銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価
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親より先に死んではいかん
宮澤賢治は手のかかる子だった。幼いときは病気がちで、成長してからは、怪しげな商品開発や宗教にのめり込む。純粋だったと言えば聞こえはいいが、社会生活不適応者に近かったのかもしれない。
実家が裕福であるということは、文学や芸術を志す人にとってものすごくアドバンテージになるような気もする。むろん、だからといって賢治が紡ぎ出した物語や詩の輝きが損なわれるわけではないけれども。お金がないことで芽吹くことのなかった才能が、巷には溢れているのだろう。
賢治の父政次郎の子煩悩ぶりが痛々しい。それは、二人のわが子に先立たれることを、観客が先だって知っているからかも知れない。
死の床にある賢治のノートから「雨ニモマケズ」の詩を発見して、賢治がどんな生き方をしたかったのか理解し、それを賢治に伝える場面は圧巻だった。
もうひとつ印象に残る場面がある。
認知症を患い暴れる喜助(賢治の祖父)に、妹トシが平手打ちを食らわせて「きれいに死ね!」と叱りつける場面。
喜助は当時としては珍しくあまり信心をしない人だったそうで、それをたしなめる手紙をトシが書いているそうだ。もしかすると、そのことをふまえて演出されたエピソードなのかも。
ラストシーンはファンタジックだった。詳しくは書かないが、先立った娘と息子に、父が感謝を述べる。この「ありがとう」には、とても深い意味が込められていると思うのだ。
二人の子を亡くした父
明治•大正から昭和、結核という病気の恐ろしさに身震いした。
大事に大事に育てたわが子を二人も亡くしてしまう父と母。
父政次郎の子煩悩ぶりには驚く。
文明開花の明治の父だと祖父喜助に言い切る父政次郎。
祖父喜助もまた長男政次郎の誕生を喜んだ父だった。
賢治が赤痢に罹患した際には病院に泊まり込んで割烹着をつけて看病。自身はその後腸カタルに罹るぐらい弱るまで尽くしたのだろう。
質屋を営み裕福な暮らしで賢治の思うまま学校に通わせる。賢治のわがままに怒りつつも最後は折れて譲る父。
療養しているトシの元に行き母と交代してご飯を作ったり看病したりする父。
トシを見舞いに来た賢治が作品を読んで聞かせるとトシが喜ぶのを見て喜ぶ父。
トシの最期を迎える為家に帰る大八車を引く父の必死な姿。
アンデルセン童話に憧れる賢治とトシ。
賢治はもともと精神的に虚弱なのか。
人のために何ができるかずっと考えて来たが、と。
なぜか日蓮宗に傾倒。
詳しい入信理由が描かれていないのは、賢治の突然の思いつきか、実家の浄土真宗に対抗してか。
(『漢和対照妙法蓮華経』の『如来寿量品』を読んで感銘を受け、傾倒していったらしい。)
家出して国柱会館に。母親からの仕送りにも手をつけず。
トシ病気の電報受け取り実家に向かう途中、
原稿用紙を大量に買う。
別荘で療養するトシに風の又三郎を読んでやる。
銀河鉄道の夜も。トシ喜んで聞く。
実家に帰ったトシ、
トシ、虫の息の中、アメユジュトテチテケンジャ。
賢治は庭の雪を取って来てトシの口に含ませる。
トシの葬式。賢治、狂ったように日蓮宗を唱える。
大丈夫か、と聞く優しい父。
賢治の唯一の信奉者だったトシを失い、
何をする気も起こらない賢治に
父がトシの代わりになると言う。
春と修羅の永訣の朝、アメユジュトテチテケンジャ。
評判は良かったのに売れない。
買い占める父、賢治。
別荘にこもって本を書く決意をする。
農業をして農民にも地質学を教える。
羅須地人協会。
チェロも演奏。
結核発病。
賢治は父に、お父さんのようになりたかった。
と言う。子供の代わりに物語を生んだ、と。
ああ、だからワシは賢治が書く本が好きなのか、
孫だから。
昭和8年、病床に臥せる賢治に農民の客。
必死の思いで、話を聞く。
身売り、首くくる、などこの農民の窮状を理解できたか?
