「Sea glass」リトル・マーメイド ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Sea glass
去年の「ストレンジワールド」が最悪のポリコレ祭りで、ディズニーの作品はこんなもんなんだろうなとハードルを低く見るようになりました。勿論当たりもありますし、技術は抜けているものがありますが、きっと上層部の人間が要らない事を言うがために変な方向へ進んでいってしまっているのが残念です。
そして今作も白人レッドヘアーのアリエルをわざわざ改変し、黒人ドレッドヘアーという違うものにすり替えている訳の分からない事をしていました。この時点で期待なんかしていませんでしたが、時間もたまたま噛み合ったので映画館へ。朝イチだったので人入りは2割くらいでした。
んー、思ったよりかはマシというか思っていた通りのものが出てきて、酷いところもあれば褒めるところもあったなという印象でした。トータルではマイナス寄りですが。
まず良かったところをパパッと挙げていくと、ミュージカルシーンは結構良かったです。水中の中で魚たちとカラフルな絵面で踊るシーンは華やかでした。海中生物が大好きなので、カサゴにヒトデにマンタにカメに大盤振る舞いで楽しかったです。
セバスチャン・スカットル・フランダーの動物トリオのコミカルな会話劇もこの作品の癒し要素でした。フランダーは完全に魚じゃないか!とツッコミが止まりませんでしたが、セバスチャンはしっかりとキャラ立ってたなと思いました。
そして特に良いなと思ったのは、冒頭のアリエルVSサメの構図でした。サメ映画マニアの自分にとっては、ディズニーの高クオリティCGから繰り出されるしっかり強そうな凶暴サメを出して、ヒロインにガチでぶつけにきたのが最高でした。サメの退治の仕方もスタイリッシュで、鏡を反射させて自分を映して誘き寄せて、その鏡にサメを突っ込ませるという、過去のサメ映画を作ってきた先人たちが想像できなさそう(失礼)な倒し方が今作のハイライトでした。こんな狂った見方をしているのはごく少数だと思いますが笑
ここからは批判的な意見になります。
まずアリエルの見た目、やはりこれが受け入れられませんでした。もう固定されてるアリエルのイメージは頭の中から離れられないので、仕草も表情もどれもしっくり来なかったです。
アリエルを演じられたハリー・ベイリーさん、今作で初めて拝見しましたが、日本人でも分かる演技の拙さでした。表情の喜怒哀楽がどれも弱モードで、喜びを大いに表して欲しい場面でも喜んでるのか微笑んでるのかレベルの変化でしたし、怒りに任せるシーンも何だか唐突な気がしてモヤっとしましたし、コミカルなシーンも滑り倒していましたし、感動的な場面でも全然泣かないじゃんとも思ってしまいましたし、歌唱力だけで取ったのかなと、製作陣の正気を疑ってしまいました。
正直、アリエルに王子が惚れる要素が皆無だなと思いました。申し訳ないんですがビジュアルで惹かれるものもありませんし、行動に可愛げがあるわけでもないですから、何で王子がそんなに夢中になっているのか全く分かりませんでした。
130分を超える尺の割りには物語が散漫になっており、アニメ版の方が話はしっかりしていたなと思いました。
前半の駆け足さに加え、後半は畳み掛ける雑な展開、特にアリエルが好き勝手やってからの助けますわよ〜の流れ、適当すぎやしないか?とウダウダ思ってしまいました。
アナ雪から続く、"ありのままの自分"というテーマを今回も擦り倒しており、アニメ版ではそこまで攻撃的ではなく保守的だったアリエルが今作はとにかく誰よりも前に立って行動、というか攻撃しまくるので呆れてしまいました。強い女性を描きたいのは分かりますし、そういう作品があるのも勿論理解しています。ただ、それを既存作品でやる必要性があるのかと何度も思ってしまいました。
いい加減、ディズニーも新たなプリンセスを自分たちの手で作って欲しいんですが、過去の作品を改悪する形ばかり取る手法だけはどうにかして欲しいです。映像技術は確かなものがあるので、オリジナルでその真価を発揮して欲しいです。
鑑賞日 6/9
鑑賞時間 9:30〜12:00
座席 S-31