劇場公開日 2023年5月5日

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銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価

全159件中、81~100件目を表示

3.5「宮沢賢治の父」である必要がない

2023年5月12日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

非常に期待していた作品なのに、少々残念な出来であった。
・俳優陣の演技は素晴らしい。
・時代考証、風俗考証がしっかりしていて映画の世界にスムーズに没入出来る。
・逆光やハレーションを効果的に使ったカメラワークも賢治の世界をイメージさせる表現で非常に良かった。

これだけ良いところが多いのに仕上がりが今ひとつだったのは、肝心の「宮沢賢治」という人物の掘り下げが浅いからだと思う。だから、ただの「破天荒な息子をもった親バカな父親の深い愛情と家族愛」で終わっている。
これなら、どこぞの破天荒息子でも変わらない。宮沢賢治である必要がまったく無いのだ。

賢治の人生史について詳しい観客はそう多くはないだろう。何か縁があって研究やら勉強やらでもしない限りは普通あまり知らないはずだ。

私はたまたま仕事と趣味を兼ねて研究した事があるので、「賢治の父を掘り下げる」という斬新かつ秀逸な観点には非常に驚いた。
「あの賢治を積極的に支えていたならば、そこには大変なドラマがあっただろう」と、本作は非常に楽しみにしていた。
涙腺崩壊に違いない!と、幕間のうちからしっかりハンカチを握りしめ準備して鑑賞に望んだ。けれども、まったく泣けなかったのだ。
特に、余計なフィクション演出の場面ほど、非常に鼻についてしまった。

・「雨ニモマケズ」から始まる書きつけは賢治の死後に発見されたものであり、亡くなる時に父が読み上げるはずがない。実際、詩かどうかすらわからないシロモノだ。(褒められたのは、亡くなる日の朝、父に「国訳の妙法蓮華経を一千部作ってください」と語った件についてだ)

・父、政次郎は私財を投じて仏教会(浄土真宗)を主催し、地域の民生・調停委員として800件以上もの紛争を解決に導いた人物。
賢治は大乗仏教である妙法蓮華経に激しい感銘を受け、父を折伏しようとしばしば大口論を繰り広げたが、映画のような奇行はしていない。
トシの葬儀は浄土真宗だった為に参列せず、出棺時に現れて棺を担ぎ、遺骨の半分を国柱会本部に収めた。

・短歌や短編を書き出したのは、トシの結核がきっかけではなく、盛岡高等農林学校(現・岩手大学)在校時にすでに同人誌発行したり家族に朗読したりしている。

・先祖代々(と言っても祖父の祖父から)続いた家業は呉服屋。質屋は分家としてほとんど相続が無かった祖父が始めたもので実質的には古着屋メイン。金貸しというよりユーズドショップだった。

上記部分を脚色するのもわからないでもないが、何もこんな演出をせずとも賢治の人生に深掘りすべき箇所は山ほどある。
特に羅須地人協会の3年間だ。

・6年間勤めた農学校教諭の職を捨て「本物の百姓」になろうとする。しかし、年長の農民達からは金持ちの道楽と見做され野菜をすべて盗まれるなどの嫌がらせも頻繁だった。

・3日間だけ東京へ出向いてチェロの特訓をし、知人楽団員達と羅須地人協会にて演奏会をしようとしたが、上手くいかず中止に。(この時、演奏のお詫びに作って聞かせた童話が「セロ弾きのゴーシュ」の原型)

・徹底した菜食、農民達同様に栄養失調を招くレベルの粗食を貫く。
肺炎が悪化しても「生き物の命を取るくらいなら死んだほうがいい」と言って、卵や牛乳すら拒否した。

羅須地人協会の日々で賢治は「個人の限界を嫌というほど思い知らされ、のちに己を客観的に俯瞰した反省と苦渋をしたためている。
この辺りをもっと丁寧に映像化するだけでも「宮沢賢治の父」をする事がいかに大変な偉業であったか描き出せるはずだ。
それを中途半端なカット程度に挿入しているから羅須地人協会時代のエピソードを知らない鑑賞者から見れば「話の筋脈から考えて不要なシーン」と見做されてしまうだろう。