この客を迎えた賢治の家の様子とはあまりにかけ離れている。
父が身体を拭いてやろうとすると、
母が私の子だから私にも世話させてくれ、と。
身体を拭いてあげると気持ちよくなった賢治。
父、雨ニモマケズを叫ぶ‼️
昭和10年、全集出来上がる。
微々たる宮沢賢治さんファン。
雨ニモマケズを小6の時全文暗記した。
宮沢賢治さんの細かな背景を知らなかった。
財産家のボンボンとは思いもよらなかった。
貧しいながら色々多才だと思っていた。
よくよく考えれば詩や小説書いたりチェロ弾いたり、余裕ないとできないわけだ。
農業博士、天文学など知識豊富な面もあった。
人のために何かしたかった思いはあるのだろう。
トシ、アメユジュトテチテケンジャ、と
今際の際のトシが賢治に雪を取って来てと願い、
賢治が取って来てあげる様子が印象に残っている。
菅田将暉さんを観ていてよりもっと泥臭い雰囲気の俳優の方がふさわしく感じてしまった。
大変上手いのだが、どんな役もそれなりにこなす器用さが鼻についてしまう。
朴訥さが感じられないのかな。
本作そこがダメであった。
父と息子の物語、脚色されているかと思うが、
あんなに親バカな父と勝手気ままなボンボンのペアとは知らなかった。
人の内面を外からは計り知れないが、
あの息子にして数々の作品を生み出したか合点がいかないようでもあり、内面はまた違ったという思いもある。
ただただ、役所広司さんの演技には感嘆しかない。
記:
看護師ではなく看護婦だったこの時代、字幕マチマチ
大正3年盛岡中学校卒業、
質屋を悪徳と言う、
サウイフモノニワタシハナリタイ
宮沢賢治の人生を父親目線で見た作品。 純粋すぎてなんでも素直に信じ...
この配役をして何故こうなるのか
残念
宮沢賢治について
宮沢賢治についてはただ漠然と好きという感じ。
作品で読んだことがあるのは【注文の多い料理店】程度
あと、【雨にも負けず】この詩のせいや親などからの漠然とした話で偉人なんだと思っていた。童話が好きだから好き。偉人なので好きという感じで
すごい人としか見ていなかったのかも。
映画では家族から見た宮沢賢治。特に父親から見た息子の賢治人生が描かれていた。
親からしたら【かなり大変な子供】だったのだと。
偉人じゃなかったのか!?とちょっと衝撃。
映画は2時間にまとめられていたのでもっと詳しく知りたいと思い小説も購入し読んだ。久々に読書をさせてくれた映画。
役者の方、主人公は役所さん・菅田さんだし映画としてはほんと面白く、切なくよかった。
昔の世の中のノスタルジーもあったし。岩手の言葉もほのぼのとして感動した。
良い映画を見たと思いました。
特に親から見た賢治の最期の様子が克明に描かれていて、そこはさすがに泣けました。
やっぱり親より先に亡くなるのは悲しすぎます。
宮沢賢治の半生を描いた話でもあり。その真実が明らかになります
宮沢賢治の最後まで描いた話でもあるのと誰も知らなかった宮沢賢治の真実が明らかになりました!
役所 広司さんが演じている宮澤政次郎役は宮沢賢治の父でもあり。息子のように育ててきた人物でもあります。
菅田将暉の役は宮沢賢治の役で父の跡継ぎを頼まれていましたが自分自身の生きる原動力を探しに大学にも二回行きますが一回目は卒業するのですが。二回目は途中で中退するのですが。
そこから自分の人生を大きく変えたのが宮沢トシでした。宮沢トシの役は森 七菜です。やっぱり役作りが本当に素晴らしくて宮沢トシ役にぴったり合っていました。ちなみに宮沢トシは宮沢賢治をゆいつ変えた人物でもあり。小説を書くきっかけにもなった人物でもありました。
宮沢トシと宮沢賢治の二人が本当に支えて本当に大事にしている人物でもあり。
どんな時でもどんなに離れても二人はずっとそばにいる人でもありました。
そんな二人が本当に素晴らしく感動する人でもあります。
宮沢賢治はそれでも小説を書いて父に読ませながら生きる希望を無くさずに
宮沢トシが最後にすんでいた別荘で
畑を耕して育ててきた畑の教えを人々にも教えていきながら
小説を書いていましたが。
ある夜に自身が結核であることがわかり。
父は医者に治療方法があるかもしれないとずっと言いましたが
治療方法が無く
別荘に戻りましたが父が再び家に戻るように頼み
家に再び戻りました
ですが。病状は酷くなりますます意識がもうろうとしてるなかで
畑の教えを学んでた人を最後に話して
意識が失いました
意識がないなか最後に父が雨にも負けず風にも負けずを話
それを聴いた宮沢賢治は認めてくれたことにやっと理解して
息を引き取りました。
この映画に出会い出会えて本当に良かったし宮沢トシと宮沢賢治が本当に大事な人だともわかって良かったと思いました。
皆様も是非とも見てください!
宮沢賢治を産んだ家族の物語
アリガト、ガンシタ
父親がそして妹が、天才・宮沢賢治を見抜いていた。
親バカで、甘すぎるほど甘い父親、
子煩悩という言葉がこれ程当てはまる父親像。
でも親の眼鏡が曇っていたのではなくて、
本当に宮沢賢治は才能溢れる天才だった。
目利きの父親そして目利きの妹・・・だったでは?
