「マグニフィコ王は善人のふりをした悪人でした」ウィッシュ おひさまさんの映画レビュー(感想・評価)
マグニフィコ王は善人のふりをした悪人でした
マグニフィコ王が善人であるというレビューが結構多いのが気になります。
これがシナリオのわかりにくさから来ているのであれば、作品の評価が低くなるのも仕方ないかも知れません。
ですがマグニフィコ王は明らかに悪人です。
映画の中に一瞬だけマグニフィコ王の過去に何か不幸があったのだろう事がわかるシーンがあります。
おそらくマグニフィコ王はその不幸な過去のせいで、強い願いから来る強い感情は人を不幸にする、と思い込んでしまったのでしょう。
だけど、民衆に強い願いを捨てろと言っても誰も耳を傾けてもらえない。
そこでマグニフィコ王は民衆を騙して願いを奪う事を考える。
魔法で願いを叶えると嘘をつき、民衆から願いを取り上げる。願いを取り戻そうとしない様に魔法で願いの事を忘れさせる。
その上でマグニフィコ王には害が無い願いを少しだけ本当に叶えて、民衆に本当に願いが叶うと信じさせる。叶える願いが少しなのは魔法の力を貯めるのに時間がかかる、とでも言い訳をしていたのでしょう。
願いを忘れ、強い感情を失った民衆はマグニフィコ王を盲目的に信じる様に洗脳され、誘導されていく。
最初のマグニフィコ王を賛美するシーンなどは、新興宗教の教祖をあがめる様でとても気持ち悪さを感じました。このシーンを単純に素晴らしい平和な国だと感じている方が結構いる事に驚きます。
マグニフィコ王のやっている事は明らかにネズミ講や悪徳な新興宗教などと同じ詐欺であり、搾取です。
マグニフィコ王はだんだん独善的な性質を強くしていき、民衆は愚かで私の言う事を聞いていれば良いのだ、と思い込んでいく。
願いは大事に保管していたのではなく、使い道も無いので単に隠してあっただけです。王妃に対して、いつか願いを叶えるため、とかの言い訳のために捨てられなかっただけでしょう。
そういう背景が映画中ではほとんど語られないので、マグニフィコ王が悪かどうかわからない方が多くなっているのでしょう。
独善的なマグニフィコ王は、自分に盲目的に憧れる主人公に、自分がこんなに良い王なのだと自慢するため、自分の秘密を垣間見せてしまう。
だが、主人公は正しい感覚を持っていたため、マグニフィコ王の誤りに気付いて、マグニフィコ王から願いを取り戻そうとする。
最初は家族の願いだけを取り戻すだけのつもりだった主人公だが、民衆に自分の悪事が暴かれる事を恐れるマグニフィコ王は暴走し始める。
偶然、願いを破壊して取り込む事で自分の魔法の力が強くなると知ったマグニフィコ王は、民衆の事など無視して、多くの願いを破壊して取り込んでいく。
ネズミ講で破綻していく犯罪者の典型です。殺人などの凶悪さは無いかも知れませんが、大勢の人々を不幸にしていく最悪の権力者です。
追放され、投獄されるのは当然の結末でしょう。
評価を低くしている方は、マグニフィコ王が善人だと感じているか、主人公が白人のプリンセスでは無い事が不満であるか、ストーリーが単純でつまらないと感じているか、という3点が多い様に見受けられます。
どれも的外れである様に思います。マグニフィコ王は悪人だし、一般人で未熟な子供だけど正しい感覚を持つ芯の強い行動力のある素晴らしい主人公だし、100周年記念で誰にでもストレートに伝わる王道なストーリーを目指したのだと思います。
まぁ、伝わらずに評価が低い人が多いなら、それはディズニーの失敗でしょう。
ただ、私は歌も映像も素晴らしいシンプルなストーリーで、100周年記念のお祭り的な作品としては、ディズニーらしい良い映画だと感じました。たくさんの過去作へのオマージュが楽しい作品です。
個人的には王妃だけでなくプリンセスも出てくれば良かったかな、と思いました。スターではなくプリンセスが主人公の友達として、主人公に協力して王を倒す方がディズニーらしかったかも。スターはすごく可愛らしいのですが、その存在がちょっと唐突で説明不足なので。
まぁ、ディズニーの魔法の世界で細かい事を言うのも野暮というものでしょう。楽しい映画でした。生田絵梨花さんも福山雅治さんも素晴らしい歌と演技でしたね。