「おとぎの性質に抗えなかったのが惜しいが人間の複合的な部分が滲む」恋のいばら たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
おとぎの性質に抗えなかったのが惜しいが人間の複合的な部分が滲む
気が付けば毎年何かしら観ている城定秀夫監督の新作は、PARCOが配給のオシャレなテイスト。中身は言わずもがな、ドロっとしておりますが…。笑
ざっくり言うと、面白いもののもう少し新しさが欲しかった所というのが感想。よくある、クズ男を成敗する的なエンタメを起点としつつ話が次第に移っていく感じ。テンポは割としっとりと描かれており、感情的に動かず論理的に話が転がっていく。描写的な面白さはあるものの、眠り姫がキーになるように、おとぎを感じさせる性質がやや強めに働いてしまう。良くも悪くもフィクションさが引き立ってしまい、飛び抜けた感覚はあまり無かった。
一方で、城定秀夫監督なだけあり、ワンカットの中に出来事が複合的に起きている面白さがある。人生において必要だったのか不要だったのかと言いたくなるような登場人物も現れつつ、出来上がった今を見つめていく。それによる強さもあると私は思うタイプなので、必要なピースが噛み合っていく様は微笑ましい。そうした幾多の要素が顔を出していることもあって、話の筋がボヤけてしまったことがハマらなかった理由かもしれない。
主演は松本穂香さんと玉城ティナさん。陰と陽、熱血と冷徹な両者のイメージを上手く当てはめていく。エプロンをした松本穂香さんにはブ○クオフな匂いがしたものの(笑)、陰キャに踏み切っている感じが良い。玉城ティナさんはエロさがなく、強い人物像を引き立てながら作品を回していたイメージ。城定作品常連となりつつある中島歩さんや平井亜門さんが出てきたのも嬉しい所。
連帯感に妙な安心感を覚えるのは、きっと親友と呼べるような関係だからだろう。私にはそう写った。何がともあれ、男として魅力が直結するクズのフェロモンには敵わないとつくづく思うのであった。笑