「古典的で強い、父子愛、家族愛の物語」銀河鉄道の父 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
古典的で強い、父子愛、家族愛の物語
童話作家・宮沢賢治の父親・政次郎を主人公にした、父子愛、家族愛の物語である。宮沢賢治作品から想像していた賢治像、家族像とは異なる、父子を中心にした家族愛の物語である。父親の視点から宮沢賢治に迫っているので、俯瞰して、客観的に宮沢賢治像を捉えることができる。
本作の主人公は、質屋を営む宮沢賢治の父・政次郎(役所広司)。彼は、長男の賢治に質屋を継がせようとするが、賢治(菅田将暉)は頑なに反対し、中学、高校に進学する。卒業後は人工宝石、宗教に没頭していく。そんな時、賢治の妹トシ(森七菜)が病気になり、漸く自分の歩む道を定め執筆活動を開始するが、家族の運命は大きく変わっていく・・・。
役所広司が、演技巧者振りを存分に発揮している。家長としての威厳、自分探しに苦悩、葛藤する賢治との対立と寛容、作家になった賢治への惜しみない支援、そして、病に倒れた賢治への献身的な愛。様々な父親の顔を巧みに演じて、古典的で人間味溢れる父親像を作り上げている。
菅田将暉も、家業を継げという父親に逆らって、自分探しに彷徨、苦悩する繊細で一途な賢治に成り切っている。賢治は、もともと作家志望であり、自分探しをするまでもなく、素直に作家になれるはずである。しかし、そうはいかないのが青春期に誰もがぶち当たる自分探しという壁である。賢治は、真面目に、作家以外にやるベきものを探し求め、苦悩、彷徨していく。しかし、病気の妹に、賢治の求める道は作家だと気付かされ、ついに執筆活動を開始する。
後半は悲劇の連鎖であり過酷だが、父子愛、家族愛が感じられ悲劇に立向っていく
父子、家族の姿に胸が熱くなる。
終盤。賢治の才能は出版社に認められるが、作品は売れなかった。彼は自分の作品を世に広めることを家族に託して他界する。家族は彼の願いを叶える。彼の作品はこれからも読み継がれていくだろう。
本作は、宮沢賢治の父親を主人公にして、古典的で強い父子愛、家族愛を描いた良作である。
こんにちは^_^
コメントいただきありがとうございました。菅田さんは繊細に、役所さんはどこか微笑ましく心にのこる役作りを見事にされていましたね。自分探しの時期のこどもの親もまた、ある意味自分探しに近い…そんな感覚を思い出したりもして、政次郎のぶれない愛に簡単なようで難しい家族の関係の大切なものを再認識しました。
共感ありがとうございます。
この親にしてこの子ありという諺通り、
あの父親の不器用な愛が、天才作家・宮沢賢治を生み出したと感じました。
父子を演じた役所広司と菅田将暉の演技巧者ぶりが見事でした。
では、また共感作で。
ー以上ー
みかずきさん、私は映画界に詳しくは無いですが、「やくしょ」のイントネーションに関してはバッチリお答えできます。私は役所さんが元お役所勤めだったことは知っていたので、自分も「しょ」を高く(強く)発音していました。芸能ニュースでもその発音の方が多かったですよ。でもたまに「やく」を強く言う人もいました。
数か月前だったと思いますが、インタビュアーで「役所さん、やくしょの発音は↗↘どっちが正しいんですか?」と聞いた人がいたんです。すると役所さんは、「芸名なんで僕は本当にどっちでも構わないと思ってるんですが、(名付け親の)仲代さんはやくしょ↘と言ってましたね」その後、「やく」にアクセントを持ってくる報道が増えた気がしますし、私もそうしました。
で、どうして仲代達也さんはそう呼ぶのかなと確認しました。
役所さんの本名は橋本広司さん。役所勤務だったことと、「役どころ」が広くなりますように、という願いを掛けて命名したそうです。
コメントありがとうございます。
本当に、宮澤賢治にとって父の存在は大きかったのだと感じました。物語の中では、賢治の自分探しの根底には父のようになりたい、父に褒められたいという気持ちがあったように見えました。
政次郎は、立場上その時代らしい厳しさを見せつつも、喜助から指摘されるほど献身的な愛情を行動で示すところもあり、そこは現代の感覚に通じるところもありました。
政次郎の育て方、寄り添い方でなければ賢治があの時代にあそこまで自分の内面を追求することはできなかったでしょうし、おっしゃるように、まさにこの親にしてこの子あり、という親子でした。
すみません、「実際の」賢治は、作家以外の道を求めたわけではないと思います、という意味です。本作の賢治は、自分探しであちこち寄り道しているように見えましたね。本作を観た後で「永訣の朝」を読んだんですが、イメージ違うなあと思いました。
みかずきさん、コメントありがとうございました。賢治の思考のワープは確かに表現されてましたね。映画では妹が病気と聞いて初めて原稿用紙を買って童話を書いてましたが、そんなにすぐに完成する筈はないのだから、まずは一刻も早く実家に帰るのが筋です。wikiによると、実際その前から書き溜めていたので、そこはどうしてそうしたのかなと思いました。
作家以外の道を求めていたわけではなく、作家をしながらあれもこれもやりたかったのではないでしょうか。そういう人の父親は大変でしょうね。
愛情いっぱいの家族でした。
みかずき様
お邪魔します。
>様々な父親の顔を巧みに演じて、古典的で人間味溢れる父親像を作り上げている。
跡継ぎの子が産まれたときの歓喜、そして、自分より先に逝く最愛の息子を見送る悲哀、その間にある年月をさまざまな表情で生き抜いた父親像が脳裏に刻まれました。やはり、「父」の物語ですね。
お邪魔しました。
赤ヒゲでした。