また、賢治の名誉の為に正しておきたい点もいくつか。
・自費出版本がまったく売れなかったのは「価格」によるところが大きい。
表紙や装丁に非常にこだわった為に、現代に換算すると「春と修羅」は1万円、「注文の多い料理店」は6400円くらいだったのだ。いくら書評が良くとも無名新人作家の詩集や童話集をこの高額で買う物好きはいないだろう。
(注文の多い料理店はタイトルから「経営指南書」だと勘違いされがちだったし)

・学業成績は決して悪くはなく、小学校では全科目甲(オールA)
旧制中学では進学出来ない将来を悲観して成績が落ち込んだが、政次郎のおかげで祖父を説得し進学を許されたあとは実力を発揮。
旧制高校は主席で入学。入学式総代を務め、2年次からは授業料免除の特待生に選ばれている。

・本は売れずとも生前から文壇で評価され、作家の知人も多かった。
死後に多数の遺稿を出版したのは父ではなく草野新平達の尽力によるもの。

以上、ごく簡単に目立った話だけ書いてみたが、これだけでも賢治は非常にこだわりの強い、なかなか大変な人物だとわかるだろう。
勘当同然ならいざ知らず、愛情深く支えたならば「賢治の父」は本当に大変だったと思うし、ドラマティックなエピソードも山ほどあるのだ。

「宮沢賢治」「雨ニモマケズ」という2大ブランドをちらつかせて、なんとなくわかったような気分にさせるのではなく「宮沢賢治」を深掘りして、そこから「父の苦悩と深い愛情」を描きだして欲しかった。

あまりに不完全燃焼だったので、勢いで観る予定のなかった「聖闘士星矢」をハシゴ鑑賞してしまったのは内緒であるw

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pipi

3.5役所広司最高!

2023年5月11日
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役所広司の存在感がハンパないです。
息子を愛する父親の気持ちがもの凄く伝わってきます。
また、娘のトシもところどころ存在感を出してました。
反面、菅田将暉演じる宮沢賢治の存在感がないのが少し残念でした。宮沢賢治の人柄なのか?ずっと単調な喋りで感情の起伏がない感じです。
個人的には、妹のトシが結核に感染して療養してる時に宮沢賢治が小説を読み聞かせしているシーンはもっと時間をとっても良かったのではないかと思います。逆に宗教団体に加入に行くシーンとかは、ほぼなくてもよかったような?
役所さんが1人で引っ張ってる感じがある映画でした。

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ともちゃん

4.0菅田君上手い

2023年5月11日
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宮沢賢治。横顔を教科書で拝見してましたが
こんな壮絶な家族背景があったとは。。。。

アンデルセンに匹敵する作家です!!

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Billy

4.0リアルな感じの賢治像

2023年5月11日
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宮澤賢治も大変だったんだなと
リアルさが伝わってくる感じでした。
原作未読ですが、
成績のことなど 映画では
事実と異なるのかな?と感じるような点が
気になりました。
後半の賢治の活動内容など
父のナレーションを入れるなどして
わかりやすくしてもらえたらなとも感じました。

妹トシや、父と息子のおおまかな関係性などは
よく伝わってきて
賢治も大変だったし
お父さんも一生懸命育ててくれたんだなと
感じました。

内容的にはリアルな内容だけに
悲しい部分も大きく
嗚咽レベルで泣きましたし
結構後まで引きずりました😢
最後のシーンの演出と
エンディングの曲はちょっとかなり
違和感ありました😅

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チャッピー

3.5親ばがだな、おどうさんは

2023年5月11日
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鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

幸せ

じゃじゃじゃ宮澤賢治の父、政五郎にスポットを当てた物語。

賢治自身の作品はやり尽くされた感はあるが、父親視点というのも面白い。
賢治はむしろ死後に評価された作家であり、そのようになったのもこの父や弟の奔走があったからだと思うのだが、そこが語られないのが惜しい。
どうせなら、政五郎の死までやってもよかったかと思う。
「賢治」の名付け親は本当は叔父だったり、病身の賢治を看病して自分も感染することは度々あったり、宗教問題、「雨ニモマケズ」の時期など多少改変しているところもあるが、まぁ許容範囲。

時間の経過(展開)が早いので「○年後」「〇〇年」の表記をもっと増やしてもよかったかと。

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YOU

2.0私にはわからない映画

2023年5月10日
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誘われて観た映画で、文学の世界とか、よくわからないし、宮沢賢治もらあまり読んだことがないので、わたしにとっては、つまらない映画だった。好きな人には凄くいい映画なんだと思う。俳優さん達は、素晴らしい演技だし。世界観はいいのだろうけど、ゆっくりと落ち着いた感じの流れだけど、一生を描いてるので、なんかひとつひとつに感情移入ができなかった。
詳しい人とかには、わかるんだろうけど。

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どん

4.0宮沢賢治を識りたくて見る。役所と七菜ちゃんは良かったけど、菅田将暉...

