劇場公開日 2022年11月18日

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「マイケル・マンへのリスペクトとテクニカルな撮影が印象的、片時もスクリーンから目を離せないハイテンションサスペンススリラー」ナイトライド 時間は嗤う よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マイケル・マンへのリスペクトとテクニカルな撮影が印象的、片時もスクリーンから目を離せないハイテンションサスペンススリラー

2022年12月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ベルファストのドラッグディーラー、バッジは足を洗ってウクライナ人の恋人ソフィアと新しい生活を始めるため最後の大仕事の仕込みをするが、部下が麻薬を積んだトラックを盗まれてしまい、約束の時間に届けられなくなったことで買い手に取引をキャンセルされてしまう。バッジが窮地に陥ったことは瞬く間に裏社会に広まり、バッジに10万ポンドを貸している闇金業者ジョーはバッジが逃亡しないように見張りを付ける。盗まれたトラックと新しい買い手を探しながらベルファストを奔走するバッジだったが彼の行く先には次から次へとトラブルが降り注ぐ。

深夜のベルファストでの94分間をワンカットで見せるスリリングなスリラー。低予算のワンカット映画としては先にドイツ映画の『ヴィクトリア』や英国映画の『ボイリング・ポイント 沸騰』がありますが、それらの作品よりもトム・ハーディが夜のハイウェイを疾走する姿をじっと捉えた『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』とよく似ていて、主人公がスマホで会話している相手側に観客には見えない張り詰めたドラマがいくつも並走している点がユニーク。登場人物の他愛のない会話の中にマイケル・マン監督作品への言及が見られ、映画版『マイアミ・バイス』中の名台詞が本作の重要なキーワードになっています。そして何より本作のプロット自体がマイケル・マンの劇場映画デビュー作『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』によく似ているので、これは脚本のベン・コンウェイの趣味が色濃く反映されたものではないかと睨んでいます。

実際にワンカットで撮影しているのか巧みに編集しているのか鑑賞中は判然としませんでしたが、実際にはカットを割っていたとしても巧みなカメラワークが物語の緊張感を劇的に高めているのは明らかで、スクリーンから目を離すことが難しい息詰まるサスペンスが誘うカタルシスの爽快さは格別です。

よね