「親でありすぎる!」銀河鉄道の父 Koheiさんの映画レビュー(感想・評価)
親でありすぎる!
「銀河鉄道の夜」等の著作で名高い、宮澤賢治の父・政次郎を主人公とした作品であるが、それと同時に、宮澤賢治の一生をも描いている。宮澤賢治自身の人生についてはなんとなく聞き覚えがあったし、それこそ「銀河鉄道の夜」などは子どもの頃に読んだ記憶があるものの、政次郎がどのような人物であったのかという予備知識は全くないまま作品を鑑賞した。
一言でいえば「親バカ」である。そのことはことは作中でも語られている。さらには「親でありすぎる」という(祖父・喜助の談)名言(?)まで飛び出す。「イクメン」というのは現代用語だが、母親が家を守りながら子育てをするのが当然であった時代においては、とかく異質な存在として描かれたことは確かである。賢治は亡くなるまでひたすらに政次郎の愛情に支えられた。親子関係は一筋縄ではいかないこともあったが、賢治の存在を誰よりも肯定したのは政次郎であった。
作品のカギを握るもう一人の人物は、賢治の妹・ヨシである。キーパソンであるがゆえに、やや強引にストーリーの中にねじ込まれたような感じも否めないが、賢治が子どもの頃に書いた物語作品を最も愛し、その才能を誰よりも感じていた読者である。彼女の存在を措いて宮澤賢治の文学作品は決して誕生しなかったであろう。
この物語は、政次郎の物語であると同時に、賢治の物語でもある。ネタバレとなるのであまり書けないが、宮澤賢治という名が世に知れ渡る以前から描かれているので、ぜひ彼の人生を知るきっかけとして鑑賞していただきたい。
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