2023年5月10日
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鑑賞方法:映画館

宮沢賢治を識りたくて見る。役所と七菜ちゃんは良かったけど、菅田将暉は、別の賢治が見たかったし。のそっとした感じの。
永訣の朝の詩は好きだったので泣いた。
メソメソしたシーンが長すぎて退屈した。
方言が良かった。

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えみり

3.0あのお父さんが本当に凄いのは、 宮沢賢治の死後なんじゃないの? ま...

2023年5月10日
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あのお父さんが本当に凄いのは、

宮沢賢治の死後なんじゃないの?

まさかその後がないとは思わなかった。

思わせぶりなタイトルだけに、とても残念!

原作は知らないけど、

原作自体がそこで終わってるとかなの?

もしタイトル違っててストーリー的に納得できたとしても、

でもちょっと物足りない感じが拭えない作品だった。

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jung

3.0STAR

2023年5月10日
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宮沢賢治が死後に有名なったという話は歴史の授業なんかで習っていましたが、作品自体は知っていても、生涯に関してはざっくりとしか知らないなと思い鑑賞。

まぁ泣かせにはくるよなぁといった感じで、そこが見え見えだったところで少し冷めてしまいましたが、役者陣の熱演は光りまくりでした。

宮沢賢治の父として、宮沢賢治の家族として、彼の功績を残すために奔走した後の物語の方が気になったかなぁというのが最終的な感想でした。体調のコンディションがすこぶる良い時にまた観に行こうかなと思います。

鑑賞日 5/8
鑑賞時間 15:20〜17:35
座席 K-2

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ブレミン

3.0本当に

2023年5月10日
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宮沢賢治は本当にこんなどっちつかずなフワフワとした存在だったのでしょうか?晩年は信念を持った感じが逆に凄いですが。親子間、兄妹間の愛情がもの凄いですね。

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ごっとん

3.0宮澤家の家族愛

2023年5月9日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

宮沢賢治は銀河鉄道の夜❔とテストの為に覚えたくらいしかないない中での観賞
ピカソみたいに生前に有名になれなかったんだ〰️てのが感想
家業が質屋→金物屋というのも以外
内容は、別に宮沢賢治でなくても有るかな〰️のシチュレーション

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ろくさん

3.5知ってるようで全然知らなかった

2023年5月9日
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注文の多い料理店が好きでした。宮澤賢治が世間に知られたのは亡くなってからだったんですねー。昔の岩手の風景がすてきだったのと、人の一生て儚いなあと思った全体的には良い話でしたが、欲を言えばお父さんと宮澤賢治の子供の頃の関わりをもっと知りたかったかなあ。あっという間に大きくなってしまったので。

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ふさ

4.5雨にも負けず、風にも負けず、

2023年5月9日
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鑑賞方法:映画館

この詩が書けるには、やっぱり理由がある。
その時々の時代に合った生き方を尊重できた、親の懐の深さ…
子育て後半の私も真似るべきところだらけでした。

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jiemom

3.0親の愛

2023年5月9日
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子の死を看取る親の視点だから、悲しくも、親の愛を最大限に描いていました。

実話ベースにエンタメにした小説の、さらに映画化ということで、史実とは異なる終わり方をしていました。
実際は、賢治の死後に詩人の草野心平ら文学同人メンバーの努力によって、賢治の名と作品は世に広く知られることになったはずだから。
(どうなってるかは映画をこれから観る人に配慮して書きませんが)
その草野心平の同人誌に参加したり、農学校で学び直し教鞭を取って収入を得たりなどの部分をカットしちゃって、なんで「今の時代に至り賢治が一般に普及するほど評価されたの?」ってのが、わかんない構成になっちゃっているのがまず不満。

そして、自分が調べて知ったことから持ってたイメージとの乖離のせいなので、作品が悪いというわけでもないかもしれないのですが……
死に瀕したあたりの賢治を物分かりよく、悟った感じで描いて美化しすぎ、文学者たる彼の「狂気」という本質を逃しているような気までして。

さらに妙に長回しだったり、顔への寄りが多くアップばかりなのに手持ちカメラで画面が揺れたりが気になって、画面に集中していると妙に目が疲れるし。

役所広司がいい役者だなぁ、と思って終わり。

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コージィ日本犬

4.0両親の、子どもたちに対する愛情と、賢治のキラキラした純粋な瞳が、印...

