「よくも悪くもただの実写化じゃない」リトル・マーメイド CFYさんの映画レビュー(感想・評価)
よくも悪くもただの実写化じゃない
最初に字幕版を鑑賞し、その後吹き替え版を見ました。
まず、めっちゃ良かったです。映像もとっても綺麗。(最初の海の中のシーンで、一人称視点?の映像だけちょっと酔いそうになった)音楽は言わずもがな最高。
吹き替えについてはアニメから継続している歌の歌詞が変わってなくてよかった!
キャスト発表の際はやっぱりアニメのアリエルとビジュアルが似ている人にしないんだ…と思ったけれど、
アリエルというキャラクターで1番核となる部分を歌声と捉えて彼女にしたんだな、きっとめっちゃ声が素敵なんだろう、と自分で納得した上で鑑賞。
とっても素敵な歌声で、アリエル役も納得でした。
黒人ルーツということで、あまりにソウルフル?な歌い方で曲を外れるアレンジがされたりしていたらやだなと思ってましたが、それもとくになく、素晴らしかった。
舞台設定について、王子が暮らす国が島国で、ジャマイカ?とかそういう国っぽく改変されているのはアリエルを目立たせない意図があるんだろうなと思ったけど、元々アンダーザシーなどの楽曲でそういう文化圏の楽器を使っているので、かえって自然な感じもしました。
冒頭で原作の原作であるアンデルセンの文を抜粋して、最後に父娘のシーンに繋げたのは泣ける演出だなーと思いました。
曲について、アニメからカットされたのは、人魚姫姉妹たちの歌、レ・ポワソンくらいかな?
増えた歌はたくさんありますが、エリック王子の『まだ見ぬ世界へ』が王子の心のうちがわかる楽曲でめっちゃ良かったです。
『スカットルスクープ』はめっちゃリン=マニュエル・ミランダ の作詞だなぁ〜って感想になるゴリゴリラップで面白かった。
『何もかも初めて』は一瞬舞台版の『どんな夢より』かと思ったけど全く新しい曲で、どちらもアリエルの新しい世界のわくわくが伝わる曲。何もかも初めては字幕の方が心情がわかって良かった!
上で書いたエリックの歌もそうだけれど、ディズニーは実写映画になるとより登場人物たちの気持ちの動きに納得が行く設定に落とし込んでくれているなぁと思っていて、今回はエリックとアリエルがなんでお互いを好きになるか、という点ですっきりできた。
アニメや舞台だとどうしてもアリエルはエリックの顔、エリックはアリエルの声だけに惚れている?みたいに曲解できなくもないなーと思ってたけれど、
お互いがお互いの世界に憧れていて、いろんな世界のものを集めるのが好きで…という設定で、顔だけでも声だけでもなく、自然に好きになるという感じが良かった。
その点に関連してちょっとモヤモヤするのが、ちゃんと物語を追えていないのかもしれないんですが、脚と引き換えに[人魚の特権を失う]という言い方があったこと。
人魚の特権=声って扱いだったように思ったから、人魚には声に何が特別な力があるのか?と思ったし、人魚の声だからエリックが好きになったの?人魚の中でもとくに美しい声で特別なのがアリエルというキャラクターなんじゃないの?となった。なんか人魚の声だからエリックが好きになったとしたら、アースラに操られてるのと変わらないじゃないか?と思ってしまいました。
設定の変更として、3日目の日没までに王子とキスをしないと行けない、と言う点をアリエルが忘れるように仕向けた部分。観た時はなんの意味があったんだ?と思ったけれど、他の人の感想などを読んでいて、性的同意に関する配慮では?との意見を目にして納得した。
人言われたからやるんじゃなくて、本当に自分も相手も気持ちがある場合にやるんですよってことですかね。
悪役としては邪魔するって建前なんだろうけど、めっちゃアースラおばさま教育的。
アリエルのキャスティングも歌声だけのものではなくポリコレへの配慮もあるんだろうし、お姉さんたちの多国籍化も、この性的同意への配慮とも思える設定変更も、
単純にアニメをそのまま映像化するのではなくてよく考えて作っているんだなぁと思いました。
もちろん元のアニメを忠実に実写化して欲しい気持ちの人もいるだろうし、その気持ちは少なからず私もあるけれど、作品を観た結論としては、素敵な作品だったなと思います。
字幕と吹替どっちがいいかに関しては、基本的には字幕を、オススメします。日本語ではどうしても不自然な部分と伝わりきらない部分があるので。吹替はエリック役の海宝さんが最高でした!