「まるで「目黒のさんま」」ウィッシュ ひなせさんの映画レビュー(感想・評価)
まるで「目黒のさんま」
本当は批判とかネガティブな意見を見たり発信するのが好きではなくて、この映画もただつまらないと感じただけならレビューなんて書くつもりもありませんでした。
ただ小さい頃よりディズニー作品からたくさんの夢や感動を与えてもらい、ディズニーが大好きな1人の観客として、今まで映画を観てきてこんなにも憤りと嫌悪感を抱いたのが初めてなものでそれをまさかディズニーにされるなんてという、推してた芸能人の電撃逮捕ニュース並みのショックに錯乱し、どうせなら率直に感じたことをぶちまけてやろうという衝動のもと、レビューするに至ったのであります。
(評価に影響させたくないので星は平均値の3にしました)
まずこの映画を料理に例えると、「毎日行列が出来るあの名店のシェフが、先代のレシピを踏襲しつつ厳選した素材を集め、さらに今の時代に合わせ環境に優しくかつヘルシーにとこだわりにこだわり抜いた一品」
途中まではいいんです。素材を集めるとこまでは。でも味云々以前にSDGsに気を使いすぎたものが果たして美味しい料理と言えるでしょうか?
いや、SDGsは否定しませんし、それだけ腕の立つシェフなら美味しい料理も出来るかもしれませんが…。
ただ有名な落語で「目黒のさんま」というのがあるんですが、まさに出された料理がその話の中で殿様がもてなされた「さんま料理」そのものなんですよね。
しかもこの料理には、様々なお家事情や忖度や私怨の匂いがプンプンしてて「でも体にはいいんだからお残しは許しませんよ」という笑顔の裏の圧を感じながら完食しなければいけないという苦行...まさに味の阿鼻叫喚地獄や~と言わんばかりの内容だったわけです。
もちろん100周年記念作品だからといって素晴らしい作品が出来るなんて端から期待などしてませんでしたし、前情報も一切入れずに(生田さんの歌う劇中歌はテレビで聞いたけど)鑑賞に臨んだ結果がこの有様で。
頭を空っぽにしたら楽しめるという人もいるでしょう。でも中途半端に「悪を許すな」「権力に屈するな」「顔がいい男には騙されるな」といったプロバガンダ的描写が挟まれていて、いやホラー映画かよ!とツッコミを入れたくなるほどの戦慄が走り迂闊に没入も出来ません。
観た後で知ったのですが、脚本は「アナと雪の女王」で大成した現在事実上ディズニートップの方なんだそうです。
それを聞いてなんとなく合点がいきましたし、とあるシーンがまさにこの先のディズニーを暗示してるなと感じずにはいられませんでした。
この清々しいまでのホワイト企業は、一点の黒いシミがあろうものなら徹底的に排除するでしょうし、セカンドチャンスなんて言葉も皆無なんでしょうね。
まあ、今の世情がそのものがそうとも言えますが。
先程プロパガンダ的描写に触れましたが、私がこの映画を観て感じたことは
「悪が生み出されるのは小さな善意から」
「権力より幼い反骨精神の方がよっぽど怖い」
「顔のいい男になんか恨みでもあんの?」
極力ネタバレ抜きで話したつもりでしたが、微バレと感じた方はごめんなさい。
感動とかハートウォーミングからは程遠い、主体性のない一人の少女が情緒不安定なままに集団心理を利用して「これは悪」と思ったものに立ち向かっていく物語『ウィッシュ』
これがウォルト氏の遺志を継いだディズニー作品になっているのかどうか?
気になった方は、是非劇場に足を運んでご自身の目で確かめてみて下さい。
落語を知ってる方なら観た後で思わず言ってしまうでしょう。
「やっぱりさんまは目黒にかぎる」