2023年5月9日
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両親の、子どもたちに対する愛情と、賢治のキラキラした純粋な瞳が、印象に残った。
世の中には、他人を傷付ける人もいる一方で、賢治たち家族のように深い愛情を持てる人もいるけれど、その違いは何か。
賢治のように、人から愛情を受けることで、他人に対しても愛情を持って接することができるのではないか。
そうであれば、より多くの人が、他人に親切にすることで、世の中は良くなるのではないかと思う。
ただ、善人を騙す人もいるから難しい。
宮澤賢治の物語が、読み聞かせると分かりやすく、楽しく聞こえるのは、読み聞かせるために作られたからなのかもしれないと思った。

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由由

4.0よい映画だと思ったけど、賢治の修羅が見たかった。

2023年5月9日
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宮沢賢治と言えば、父親との間に確執を抱えていたと本で読んだことがある。

映画にも出てきたように、父は浄土真宗、賢治は日蓮宗。

それが確執の一因であるという評論。

しかし、この映画を観る限りでは、その評論がなにかの間違いではないかと思わせるほど、父と賢治の間に家族愛が溢れていることが伺える。

事実どうだったかということは分からないが、愛情深い父親に育てられたように描かれている。

また父親との間だけではない、途中で亡くなった賢治の祖父や妹、それに母との間にも深い確かな絆がある。

宮沢賢治は『春と修羅』という詩において、

「四月の気層のひかりの底をつばきし歯軋り行き来する俺はひとりの修羅なのだ」

と語っており、私は賢治が苦悩いっぱいの人生を送った人間かのように勘違いしていたのかもしれない。

それともこの映画がそうした賢治の闇の一面をあえて描かなかったのか。

作中に「このままでは私は修羅に堕ちる」と賢治が父親に言うシーンがあったけれど、この映画の心温まるような家族愛のなかでは、その言葉の真意は読み取れない。

全体を通して、自分の人生について考えさせられたし、よい映画だと思ったけれど、一つ欲を言うなら、修羅について語る賢治のその修羅というものがなんだったのか見てみたかった。

全体としては、家族愛の溢れた心温まるよい映画だった。

あと、雪の降る情景が綺麗だった。

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TW

4.0面白くならないはずがない、のにならない

2023年5月8日
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直木賞受賞作の原作。
主役が安定の、というか安定すぎる絶対間違いのない役所広司と菅田将暉。加えてお母さん役が板についてきた坂井真紀。若手実力派の森七菜とベテランの田中泯。
面白くならないはずがない、のにならない。
ワクワクしない。

セット、衣装、美術、ロケーション、演者、どこを切り取っても絵になる。見事な映像。なのに、

見せ場になると邪魔をしてくる、朝の連続テレビ小説のような音楽と、寄ったり揺れたり転けたりと目が回りそうなカメラワーク。

感動はする。子を思う親の心。子を失う親の悲しさ。

期待以上でも以下でもない。
ワクワクしない。

東宝でも東映でも松竹でもない木下グループの製作。
ヒットしてほしいけど、公開三日目にして観客2人。
とても残念だけど、主演の2人以外に魅かれるものがないから仕方ないのかな。

今作に限らず、若い人や普段映画を観ない人たちを映画館まで引っ張ってくるような魅力のある作品が少ないように思う。
平日の映画館はシニア料金の年寄りばかり。

教授が亡くなって思い出したけど、「戦場のメリークリスマス」が公開された時なんて本当にワクワクした。
大島渚がメガホンとった日英合作、戦争映画、デビッド・ボウイと坂本龍一とビートたけし(まだ世界の北野じゃなかった)が主演。どんなものが見れるんだろうと公開が待ち遠しくて仕方なかったな。古い話でごめんなさい。
ああいった思いをすることがなくなったのは年をとったからなのかな。

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大吉

4.0親でありすぎる!

