「十分に良かったと思います」リトル・マーメイド 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
十分に良かったと思います
他の人のレビューで「アリエルじゃない」というのをいくつも見かけましたが、なにをいっているのでしょう?
シン・ゴジラ、シン・ウルトラマン、シン・仮面ライダーなどの作品は庵野監督の解釈が盛り込まれて、元の作品とは別物に仕上がっていますが、それに対して「ゴジラじゃない」、「ウルトラマンじゃない」、「仮面ライダーじゃない」という声はそれほど大きくないでしょう?
新しい取り組みがあったからといって、それを自分の知っている過去の作品と比べて、勝手に「アリエルじゃない」というのは作品を作る人たちを馬鹿にしていると思います。
同じ物だけ観ていたいのなら、家でアニメのリトル・マーメイドのビデオを観ていればいい。
ジブリの『君たちはどう生きるか』じゃあるまいに、ディズニーは情報を隠匿して公開当日、観てからのお楽しみだなんてことはしませんでしたよ?
映画が封切られる前から、黒人女性がアリエルを演じることについて色々な意見がネット上に書き込まれていました。
アニメのアリエルとはイメージの違う、新しいアリエルのお話だということは、事前に公開されていた宣伝などから分かっていたことです。
ファンとして両方を見比べて、「私はアニメの方が好き」というのは、感想として当然だと思います。
でも、この新しいアリエルを「アリエルじゃない」というのは、間違っています。
以前にネットの記事で、とんでもないクレーマーが紹介されていて、商品名のメロンゼリーの文字が入っていて、パッケージにもメロンのイラストが入っているのにもかかわらず、メロンゼリーを買っていって、開封してから「メロンは嫌いなので返品したい」といってきたそうです。
今回の「アリエルじゃない」という人達のレビューを見ると、そのクレーマーの記事を思い出します。
事前に配役がわかっていて宣伝で動画の一部も公開されていたのに、敢えて映画館へ観にいって、「アリエルじゃない」という。
あなたの知っているアニメのアリエルではないことなんか、最初からわかっていたでしょう?
クレーマーでしょうか?
映画の感想としては、実写とCGの合成がすごくて、映像としては技術が高いように感じました。
人魚の下半身や、水中で漂う髪や王様のヒゲ。
地上で撮ったのではそのようにはならないし、まさか素潜りをして撮ったとも思いません。
海中の生き物や岩礁、海藻など、みんなCG合成でしょう?
自然に合成されていて、すごいです。
お話もわかりやすくて好感が持てます。
残念なのは、魔女の最後が呆気ないことです。
王様から奪った三叉槍で海をかき混ぜて、渦が発生して海底の沈没線が浮上するのは分かります。
でも、アリエルが沈没船の壊れかけた舵輪を回して、舵を切っただけで舳先が刺さって魔女はイチコロ。
あまりに呆気ないです。
クライマックスの興奮がイマイチでした。
それから、人間の女王が、王子に住む世界が違うというようなことを言って納得させたはずなのに、二本足のアリエルが戻ってきたら簡単に受け入れるという都合のいい最後もちょっと納得がいきません。
人間と人魚の関係については、王様同士が話し合うべき大事なことでしょう?
父王はただ人間と関わることを頑固に禁じて、娘が人間の世界へ行くことを許したとしても、王としてきちんと人間との話をつけようとしない。
あの王様、カッコ悪いと思います。
とはいえ、映画として十分に良かったと、僕は思います。