「愛にあふれたお父さんと宮沢家」銀河鉄道の父 すみれ7878さんの映画レビュー(感想・評価)
愛にあふれたお父さんと宮沢家
銀河鉄道や「雨にも負けず」で有名な宮沢賢治は、こんなにも自分探しを続けていたんだと、それをずっと見てくれた家族がいてくれたんだなと知りました。お父さんにとってはむしろ不肖の息子。家業も継がず人造宝石をやるとか宗教に生きるとか、何を考えているかわからない。でも、これだけ家族に大事にされていたのであれば、幸せな人だなあと思います。
森七菜さん演じる妹トシは非常に良かったです。おじいちゃんをひっぱたくシーン、死の床で賢治の物語を聞くシーン、雪を食むシーンなど印象に残りました。今後の活躍を期待します。
賢治の死のシーンは悲しかったです。雨に負けずを諳んじて「良い詩だぁ」と言う父、「お父さんにやっど褒められたぁ」と弱々しく笑って答える賢治、「褒めだことなんか、ほかにもいっぱいある」と泣く父。もう少し前に、賢治が元気な時に言ってあげたら良いのに、なかなか言えなかったお父さん。
息子に対して素直な言葉をなかなか言えない気持ちは、私も父としてわかります。そして「なぜもっと早く言えなかったか」という後悔に苦しむことも多いのです。愛していること、褒めること、励ますことを口に出して言うのは気後れするけれど、勇気を出して言葉にしなければならないと強く思います。息子だけでなく誰に対しても。
そういうことを感じさせてくれた映画でした。
映画として残念だった点もあります。
色々なエピソードが描かれていますが、それらがやや表層的で浅いのです。私は宮沢賢治さんのことをよく知りません。それでも賢治が人造宝石や宗教に打ち込む理由、農民に拘る理由とか心情の描写は不十分と思いました。主人公はお父さんだから仕方ないかな。
この親にしてこの子ありという諺がありますが、
本作の場合、この父親にしてこの子ありだったと思います。
大きく強い父親の愛があったからこそ、宮沢賢治は輝くことができたと思います。
では、また共感作で。
ー以上ー
ありがとうございます〜
監督も賢治の生涯は充分調べているでしょうに、どうしてこういう構成にしてしまったのか。
この方が一般ウケが良いだろうとの判断なのかもしれませんね。
せっかく「賢治の父」という上質の素材、例えるなら100g2000円の高級すき焼き肉を、万人が好むからとカレーにぶち込んでグツグツ煮ちゃったような勿体無さを感じました。