿とは違う、我儘で生きる道の定まらない賢治の姿にやや違和感及び新鮮な想いを覚えながら鑑賞。
因みに原作は未読である。-
◆感想
・前半は賢治(菅田将暉)の妹トシを演じた森七菜さんの演技に驚く。
ー 何時からこんなに凄い女優さんになったの!田中泯さん演じる厳格な祖父が認知症になり暴れた時に、”綺麗に死ね!”と言ってビンタを張るシーンには参りました。
更に彼の有名な”永訣の朝”の死の間際のトシを演じるシーンも参りました。
”うまれでくるたてうまれてくるたて/こんどはこたにわりやのごとばかりで/くるしまなあよにうまれてくる”という原作の言葉をトシが実際に伝えるシーン。
賢治が記した”永訣の朝”を換骨脱胎した最良の形ではないだろうか。
トシが居たから宮沢賢治は詩人になり、更に”日本のアンデルセン”になった事が分かるのである。-
・賢治が生まれた時からの父(役所広司)の溺愛振りは男親として良く分かるが、終生、嫌、賢治が死んでからも賢治全集を出版した父の息子への想いは素直に頭が下がる。
■やや違和感を感じたシーン、だが。
・賢治が日蓮宗に傾倒し、浄土真宗を信じる父に対し反発する故か、法蓮華経を狂ったように口にしながら、白装束で団扇太鼓を叩くシーン。
実際に賢治は日蓮宗に傾倒していたそうだが・・。
狂的感じがして、作風から浮いていた気がするのである。
あのシーンは賢治の不器用だが、ひたむきな性格が表れたシーンであるとも思う。
■賢治臨終のシーン
ー 名優、役所広司の演技が炸裂する、涙零れるシーンである。
彼の有名な”雨ニモマケズ”を賢治が患った際に、父が賢治が籠っていた祖父の家で見つけ、蝋燭の僅かな明かりで、驚きの表情で読む姿と発した言葉。
”良い詩だ、賢治”
からの、”雨ニモマケズ”を涙しながら大きな声で臨終間際の賢治に聞かせるシーン。
そして、賢治は僅かに目を開いて”初めて褒められたじゃ・・。”と呟くのである。
<今作は今や、世界の宮沢賢治を、父を筆頭にした家族の視点で描いた作品である。
そして、今の世間が認める宮沢賢治があるのは、彼を愛した彼の家族がいたからだという事に気付かされるのである。
更に言えば、役所広司、森七菜(今作の”MIP”だと、私は思う。)、菅田将暉、坂井真紀、田中泯という俳優陣達の演技の凄さにも改めて敬服した作品でもある。>
■追記 <2023年5月11日>
・当初、評点を3.5にしていたが、俳優陣の演技及び今までにない賢治像を見せてくれた事を鑑み、4.0に変更させて頂く。
理由は、今作鑑賞後、宮沢賢治の幾つかの作品(”よだかの星””ビジテリアン大祭”)を読み返した時に、今作が言わんとしている事が腑に落ちたからである。
父の深い愛 〜 俺は修羅になる
人生に悩む息子宮沢賢治を心配しながらも寄り添い穏やかな眼差しで見守り続けた父政次郎を、役所広司さんが時にコミカルに魅力的に演じる。
苦悩しながらも活き活きと瞳を輝かせ実直に生きた宮沢賢治を菅田将暉さんが熱演。日本アカデミー賞助演男優賞なるか…。
賢治の妹トシを演じた森七菜さん( 未だ21歳とは驚き! 👀 )の熱演に涙。
田中泯さんの存在感、坂井真紀さんの柔らかな物腰に魅せられた。
ひたむきで実直な言葉で綴られた数々の作品の誕生は、宮沢賢治の生き方を尊重した父親と温かく見守り続けた家族の支え故なのですね。
美しく穏やかなラストシーンは、宮沢賢治の世界観そのものでした。
是非映画館で。
映画館での鑑賞
原作は気にならない
原作が好きで何度も読み返していたので、とても楽しみだった。父親像と役所広司さんは、私のイメージとピッタリ。小学校に上がったばかりの賢治の入院のときに政次郎がかけつけるところから、親の愛はこれ程かと泣けた。役所さんはさすがの演技力だった。田中みんさんも貫禄がある。だが、当時の家父長制度の描きかたが弱いので、当主が病人の世話はしない、とか進学も含めてすべて当主の許しのもとに決まる、名家でも商家では小学校どまりの学歴だというところがわかりにくいだろう。食事のときの座り順などは、もっと原作に忠実なほうが、というか時代的な厳格ざがあるほうがよかった。喜助の晩年の老醜をトシがいさめるところは、原作のように祖父をたてた描きかたをしたほうがよかったのではないかと思う。祖父をビンタするのはやり過ぎだし、綺麗に死ねは、直に言ってしまっては台無しだ。賢治が傾倒する国柱会は、日蓮宗系の新興宗教だ、そこをちゃんと描かないと日蓮宗がヤバイ宗教になってしまう。監督も、それはほど若いわけではないから、時代と地域の研究と解釈がたりないのかと思う。
菅田将暉さんの演技力と役所広司さんの演技力の織り成す作品はすばらしいものがある。全体に言えば、原作と違うディテールもさほど気にならない。これはこれでよい映画だと思う。役所広司さんがじつによいキャスティングだ。
まっこと、ありがとがんした。
原作読もう
宮沢賢治が好きなので観た。原作小説は読んでない。
