「ビジネス都合?」リトル・マーメイド コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
ビジネス都合?
徹頭徹尾ディズニー系では慣れ親しんだパターンを踏襲、「ディズニーが稼ぐためのコンテンツに、過去アニメを実写化してるだけの、ビジネス都合の一本」の範疇から出ていない。
『シンデレラ』『ライオン・キング』『ダンボ』『ジャングル・ブック』…
アニメでいいじゃん。
実写にした意味を、そこに持たせてほしい。
純愛の突っ走りをリアル方面の表現に振りながら、後でおとぎ話ファンタジーに戻して辻褄合うご都合なエンディングへ持ち込むパターン通りじゃなく、なにがしか肉体で表現できる工夫と知恵で乗り切ってほしいなと。
また、SNSでは予告編時点で、コンプラ的な人種配慮の果てに黒人の主人公ってどうなの?みたいな意見ばかりが先行していましたが。
黒人であることの違和感は特にはなく、歌が上手ければそれでいいんじゃないの? そもそも原作のアンデルセン『人魚姫』にある人魚姫の外見的特徴に従うのが筋で、そうじゃなきゃなんでもいいとしか思っていなかったんですが。
いざ観てみたら、トリトン王の7人の娘は全員それぞれに、7つの海に触れている大陸の人種の特徴を備えていて、それについて何の言及もしないことの方が問題に感じました。
ファンタジーとはいえ、その外見的特徴がどこから生まれたか(由来なのか)がわからない。
たとえば、トリトン王が世界中の魚人を孕ませ、全員母親が違っていて(他は妾の子とかで)正妻との子はアリエルだけだから、特別にかわいがってるってことにすりゃ、7人の外見が違うのは理解できるし、アリエルのためにトリトン王が献身的になるのもわかるんですよ。
または、泳いでいる姿を人間に見られてもごまかせるように、その地域の人間に似せる魔法をかけている、とかね。
もっと言えば、みんな人魚なのに、血族のはずのアースラだけなんで蛸?
ってあたりも、強調と省略と記号で構成できるアニメならスルー可能な部分が、実写だと猛烈な違和感をもたらすと感じました。
実写化で意味のあったのはただ一つ。
あまり宣伝されてないけども、この作品はシーンによって画角を変動させるIMAXカメラを演出的効果を狙った使い方をした、まさにIMAXのための映画でした。
地上ではオーソドックスな2.4:1画面なのに、海の中になるとおよそ1.9:1になる!
その技術的・演出的な意図だけはよかったです。
(海の方が魅力的で広い世界なのだとしたら、地上に憧れるのはもったいないって気にさせられたりしますけども)