と、そう思いました。
宮沢賢治の自伝を父親政次郎(役所広司)の目を通して描き
父親を描くことで宮沢賢治が浮かび上がる映画です。
何度も何度も泣きました。
父親(役所広司)が割烹着を着て赤痢の幼い息子を看病する姿。
妹トシ(森七菜)は、
兄・賢治(菅田将暉)の才能を愛し信じて、
「日本のアンデルセンになるんでしょ!!)
と励まし、父に兄の進学を進言する。
兄思いの優しさと凛々しさそして母性。
呆けた祖父(田中泯)を固く抱きしめて掛ける言葉。
トシは結核に伏せると兄・賢治が読み聞かせる童話を
感動して涙にむせび、そして喜ぶ。
トシの死後、書く意欲を失う賢治に政次郎は言う。
「今度は俺が読む、俺が読者になる」
なんとも美しい一家です。
この家族の心根の美しさを凝縮したのが宮沢賢治である。
そう思いました。
それにしても宮沢賢治の童話は素晴らしい。
「セロ弾きのゴーシュ」
町の楽団で下手なセロ(チェロ)弾きのゴーシュ。
練習する部屋に毎晩、
三毛猫、かっこう、狸の子、野ネズミの親子が、
現れて「学びたい、教えて!!」とせがむ。
すると、
遂にゴーシュは音楽会に大成功を収めて、
「印度の虎狩」をアルコールで弾くほど上達する。
「注文の多い料理店」
これはそのブラックさに子供心に驚き感心したものでした。
猟に来た紳士2人が道に迷い、とんでもない山奥に
実に立派な西洋料理店を見つけます。
注意書きには、
クリームを塗れ!!
塩をすり込め!!
それは何と彼らを食べるための、注文書きだった。
「風の又三郎」
ある日、村の学校に不思議な転校生がやってくる。
赤毛の口をキュッと結んだ男の子・三郎。
子供たちは好奇心に駆られる。
なんとも不思議な自分らとは違う男の子なのだ。
しかし子供らは三郎と仲良く遊び、三郎のススメで、
馬を野原に逃して大変な思いをしたり、
暴風雨の中、命からがらの冒険をする。
(男の子は風の神であった・・・
風が吹き抜けるような不思議な童話
なんともハイカラ!!
この映画で描く宮沢賢治像、
「父親の目からみると、死ぬまで庇護の必要だった」
「自活せず何者にも成れなかった、認められずに死んだ青年」
それは世間の目に映った姿
と言うよりも
どの角度から見るかによって違う・・・
のでしょう。
私には誰もが愛する「アメニモマケズ」を書いた国民詩人、
こんなに愛される詩がほかにあるだろうか?
聞けば必ず涙する。
父・政次郎が死の床の賢治に
大声で読み聞かせるシーンは、涙腺が決壊しました。
役所広司が上手い、素晴らしい。
今読んでも新しい童話を書き、
晴耕雨読の日々を生き、
農業指導に優れた指導力を発揮して、
理想主義を貫いた青年。
そう思えるのです。
それにしても、
トシの葬儀で、
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
を唱える宮沢家の宗派に対して、
南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経(なむみようほうれんげきょう)
と狂ったように唱える賢治。
お父さんは本当に大きい、実に大人物でした。
妹トシが賢治に果たした役割は多く語られているようですが、
父親も母親も妹も弟も実に麗しい一家。
風の又三郎に吹く風の描写があります。
どっど
どどうど
どどうど
どどう
賢治の文学は新しい。
独特の世界観。
そして勇気に満ちている。
没後ではあったが宮沢賢治が正当に評価されたのは嬉しい。
そう思います。
長男の義務
丸坊主になった菅田将暉の話題性で宣伝効果は半端ないのは当然だが個人的には長男というキーワードに食いついた。作品のテーマは長男の義務かな。長男として世に誕生したからには家業の跡継ぎ、所謂後継者としての義務を課せられる運命にある。そして結婚相手となる女性は長男と結婚した場合は長男の嫁としての義務を課せられる。だから女性は長男を避け次男を選ぶ。逆に長男は恋愛結婚を許されない場合があり跡継ぎに必要なスキルを兼ね備えた女性との見合い結婚を勧められる。これは昭和も令和も変わらない日本の世襲制度。菅田将暉が演じる宮沢賢治は宮沢家の跡取り息子として誕生した男子。後継者としての武者修行(会社の二代目のような帝王学とは異なる)のトシになるが宮沢賢治は跡継ぎを拒否し父親と大喧嘩。この長男あるあるは長男さんには他人事ではないだろうし長女や次男さんにも他人事ではないと思う。長男が跡継ぎを嫌がれば家業存続を願う長女や次男が長男に代わって後継者を志願し長男に代わって武者修行を志願する。