非常に良かった。賢治がどういう人だったのか、今まではぼんやり聖人(せいじん)みたいな、あるいは朴念仁みたいな浮世離れしたイメージだったのだが、この映画で地に足のついた人物として想像できるようになった。
立派な偉人というよりは、純粋で理想主義者だけど現実が見えてなくて家族を振り回してしまう困った人って感じ。
お金持ちの家に生まれたこと、妹のトシとの関係、本が全然売れなかったこと、日蓮宗に傾倒したこと、農民に土壌改良の講義をしていたことなど、バラバラに知っていた賢治についてのエピソードが全部つながって理解できたのが気持ち良い。
少しだけひっかかったのは、日蓮信仰の描き方。この映画だと賢治は単なるヤバイ宗教にはまったみたいな感じに見えてしまうけど、ちょっと扱いが雑じゃないか。
映画だとどうしてもドラマチックに演出しなければならないので、リアリティを損ねてしまうところがあると思うし、ディティールが省かれたところも多いと思う。
たぶん、原作は映画の10倍は面白いんじゃないかと思う。
原作読もう…。
あと、エンドロールのいきものがかりの歌は映画に全然あってなくて、ええ~、って思った。「ジョバンニの島」で「星めぐりの歌」のアレンジバージョンがエンドロールで流れていたけど、ああいう感じになってたら良かったな。
役所広司の父親像
今月、花巻に行く計画で良いタイミングだった。
この作品、評価は役所広司の好き嫌いかな。最近の役所さん、どうも重い感じで苦手。この作品は割りとあっさりして頷いていたけど、クライマックスでやってくれましたね。臨終間際で「雨にも負けず」は、感動的だけどやや引く感じも。お題の通り、主役は父親だし、温かく賢治を見守る姿は共感もあるけどね。
菅田将暉は良いねえ。この作品で賢治役の立ち位置を分かって、一歩引いたやや控え目な演技が光る。裕福な家庭に生まれ、だからこそ贅沢にも葛藤し続ける賢治の苦悩かなあ。
実は父親だけでなく、賢治を中心にした家族の物語。祖父、両親、弟妹たち宮沢家の歴史。核家族で失った家族の温もりが羨ましいところも。見終わると優しくなれる気がする。
大事な子を失うオヤジの物語。
家業(質屋)継げと言うオヤジ政次郎(役所広司)と家業は継がないと言う賢治(菅田将暉)、家族交えての話。
妹のトシ(森七菜)の結核の看病に何かないかと書いてあげた詩、それがきっかけで賢治が詩人になるが、後に賢治自身まで結核に。大事な息子と娘を看取るオヤジのストーリー。
オヤジに質屋を継げと言われるが継がない賢治、始めた仕事は人工宝石の製造と宗教、うまくいかず・・。
後に妹のトシが血を吐いて倒れたと賢治に連絡行く、見舞いに何かないかと考えたのは自身で考えた「詩」。
商店で用紙を買い、詩を書いてから実家トシのところへ。結核で倒れたトシを元気づけようと書いた詩を読んであげるんだけど、それを聞くトシが悲しげ、楽しそうに聞く姿を見て本を書く事を始める。
途中、「南無妙法蓮華経」と太鼓を持って狂ったように唱える賢治、特に2回目のシーンではトシが亡くなった直後ってのもあって、泣いてる観客多数なんだけど、私は逆にツボで「志村けんの三連太鼓を持っての、だいじょぶだぁ~うぇ、うぉ、うぁ」の姿にしか見えなくて笑ってしまった(笑)
私個人的に涙が出たのは、政次郎と賢治のシーンでセリフはちょっと違うかもだけど「子供を生まない代わりに本を生んだ」「本はワシの孫だ、孫だからオマエの本を好きなんじゃ」とラストの本を読んでからの列車の中のシーン、ラストのラスト政次郎の「ありがとがんした」が泣けた。
ホントのラストで泣かすのやめて!劇場出れなくなるから!(笑)
ラストにホント菅田将暉好きだわー!!
役所広司に負けない菅田将暉の画力凄いわ!
素敵!最高!!
タイトルなし(ネタバレ)
役所さん、菅田君とあらば見に行かずにはおれません。期待通りの熱演です。
原作未読でもタイトルからしておよその展開は読めます。そこをどう料理されてるのか興味がありました。
一言で言うと
父親の、長男である賢治に対する思い入れと期待、不協和から受容へと変化する物語です。
賢治の創作には妹の存在が大きなきっかけとしてあり、農業に従事し農民と汗水流したことも人生観に大きな影響を与えています。
父親の物語であると同時に、やはり賢治の心理推移も必要なためW主演みたいな感じでした。
役所広司◎ 日本の宝です。詩の朗読で泣けます。(もっと老けていってもよかった)
菅田将暉ま◎ 賢治本人の映画でも一本成り立ちそう。鬼気迫る憑依型演技。(賢治の学生生活のシーンを入れてほしかった)
森七菜◎’ セリフに声が乗っている。「きれいに死ね!」にびっくり&納得。
田中泯◎ もっと賢治に影響を与えるのかと思いきや...。短い見せ場で熱演。
坂井真紀◎ 最後のシーンでもってかれました。クレジットまで誰かわからず。(服装、髪が綺麗すぎる)
蛇足ですが、すべての役者さん共通。鞄をもっと重そうに持ってほしいです。軽々とされるとリアリティーが急に消える。
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