2023年5月8日
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泣ける

「銀河鉄道の夜」等の著作で名高い、宮澤賢治の父・政次郎を主人公とした作品であるが、それと同時に、宮澤賢治の一生をも描いている。宮澤賢治自身の人生についてはなんとなく聞き覚えがあったし、それこそ「銀河鉄道の夜」などは子どもの頃に読んだ記憶があるものの、政次郎がどのような人物であったのかという予備知識は全くないまま作品を鑑賞した。

一言でいえば「親バカ」である。そのことはことは作中でも語られている。さらには「親でありすぎる」という(祖父・喜助の談)名言(?)まで飛び出す。「イクメン」というのは現代用語だが、母親が家を守りながら子育てをするのが当然であった時代においては、とかく異質な存在として描かれたことは確かである。賢治は亡くなるまでひたすらに政次郎の愛情に支えられた。親子関係は一筋縄ではいかないこともあったが、賢治の存在を誰よりも肯定したのは政次郎であった。

作品のカギを握るもう一人の人物は、賢治の妹・ヨシである。キーパソンであるがゆえに、やや強引にストーリーの中にねじ込まれたような感じも否めないが、賢治が子どもの頃に書いた物語作品を最も愛し、その才能を誰よりも感じていた読者である。彼女の存在を措いて宮澤賢治の文学作品は決して誕生しなかったであろう。

この物語は、政次郎の物語であると同時に、賢治の物語でもある。ネタバレとなるのであまり書けないが、宮澤賢治という名が世に知れ渡る以前から描かれているので、ぜひ彼の人生を知るきっかけとして鑑賞していただきたい。

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Kohei

宮澤家のホームドラマ。 映画とは全く関係ないが、僕は雨にも風にも負ける。

2023年5月8日
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映画のタイトルどおり宮沢賢治の父政次郎の物語。NHKの朝の連ドラの感じで、宮澤家のホームドラマ。役所広司さんの演技には引き込まれてしまう。人に歴史有りだから、質屋のオヤジの人生にもイロイロあるが、ドラマチックではない。

息子の賢治はビッグネームだから、こちらのエピソードのほうがやはり気になる。生前は売れなかったのは初めて知った。

映画で妹トシが結核だと知ったときは、見ていて暗い気持ちになった。あの時代の結核は不治の病だ。映画を見たあと結核を検索したら、結核は昔の病気ではなく現代の病気でもあると知り驚いた。

全てが事実というわけではなく、映画的な演出もあると思うが、観賞後はしみじみとした良い映画を見たと思える満足感があった。

私は「雪渡り」が1番好きで、お気に入りのフレーズは「狐なんてうまくやってるネ」。 たまに頭の中でブツブツつぶやく。2番目は詩みたいな童話 「やまなし」で、なんかクラムボンとか出てきて何じゃコリャみたいな話でお気に入り。

2023/5/7(日) A

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マサヒロ

2.5ごめんなさい泣けませんでした。

2023年5月8日
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原作は未読であるが、直木賞をとった作品だと言うし、出演者も名だたる俳優さん揃い。
宮沢賢治の作品をいくつも読んだ私は、当然、期待値があがる。
映像は綺麗だなと思った。
話が断片的すぎる。実話エピソードの短編映像を繋げました感。
父親目線の宮沢賢治の生涯だからか、とにかく、話が淡々と進む。
そして、「はい、ここは笑うところ」「はい、ここは泣き所ね」と押し付けられる感が半端ない。
役所広司さん、名演なのに、活かしきれてない。この話なら、役所広司さんではなく、お医者さん役の益岡徹さんの方が、賢治の父の雰囲気ある気がする。
菅田将暉さんは、素敵過ぎて、眼がキラキラしていて、純粋そのものと言った感じで、宮沢賢治の文章から感じるシニカルさが全く感じとれない。(賢治の卑屈さ加減は重要ではないか?)
宮沢賢治の作品は、いくつもあるのに、有名な(学校で習う)作品を使いましたって感じ。だから、余計に宮沢賢治のシニカルさが伝わらない。
エンディング曲は、劇中の菅田将暉さんの「星めぐりの歌」からオーケストラの「新世界より」に流れた方が、銀河鉄道の夜風味のエンディングの雰囲気を壊さなかったのではないか?
いきものがかりは嫌いじゃないが、余韻にひたれる感じではない。(いきものがかりは恋愛映画向けな気がする。)
申し訳ないが、登場人物の誰にも感情移入出来ず、1ミリも感動しなかった。

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早川 歩