「父親の愛が日本のアンデルセン・宮澤賢治を産んだ!」銀河鉄道の父 三輪さんの映画レビュー(感想・評価)
父親の愛が日本のアンデルセン・宮澤賢治を産んだ!
宮澤賢治の作品に親しんできましたが、改めて彼の素晴らしい人生も辿りました。そして父親からの視点は、とても新鮮で目から鱗でした。宮澤賢治の作品は、生きている間には、それほど脚光を浴びませんでした。しかしそれを覆して、後世に残る作品としたのは、父親の持つ深い愛情のなせる技だったと知り、涙を禁じ得ません。それから妹の存在も、大きく彼の人生の航路を変換させました。それまでの彼は、人工宝石の商売を始めようとしたり、日蓮宗に没頭したりと、自分探しでいっぱいいっぱいでした。妹の結核の発病を機に、アンデルセンの童話が好きな妹を喜ばすために、童話を作って読み聞かせたのです。それが「風の又三郎」でした。それ以降、次々と作品を作り、病にふせる妹の前で朗読したのです。思うに、妹は宮沢賢治の才能を開花させるために生まれてきたと思うのは私だけでしょうか。あの誰もが知る「永訣の朝」はその愛しい妹との別れを歌った詩として、「雨ニモマケズ」と同じくらいに私たちを泣かせてくれます。そして宮沢賢治の父親はなんて素晴らしいんでしょう。賢治を子供の頃から溺愛しますが、後年は賢治の作品の唯一最高の読者として、その面目躍如を果たします。また、賢治にとっては、この父親に褒められることが最高の喜びだったのです。さらに父親の生き方や哲学が、賢治の生き方(農業指導で農民に尽くす)のバックボーンになったのはいうまでもないことです。ですので、父親も宮沢賢治もどちらも本当に幸せな人生だったとしか思えません。
追記 この父親にとっては、自分より早く子供達が死んでいくことは、本当に辛かったと思います。それでも、エンディングで銀河鉄道に賢治と妹と乗り合わせたときの夢想は、このゆえもなく幸せの極地だったような気がしました。いずれにしても、役所広司はすごい役者です!