まぁまぁでした✨
私の誕生日は8月27日である。じつは、宮沢賢治生誕と同じ日。ウィキペディアによると、宮沢賢治は1896年〈明治29年〉8月27日生まれ。日本の詩人、童話作家、とある。
なので、賢治のことを知った小学生の頃から、私は彼を意識して生きて来た。教科書で見た彼の写真もどことなく、私の若いころの自画像を投影させる感じもあったし、勝手に自分で親近感を覚えたのである。もちろん、37歳でこの世を去った賢治とは比べるまでもなく、67歳まで生きて長らえて、賢治さんとはなにもかも全然、違うってことはわかっている。何事もなしえ得ない人生を過ごし、今に到るという、情けないものだと思うばかりである。
それはさておき、映画「銀河鉄道の父」を観てきた。私は近頃たくさんの映画上映に足を運んでいる。正直、ハリウッド映画のお馬鹿で痛快な映画が好きで、邦画のぐだぐだした感動作品はどうも苦手である。なのでこの「銀河鉄道の父」も初めは見送ろうと思ったが、やはり先に書いたとおり、宮沢賢治には昔から惹かれるモノがあり(生年の月日も一緒だし…)、ここは観ないといけないな、と思って観てきたのである。
評価は★3.5。賢治の父の話なのだが、賢治自身の人生に改めて触れるよい機会だっただけで、やはり邦画はだめだな、って思った。残念ながら、人の心を打つエンターテインメント不足なのである。少し「アメニモマケズ・・・」のシーンで泣かされたとはいえ、父も賢治も、その心情描写が深くない。全編薄っぺらで描き足りないし、そもそも彼の波乱な人生を120分で凝縮するのには無理があったように感じた。
賢治の生涯については、ほぼこの映画に足を運ぶような人は知っているだろう。原作を読んだ人もいるのだろう。結論的には、原作本だけでいいのじゃない、映像化はいる?・・・って、いうのが私の感想である。私は原作本を読んでいないのだが(笑)。
で、原作本を読んでみることにした。でないと、なんか納得いかない映画なのである。
日本の存在感の乏しい父という存在
(ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
※本来の長いレビューを書く時間が最近ないので、短く
この映画は魅力ある人物として宮沢賢治(菅田将暉さん)、妹の宮沢トシ(森七菜さん)、出演場面は短いですが祖父の宮沢喜助(田中泯さん)の3人があげられると思われます。
そしてこの3人は、劇中でいずれも死に行く人物だと分かります。
しかし、死に対峙して生命を燃焼させた3人とは反して、この映画の主人公であるはずの父の宮沢政次郎(役所広司さん)の魅力がどうも映画の中から伝わって来ないと思われました。
父・宮沢政次郎は、実は宮沢賢治の求めに初めはことごとく反対しており、その後になし崩し的に賢治の要求を認めてしまうという繰り返しでした。
つまり、父・宮沢政次郎は、主体的には宮沢賢治を初めから助けていないのです。
もちろん他作品を参照するまでもなく、父・宮沢政次郎を演じた役所広司さんの演技は本来は凄まじいレベルであるはずです。
なので父・宮沢政次郎の魅力が伝わって来ないのは、(役者の演技の問題ではなく)父・宮沢政次郎という人物自体に魅力が欠けていたのが理由と思われました。
つまり、一般的な日本の父親という存在の薄さが、特に戦後からの解釈でここでも父・宮沢政次郎に凝縮される形で際立ってしまった、とは思われました。
あと、特に映画序盤の画角が不安定で、画質がCG合成の影響なのかかなり悪いのも気になりました。
銀河鉄道の兄妹という題材であれば傑作になったのかもとは正直思われました。
菅田将暉さん森七菜さんなどの演技の素晴らしさだけでなく、エピソードの面白さも沢山あり、優れた作品になる可能性があったと思われただけに、惜しい作品になっているなと思われました。
家族愛に支えられたの宮沢賢治の世界観
役所広司さんの情熱的で、人間臭い父の演技がとても良かった。
祖父に『きれいに死ね』と言い放ったトシの死生観。
そのトシを励ますために作品を書き続けた賢治の感性。
賢治の『お父さんのようになりたかっただけなんす。こどもの代わりに作品を書いてるんです』というコトバに
『だから、オレは賢治の作品がこんなに可愛くて仕方ないのか!孫だからか!』
様々なシーンにグッときました。
賢治の作品たちが後世、ひいては世界中に残り、何よりです。
家族の絆ををテーマにした素晴らしい映画でした✩
勉強になりました
全195件中、21~40件目を表示